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平成29年7月14日

ジャパンプローブ株式会社
科学技術振興機構(JST)
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

光超音波リアルタイム3Dイメージングを実現する
超音波センサの開発に成功

ポイント

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出」(プログラム・マネージャー:八木 隆行)の一環として、ジャパンプローブ株式会社 研究開発センター長の大平 克己(オオヒラ カツミ)氏らの研究開発グループは、1024個の超音波受信用の圧電振動子を球面形状に配置した超音波センサを開発し、光超音波イメージング法注1)によるリアルタイム3Dイメージングを実現しました。

光超音波イメージングを用いてリアルタイムに3D画像を得るためには、超音波センサとして乗り越えるべき3つの技術課題があります。第1に3D画像を得るには超音波センサの受信面を計測対象に向けて取り囲むような球面形状とすること、第2にリアルタイム計測を実現するには微弱な超音波をできるだけ多くの位置で受信できるように超音波センサの球面に多くの圧電振動子を並べる、いわゆる多チャンネル化すること、第3に検出される超音波は観察対象サイズに応じて音響周波数が変化しているため、低周波数から高周波数までの広い超音波を受信することができるよう広帯域化すること、が必要です。

従来の圧電振動子は、圧電効果注2)を持つセラミックス製圧電振動子注3)でできており、固いため、球面形状に成形することが困難でした。

今回開発に成功した超音波センサでは、モールド法注4)を用いて、薄くフィルム状の圧電振動子のシートを作製することで、球面形状に多数の素子を配置することが可能となりました。また、圧電振動子をコンポジット振動子注5)にすることで、周波数帯域1MHz~4MHz以上の広帯域な受信感度を実現しました。

本成果は、2017年7月19日より東京ビッグサイトで開催される「非破壊評価総合展」のジャパンプローブ株式会社のブースおよび、2017年8月31日より東京ビッグサイトで開催される「JSTフェア2017」のImPACTのブースで展示する予定です。

本成果は、以下のプログラム・研究開発課題によって得られました。

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
URL:http://www.jst.go.jp/impact/

大平 克己(ジャパンプローブ株式会社 研究開発センター 研究開発センター長)

大平 克己

プログラム・マネージャー 八木 隆行
研究開発プログラム イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出
研究開発課題 超高感度広帯域超音波センサ及び、実用化技術開発
研究開発責任者 大平 克己(ジャパンプローブ株式会社 研究開発センター 研究開発センター長)
研究期間 平成28年4月~平成31年3月

本研究開発課題では、高解像度リアルタイム3Dイメージングを実現する超音波センサの開発を目的として、1024個の圧電振動子を球面形状に配置した超音波センサのプロトタイプの試作開発および量産対応の実用化技術開発に取り組んでいます。

<八木 隆行 プログラム・マネージャーのコメント>

八木 隆行 プログラム・マネージャー

本プログラムでは、レーザ照射により発生する超音波を検出する光超音波法を高度化し、非侵襲で生体の血管網と血液状態(酸素飽和度)をリアルタイムに3Dイメージングする技術を開発し、早期診断や美容・健康に関わる身体機能モニタリングの実現を目指しています。さらに、工業材料中の劣化や亀裂などを可視化し、非破壊計測への展開を進めています。

今回、ジャパンプローブ株式会社は、世界で初めて1024チャンネルの振動子を持つ球面状の超音波センサの開発に成功しました。

光超音波イメージング法注1)により、生体内部の血管網を3Dイメージングするには、血管から発生する超音波をさまざまな方向から受信することが必要であり、球面状の超音波センサは最も理想的な形状となります。さらに高解像度のリアルタイム画像を得るには、微弱な超音波をできるだけ多くの圧電振動子で受信することが必要です。ジャパンプローブ株式会社は、両方の課題を解決する球面形状で1024チャンネルを持つ超音波センサを開発し、本プログラムの目標とする血管網のリアルタイム3Dイメージングへの道を拓くことができました。

<研究の背景と経緯>

ImPACT八木 隆行 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムでは、光超音波技術をベースにした人体の血管網と血液状態の可視化を行う高解像度リアルタイム三次元可視化システムおよびその応用に関する研究開発を行っています。

このシステムに供する超音波センサとしては、リアルタイム計測するために、発生する超音波信号を一括で検出する圧電振動子の多チャンネル化(目標:1024チャンネル)が必要であり、また三次元可視化のための球面状を実現する超音波センサ製造技術を開発する必要があります。

さらに、このシステムで検出すべき超音波は、観察対象サイズに反比例して高周波化するため、超音波センサには、従来の倍以上の超音波周波数を検出する広帯域化が必要です。

<研究の内容>

ジャパンプローブ株式会社は、上述の課題を解決するため、以下の技術開発を行ってきました。

【多チャンネルの球面状超音波センサの開発】

ジャパンプローブ株式会社では、曲げたり撓み(たわみ)を持たせることが可能な「可撓性」を有する、独自の超音波フレキシブルアレイプローブを開発してきました。

本研究では、超音波フレキシブルアレイプローブで培った製造技術にモールド法を導入することで、半球フィルム上に、保護層、コンポジット振動子、ダンパー材注6)の3層構造からなる圧電振動子を形成するとともに、図1の通り半球形状のフィルム状の圧電振動子に複数の電極を配列し多チャンネル化する電極形成技術の開発に成功しました。

これにより球面状に多数の素子を形成することが可能になりました。

本技術と微細はんだ付け技術を用いてリード線を実装することにより、図2に示す球面状の多チャンネル超音波センサ(直径110mmの半球に1024チャンネルの圧電振動子を配置)のモジュールを完成することができました。

【コンポジット振動子の受信周波数帯域の広帯域化】

コンポジット振動子に用いる圧電材料、整合層、ダンパー材を最適化することで、図3の通り周波数帯域が広く、光音響として用いるレベルの感度を有する圧電振動子の開発に成功しました。

図4に、このセンサを用いて、光超音波イメージング法によって得られた、0.3mmφのワイヤーを画像化した例を示しています。

今後、これら要素技術を組み合わせ、多チャンネル超音波センサの性能を向上させていきます。

<参考図>

図1 フィルム状の超音波圧電振動子

図2 球面状の超音波センサモジュールのモックアップ

(直径110mmの半球に1024個の圧電振動子を配置。一部のみ表示。)

図3 コンポジット振動子の受信周波数帯域

図4 光超音波イメージング法で得られた 0.3mmφのワイヤー(5本)の画像

<用語解説>

注1) 光超音波イメージング法
レーザ光を照射し、吸収体が光を吸収し、吸収体が熱膨張して発生する音波(光音響効果)を検出し、イメージングする手法です。
図 光超音波イメージング法
注2) 圧電効果
物質に圧力を加えた時にその圧力に比例した電圧が生じる効果。圧電効果を生じる物質を圧電体といいます。これにより受信した音圧に応じた電気を生じさせることができます。圧電体の材料としては、セラミックスが一般的です。
注3) 圧電振動子
圧電効果を利用して、外部から伝搬してきた振動を受信して電気信号に変換する素子です。圧電体だけでは電気信号の取り出しができないので、圧電体の上下に電極を付け、リード線を付けて電気部品素子とします。また、一般的には電圧を印加することで逆に振動を外部に伝搬させることもできます。例えば、超音波診断装置などで用いられています。
図 圧電振動子
注4) モールド法
型を用いて形状を形成する技術です。プレス加工、プラスチック樹脂加工、金属注型で用いられる技術であり、一般的には量産時のコストダウン手法として用いられています。モールドに適した材料を利用する必要がありますが、固くてもろいセラミックスはモールドが難しい素材で、何にでも適用することができるわけではありません。
注5) コンポジット振動子
セラミックス製の圧電体を写真左のように柱状に切り込みを入れ写真右のようにその隙間に樹脂を充填し、電極(ここでは金電極)を付け、リード線を取出したものです。柱状にすることで厚み方向の振動効率が上がり、セラミックス製の圧電体より性能が上がります。
図 コンポジット振動子
注6) ダンパー材
振動子の振動を抑制するもの。振動子はそのままでは自由振動をしてしまい、結果として、お寺の鐘のように鳴り続けてしまいます。振動を止めるには押さえ付ける必要がありますが、この役割を果たすのがダンパー材です。一般には密度の大きい金属などを混ぜたものを貼り付けます。振動を抑制することで、受信信号の時間分解能が上がります。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

ジャパンプローブ株式会社 研究開発センター
研究開発センター長 大平 克己
〒232-0033 横浜市南区中村町一丁目1番地14
Tel:045-242-0531 Fax:045-242-0541
E-mail:

<ImPACTの事業に関すること>

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラム内容およびPMに関すること>

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9012 Fax:03-6380-8263
E-mail:

<報道担当>

ジャパンプローブ株式会社 営業部 広報担当 小林 哲也
〒232-0033 横浜市南区中村町一丁目1番地14
Tel:045-242-0531 Fax:045-242-0541
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科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
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