各評価委員の評価報告概要


 海外評価委員5名(カールソン、ウリソン、ガモタ、クワイサー、ハンフリーズ)に共通した評価、指摘事項は、つぎの通りである。

@ JSTの基礎的研究推進事業の制度及び各事業のプロジェクトは大変優れたものである。
A 研究費予算のより柔軟な運用に努力すべきである。
B 実質的な研究期間が短くならないよう、準備期間を考慮すべきである。
C 大学における研究室の安全性及び環境の改善が必要である。
D 外国人による評価を積極的に採用すべきである。
 

各評価委員の評価、指摘事項

カールソン(スウェーデン王立科学アカデミー 物理化学分野議長)
JSTは、古い日本の研究支援体制を変え、非常に重要で斬新な研究開発プログラムを確立することに成功している。
ERATOのリーダーはみな質の高い起業家精神に富んだ人間である。ERATOプログラムを通してJSTは最高水準のセンター・オフ・エクセレンスを作り出している。
海外からのアドバイスを取り入れることで、よりグローバルな視点からの研究分野が選択できる。
5年というプロジェクト期間は遵守されるべきであるが、準備期間を経て開始すべきである。
前年度予算を次年度に繰り越せないことは、プロジェクト予算全体の使い方として効率的でない。
ERATOへの海外からの参加者は、目標の30%を越えていない。研究分野の選考に海外の意見が反映されていないように思える。研究分野の選考に参加し、助言する国際的チームを設立することで、海外からのパートナーの紹介も受けられる。国際チームによる個々のプロジェクトの定期的評価を行うことにより、より国際化が図れる。
ERATOプロジェクトの立地は通常大学キャンパス外である。これにはそれなりのメリットはあるが、ERATOがより大学と密接な関係を構築することにより、新たな学際的プロジェクトにつながる可能性がある。
CRESTの応募者の1割が採択されることは、この手の質のよい助成プログラムにおいては至って妥当な線といえる。しかし、応募者の減少の傾向については、監視し応募の奨励が必要である。
CRESTで最も重要である戦略領域における研究分野の選択の際、国際交流と協力が有効に働く。研究課題の選択は、独立した国際的顧問組織の意見を採り入れながら行うことを勧める。
PRESTOは、非常に権威のあるプロジェクトで、大学の若い研究員が大学の階層的組織に依存せず独立した研究を遂行することを可能にしている。領域総括が重要な役割を果たしており、適切な人選がされている。
PRESTOの選考プロセスに国際的意見を採り入れることは有益であろう。
 
ウリソン(ルイ・パストゥール大学 名誉教授)
JSTにより助成されている研究プログラムの質の高さに対する認識には疑問の余地がない。これはJSTの基礎研究推進事業に関与していない科学者達の評価でもある。
JSTプログラムの継続及び質の向上を図るには、国内及び国外に対する広報活動への投資が必要である。
大学の研究室の安全基準及び環境を改善すべきであり、JSTの支援で研究を行う大学に対しては、国際標準に添った安全で清潔な研究施設の提供、維持を義務付けることを提案する。
研究期間に厳しく期限を設けることは必要であるが、確実に5年間研究時間を費やせるようにすべきである。
CREST事業は、日本の大学内に主要なセンター・オブ・エクセレンスが発展するうえで、不可欠なものとなっている。選考の際、海外からの審査官を参加させることにより、海外での注目度も高くなり、日本でよりスムーズに受け入れられだろう。
PRESTOについて、日本側で提案されているようにピュア・レビューを行うことを勧める。この場合海外からの意見も採り入れた方がより効果的と思われる。
 
ガモタ(サイエンス&テクノロジー・マネージメント・アソシエーツ社長)
ERATOは、日本の研究文化に変革が必要であることをしらしめる一助となり、PRESTOは、この必要性を再認識された。
ICORPは、世界的コミュニティへの日本の研究者の本格的参加を促進する非常に重要な一歩である。
PRESTOプログラムは、多数の優秀な提案を集めることに大成功を収め、選択されたプロジェクトは全般的に非常にすぐれたものばかりだった。
もっと多くのICORPプロジェクトに研究資金を出すべきだと思う。
ERATOについて、実質的に5年間の研究期間が確保できるよう、また個々のプロジェクトに対する研究費の配分に柔軟性を持たせるべきである。
CRESTについて,外国人評価委員を起用し、科学の世界的コミュニティを利用すべきである。
企業の研究所と大学の研究所の安全基準の違いにショックをうけた。大学の研究室の中には、事故の発生を待ちわびているように見えるところもあった。
 
クワイサー(マックス−プランク個体物理研究所 科学名誉会員)
5年という期限付きプログラムでは、主要機材の購入完了時を研究の開始日とすべきである。
JSTプログラムに最も顕著なことは、官僚主義を最低限に押さえることに成功していることである。
若いリーダーが優先的に選択されているが、メンター的役割を果たす経験豊富な教授にも十分焦点が当てられ、制度は若い層からも年輩者層からも好評である。
年配の日本の知人の多くは、JST経営陣が様々な欠陥の弁明に使われる官僚主義のわなに捕らわれず活動していることを敬意を込めて讃えている。
これまでスポンサーされた研究は一様に優秀であり、明らかに国際標準に到達している。
重大な意義を持っている工業的研究が継続され、効率よく拡張されている。
強力な国際的絆も築かれている。
可能な限り大学院生を研究に参加させることにより、重要かつ特殊な教育の場が創られている。
 
ハンフリーズ(ケンブリッジ大学 材料料科学冶金学部 教授)
ERATO,CREST,PRESTO,ICORPの研究テーマは国際的に最先端の研究であり、極めて革新的かつ印象的である。
大成功のERATOプログラムについては、新規プロジェクトを5〜6件に拡張すべきである。
ERATO,CREST,ICORPプロジェクトの開始前に最大2年の始動期間を設けるべきである。
ERATO等から発生する技術移転問題を詳細に検討する調査委員会(Working Party) を設置することを勧告する。
CRESTプロジェクトに対して質の高い研究空間を十分あてがうため、キャンパス近くに別の用地を探すべきである。
CREST,ERATOのプロジェクトにおいて、国際的代表者の参加をいかにして増やせるか検討する調査委員会を設置すべきである。
最も成功を収めているPRESTOプロジェクトの規模を50%拡張すべきである。3年間と5年間の二通りのプロジェクトを設置することを考慮すべきである。
全てのJSTプログラムの予算はもっと柔軟性を持つべきであり、年度間の繰り越しを可能とすべきである。
ICORPプログラムは設置しづらく運用も難しいが抜群に優れており、今後も継続、拡張すべきである。
大学にオーバーヘッドを支払うことにした場合でも、あまり多額とならないようにすべきである。

This page updated on August 22, 2001

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