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平成29年10月19日

自治医科大学
株式会社ケーアイエス
株式会社グッドマン
科学技術振興機構(JST)
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォームに利用可能な
複数循環器医療施設からの統合情報収集システムを開発

ポイント

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム(プログラム・マネージャー:原田 博司)の一環として、学校法人 自治医科大学(学長 永井 良三)の研究グループおよび株式会社ケーアイエス(本社 東京都中央区、代表取締役 小西 由貴範)、株式会社グッドマン(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長 大山 靖)と共同で、複数循環器医療施設からの統合情報収集システムを開発しました。

循環器医療は治療に用いる薬物やデバイスなどが次々に変わっていっており、従来型の観察研究やレジストリ研究では研究結果が公表される頃には、すでに古い治療となっていることがしばしばあります。そのため、詳細な検査・治療情報をできるだけリアルタイムで収集し、それを時系列に整理し、解析してタイムリーにフィードバックすることが求められています。しかしながら、これまで電子カルテやカテーテルレポートのシステムが病院によって異なるために、これらの情報を標準化して集めることはできませんでした。

本システムは各施設において電子カルテからSS-MIX2注1)標準化ストレージに書き出した血液検査値などのデータ、およびCAIRS心臓カテーテル検査レポートシステム注2)からSS-MIX2拡張ストレージに書き出したデータを対象にデータをMCDRSシステム注3)により自動収集し、匿名化後に集約して解析を行うことができ、上記の要請に応えることができるシステムとなっています。そして、このシステムを用い、東北大学病院・東京大学医学部附属病院・自治医科大学(附属病院・附属さいたま医療センター)・九州大学病院5施設を接続し、統合的に稼働することに成功しました。

本成果は、以下のプログラム・研究開発課題によって得られました。

内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) https://www.jst.go.jp/impact/

プログラム・マネージャー 原田 博司
研究開発プログラム 「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」
研究開発課題 「ミクロレベル医療データの解析に必要とされるデータ解析プラットフォームの構築」
「循環器イベントリスクシミュレータの開発」
研究開発責任者 永井 良三(学校法人 自治医科大学)
研究期間 平成28年度~平成30年度

本研究開発課題では、複数循環器医療施設から詳細な臨床データをリアルタイムに収集し、ビッグデータとして解析することで将来の循環器疾患イベント発生をシミュレートするシステムの研究開発に取り組んでいます。

原田 博司 プログラム・マネージャーのコメント

原田 博司PM

本研究開発プログラムにおいては、各患者さんの過去の公的医療データを時系列化し、それを統計的に処理することにより、疾病リスクを予見先取で発見できるシステムを開発するとともに、特に循環器イベントリスク低減のために、複数循環器医療施設に設置された情報収集システムで収集した検査・治療情報を統合し、時系列化しタイムリー解析することにより、この予見精度を上げることを行っています。

この複数循環器医療施設からの統合情報収集システムの稼働の成功により、自動的に循環器医療に関わるビッグデータが一元的に収集でき、精度向上した予見が具体的な形で実現されていくことが期待されます。

<研究の背景と経緯>

従来、薬物・医療機器の治療効果の検証には無作為割付けの臨床試験(RCT)が高水準のエビデンスを提供してきましたが、一方で限定された患者を対象とすることによるバイアス、コストと時間などが巨大化するという問題があります。このため実世界(リアルワールド)における多様な患者を対象とした実際の治療についてはその実態を解き明かすのに十分ではありません。

そこで近年、レジストリ研究によるリアルワールドデータ(RWD)の有用性と重要性が認識されるようになりました。しかし、従来型の観察研究やレジストリ研究では研究結果が公表される頃には、すでに古い治療となっていることがしばしばあります。そのため、詳細な検査・治療情報をできるだけリアルタイムで収集し、それを時系列に整理し、解析してタイムリーにフィードバックすることが求められています。しかしながら、これまで電子カルテやカテーテルレポートのシステムが病院によって異なるために、これらの情報を標準化して集めることはできませんでした。

<研究の内容>

本ImPACT研究では、電子的に登録された検査情報やカルテ情報をベンダーによらないSS-MIXという共通形式で収集するレジストリデータベースシステム(MCDRS)を発展させ、さらに心臓カテーテル検査・治療の詳細を標準化し記録できるレポートシステム(CAIRS)を統合することで、多施設の膨大かつ詳細な診療データをリアルタイムに収集する新たな複数循環器医療施設からの統合情報収集システムに世界に先駆けて開発しました(参考図)。

このシステムは、異なる循環器医療施設から共通形式でデータを出力し、匿名化後に収集することができ、異なるベンダーの電子カルテやレポートシステムから出力された情報を自動的に収集することで、正確かつ手間少なく大量のデータを収集可能です。また、このシステムによって、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の患者の背景、危険因子、カテーテル治療の成績などを容易にかつ一元的に把握することが可能です。そして、このシステムを用い東北大学病院・東京大学医学部附属病院・自治医科大学(附属病院・附属さいたま医療センター)・九州大学病院5施設の共通プラットフォームから稼働を開始しました。

<今後の展開>

今後、内閣府による革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」にてMCDRSを更に包括的かつ拡大的に発展させます。MCDRSによって多施設から多数の非線形診療項目からなる時系列的なRWDの取得が容易になり、施設内・施設間の治療法・治療効果比較、疾患の危険因子抽出・予後予測・治療効果検証・医療コスト検証に至るまでビッグデータとして一貫した分析が可能となります。また、本システムは既存の医療標準規格を活用しており、今後さらに多くの施設の参加を見込むことが可能であるため、臨床エビデンスを構築するための新たな標準的プラットフォームを目指します。

<参考図>

参考図

<用語解説>

注1) SS-MIX2
厚生労働省標準規格の一つで、電子カルテベンダーにかかわらず同一形式で情報を書き出すことができる。
注2) CAIRS心臓カテーテル検査レポートシステム
内閣府最先端研究FIRST(代表 永井 良三)で東京大学の大江 和彦 教授らにより開発され、本ImPACT研究で東芝メディカルシステム株式会社、株式会社グッドマンが準拠したレポートシステムを実装した。
注3) MCDRSシステム
内閣府最先端研究FIRST(代表 永井 良三)と東京大学COI拠点で東京大学の大江 和彦 教授らが開発し、現在複数の多施設研究で用いられているシステム。SS-MIX2で標準化されるデータを対象に、正確かつ少ない手間で自動収集することができる。本研究でも実装されることにより、循環器疾患の詳細な情報が収集可能となった。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

興梠 貴英(コウロ タカヒデ)
自治医科大学附属病院 医療情報部
〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311−1
Tel:0285-58-8794 Fax:0285-58-8794
E-mail:

藤田 英雄(フジタ ヒデオ)
自治医科大学附属さいたま医療センター 循環器内科
〒330-8503 埼玉県さいたま市大宮区天沼町1−847
Tel:048-647-2111(代表) Fax:048-648–5188
E-mail:

<ImPACTの事業に関すること>

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラム内容およびPMに関すること>

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9012 Fax:03-6380-8263
E-mail:

<報道担当>

学校法人 自治医科大学 研究支援課
〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1
Tel:0285-58-7550 Fax:0285-40-8303

株式会社ケーアイエス
〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町1-36-7 蛎殻町千葉ビル7階
Tel:03-5652-0890 Fax:03-5652-0895

株式会社グッドマン
〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄四丁目5番3号 KDX名古屋栄ビル5階
Tel:052-269-5300 Fax:052-262-8694

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail: