JSTトッププレス一覧 > 共同発表

平成29年10月4日

一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構
東京大学 生産技術研究所
三重県名張市
科学技術振興機構
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

医療・介護・健診に関するビッグデータの統合解析による
エビデンスに基づく地域包括ケアシステムの実現に向けた取組みを始動

ポイント

一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構(所長:西村 周三、以下、医療経済研究機構)研究部の満武 巨裕の研究グループと国立大学法人 東京大学 生産技術研究所(所長:藤井 輝夫、以下、東大生研)の喜連川 優の研究グループは、三重県名張市(市長:亀井 利克、以下、名張市)と協力し、地域における医療・介護・健診に関するビッグデータを活用し、エビデンスに基づく効率的な地域包括ケアシステムを実現するための研究の取組みを開始しました。

地域における医療・介護・健診に関する個々の施策は、国民健康保険、後期高齢者医療広域連合、介護保険広域連合、県庁をはじめとする複数の異なる制度や組織がそれぞれ担っていることから、従来、自治体において医療・介護・健診を一体的に捉えて分析し、施策の立案に活かす試みは十分には行われておりませんでした。医療経済研究機構と東大生研は、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」(プログラム・マネージャー:原田 博司、以下、ImPACT)の支援の下、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用する一体的な施策立案の実現を目指す研究を進め、昨年度、医療・介護・健診のそれぞれのビッグデータを統合して解析可能な超高速ヘルスケアビッグデータ解析システムの試作に成功しています。この度の取組みは、当該研究を発展させると共に、さらに名張市の協力を得ることにより、地域における医療・介護・健診の実態に即した地域包括ケアシステムの確立に向けた具体的な施策立案を目指すものであり、我が国で初めての試みです。

さらに、名張市は、地域福祉教育総合支援システムの推進を行っており、「名張版ネウボラ~妊娠・出産・育児の切れ目のない支援」、「まちじゅう元気!!プロジェクト」等の活動を行っています。医療・介護・健診に関するビッグデータに加え、新たなビッグデータを融合して活用していくことにより、科学的な自立支援等のエビデンスの分析も進めていきます。

本成果は、以下のプログラム・研究開発課題によって得られました。

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
URL:https://www.jst.go.jp/impact/

プログラム・マネージャー 原田 博司
研究開発プログラム 社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム
研究開発課題 医療データの統合・解析による予測モデルの構築とリスクシミュレータの開発:経年的患者実態把握と保険医療支出シミュレータの開発
研究開発責任者 満武 巨裕(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部 副部長)
研究期間 平成28年2月~平成30年3月

本研究開発課題では、数百億件の公的・学術的既存ビッグデータと医療計測リアルタイムビッグデータを解析して、個別で動的な高齢者の状況に応じた疾病・介護・社会的リスクの高精度予測アルゴリズムを構築し、リスク予測シミュレータの研究開発に取り組んでいます。その中で満武チームは、保険者から独自に収集した健診、医療・介護保険データ等を用いて、需要と供給の可視化等の解析による予測モデルの構築とリスクシミュレータの開発に取り組んでいます。

原田 博司 プログラム・マネージャーのコメント>

原田 博司 PM

本研究開発プログラムは、現状のビッグデータ規模を遙かに凌ぐ「超ビッグデータ」時代に向けて、広域通信ネットワークと超高速データベース処理の2柱を統合した基盤技術を世界に先駆けて確立するとともに、この基盤技術により、国民(ヒト)と生産現場(工場)の健全性維持のための課題解決に挑戦するものです。医療経済研究機構と東大生研の研究グループは、三重県下の自治体との協力関係の下、自身が開発した超高速ヘルスケアビッグデータ解析システムを駆使し、地域における通院実態や特定疾患の経時的変化の解明を進める等、先駆的な研究成果を次々と達成してきています。この度、名張市の協力を得て新たに着手する研究の取組みは、これまでに培ってきたビッグデータ分析に関する研究成果を昇華し、実際の地域医療施策の立案に繋げるものであり、我が国初の試みです。

<研究内容>

医療経済研究機構と東京大学は、これまで内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」(プログラム・マネージャー:原田 博司、以下、ImPACT)の支援の下、東大生研の保有する非順序型実行原理に基づく超高速データベース技術補足1)補足2)を用いた健康・医療ビッグデータの利活用に向けた研究を推進してきております補足3)補足4)。その一環として、地域における医療・介護・健診のビッグデータを活用した施策立案を目指す研究を進めてきており、昨年度には、医療・介護・健診のそれぞれのビッグデータを統合して解析可能な超高速ヘルスケアビッグデータ解析システムの試作に成功しています。当該システムにより、例えばに示すように、地域の通院動態を多角的に捉えることが可能となりました。現在、試作したシステムに対し、更に多くの健康・医療ビッグデータを取り込み、施策の立案に必要となる機能を追加し、実用化に資するよう発展させています。

<今後の展開>

医療経済研究機構と東大生研は、名張市の協力を得ることにより、この発展させた解析システムを用い、地域における医療・介護・健診の実態に即した地域包括ケアシステムの確立に向けた具体的な施策立案を目指す取組みを行います。具体的には、今年度中に医療・介護の需要供給の実態の可視化、特定健診受診率の向上と効率化分析、各種リスクファクターに基づくベンチマーク分析、医療・介護支出目標の予測手法の確立等を進め、これらの成果に基づき、来年度中に財源調整等の立案へ結びつける予定です。また、名張市が推進している「まちじゅう元気!!プロジェクト」補足5)等の活動と連携し、これらの活動から生み出されるビッグデータについても、生活習慣病の重症化予防、科学的な自立支援等への利活用に向けた分析を進める予定です。

<参考図>

三重県に於ける国民健康保険被保険者の通院動態の可視化の一例

図 三重県に於ける国民健康保険被保険者の通院動態の可視化の一例

<補足事項>

補足1)
喜連川 優,合田 和生.アウトオブオーダ型データベースエンジンOoODEの構想と初期実験.日本データベース学会論文誌.Vol.8 No.1, pp.131-136 (2009)
補足2)
山田 浩之,合田 和生,喜連川 優.128ノード規模のストレージインテンシブクラスタ環境におけるアウトオブオーダ型並列データ処理系の性能評価.電子情報通信学会論文誌 Vol.J98-D No.5, pp.728-741 (2015)
補足3)
満武 巨裕.日本のレセプト情報・特定健診情報等データベース(NDB)の有効活用.情報処理 Vol.56 No.2, pp.140-144 (2015)
補足4)
満武 巨裕.レセプトビッグデータ解析の現状と将来.実験医学 Vol.34 No.5, pp. 799-804 (2016)
補足5)
柴垣 維乃.まちじゅう元気!!プロジェクト~地域の元気づくり・人づくりのプロジェクト~.第57回全国国保地域医療学会,演題189 (2016)

<お問い合わせ先>

<研究(医療経済学)に関すること>

一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構
満武 巨裕(ミツタケ ナオヒロ)
〒105-0003 東京都港区西新橋1-5-11 第11東洋海事ビル2F
Tel:03-3506-8529 Fax: 03-3506-8528
E-mail:

<研究(情報学)に関すること>

東京大学 生産技術研究所

合田 和生(ゴウダ カズオ)
〒153-8505 東京都目黒区駒場四丁目6番1号
Tel:03-5452-6594 Fax: 03-5452-6577

<ImPACTの事業に関すること>

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラムの内容およびPMに関すること>

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9012 Fax:03-6380-8263
E-mail:

<報道担当>

一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構
〒105-0003 東京都港区西新橋1-5-11 第11東洋海事ビル2F
Tel:03-3506-8529 Fax: 03-3506-8528

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
E-mail: