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平成29年4月17日

自治医科大学
株式会社エー・アンド・デイ
科学技術振興機構(JST)
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

環境・生体信号を同時に時系列記録できるマルチセンサー携帯型自動血圧計を開発

ポイント

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム(プログラム・マネージャー:原田 博司)のプロジェクトの1つであるヘルスセキュリティ(プロジェクトリーダー:学校法人 自治医科大学・永井 良三 学長)の一環として、同大学内科学講座 循環器内科学部門・苅尾 七臣 教授の研究グループおよび株式会社エー・アンド・デイ(本社:東京都豊島区、代表取締役執行役員社長:森島 泰信)の共同研究により、気温・気圧に加え、高感度身体活動注1)などの環境生活信号と、血圧・脈拍・カフ容積脈波形注2)の生体信号を同時に時系列記録できるマルチセンサー携帯型自動血圧計TM-2441「医療機器承認番号 229AHBZ0000700」()を開発しました。

血圧は常に変動しており、それを評価するにはスポットの血圧測定では不十分と言われています。本携帯型自動血圧計は、身体装着可能な小型血圧計で、自由行動下での血圧測定が可能です。

24時間の血圧測定を行うことで、診察室血圧のみでは評価できない夜間睡眠時の血圧を含め、血圧の日内変動注3)を検出することが可能で、白衣性高血圧注4)仮面高血圧注5)早朝高血圧注6)などの評価が可能となります。

また、本血圧計は24時間血圧計としてのみならず家庭用血圧計、診察室血圧計としても使用可能なAll-in-One血圧計です。これにより、個人の環境・生活リズムを考慮した循環器疾患の個別治療への利活用が期待されています。

 

本研究成果は、2017年4月19日-21日に開催される「第2回へルスケアIT 2017展」(東京ビックサイト)株式会社エー・アンド・デイブースにて展示されます。

<原田 博司 プログラム・マネージャーのコメント>

PM

本研究開発プログラムにおいては、各個人の過去の公的医療データを時系列化し、それを統計的に処理することにより、疾病リスクを予見・先手で発見するシステムを開発しています。このシステムに加え、各個人の現在の生体情報計測データも用いることにより、疾病リスクの予見精度をさらに向上させることが可能になります。今回、このマルチセンサー携帯型自動血圧計の開発の成功により、自動的に複数種類の血圧に纏わるビッグデータが収集でき、精度向上した予見が具体的な形で実現されていくことが期待されます。

<研究の背景と経緯>

原田 博司 プログラム・マネージャーのImPACT研究開発プログラムでは、現状のビッグデータ規模を遥かに凌ぐ「超ビッグデータ」の創出・活用を可能とする国内最大規模の公的医療データと連続計測データの複合解析を行い、予見先手によるリスク管理をすることで病気の予防や治療に役立てるヘルスケア・医療サービスを目指す、ヘルスセキュリティに関する研究開発を行っています。

このヘルスセキュリュティ実現のためには、現在、医療機関にて計測された数千人規模の生体情報データを自動でクラウドへ転送できるネットワークの基盤が必要になります。しかし、現状、このようなデータベースの整備が十分できておりません。本研究では、公的医療データに基づくマクロデータと、個人において計測されるミクロデータの融合ができる基盤を構築することで、ヘルスセキュリティの実現を目指しています。特に、このミクロデータの一つとして血圧に着目しています。

高血圧は脳卒中や心不全の最大のリスク因子の一つで、高齢化社会が進む中、高血圧人口の増加に伴い医療機関における血圧測定の機会は増えています。高血圧診断に血圧測定の重要性は高く、さらに、最近の高血圧治療ガイドラインでは高血圧の管理・診断における診察室外血圧の重要性が強調されています。現状、携帯型の血圧計は主に血圧値しか、測定することができませんでした。しかし、測定時の環境生活信号と、血圧測定時の数値のみならず血圧波形等も同時に測定できる事になれば、より精度の高いリスク予測を行うことが可能になります。

<研究の内容>

今回、気温・気圧、に加え高感度身体活動など、環境生活信号と、血圧・脈拍・カフ容積脈波形の生体信号とを同時に時系列記録できるマルチセンサー携帯型自動血圧計TM-2441を開発しました()。

血圧は常に変動しており、血圧を評価するにはスポットの血圧測定では不十分と言われています。本携帯型自動血圧計は、身体装着可能な小型血圧計で、自由行動下での血圧測定が可能です。24時間の血圧測定を行うことで、診察室血圧のみでは評価できない夜間睡眠時の血圧を含め、血圧の日内変動を検出することが可能で、白衣性高血圧、仮面高血圧、早朝高血圧などの評価が可能となります。

また、本血圧計は24時間血圧計としてのみならず家庭用血圧計、診察室血圧計としても使用可能なAll-in-One血圧計です。これにより、個人の環境・生活リズムを考慮した循環器疾患の個別治療への利活用が可能となります。

<今後の展開>

今後、内閣府による革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」にて本血圧計を活用し、ビッグデータを用いた臨床エビデンス構築を目指します。特にImPACTプログラム研究においては、本血圧計を用いて、個人の血圧情報に加え、同時に多種の環境時系列データを自動取得するシステムを構築し、ミクロレベル医療データの解析に必要とされるデータ解析プラットフォームの構築を行います。

株式会社エー・アンド・デイは、血圧計等バイタルセンサー機器(家庭血圧、24時間型血圧)の測定結果をクラウド側に収集できるシステムの構築を行います。また、自治医科大学では、この血圧計を用いて各地域での実証研究を行い、得られたデータを解析検討し、リスク指標を同定します。 また、このリスクを解析、同定するアルゴリズム開発及びプログラムの実装を行います。最終的にカフ血圧波形データ、心機能、血管状態、臓器障害指標等のデータを統合し、ビッグデータ解析を行うことで、循環器イベントの発症をシミュレーションするアルゴリズムを開発し、循環器イベント発症をリアルタイムで正確に予見するシステム、循環器イベントリスクシミュレータを構築します。

<参考図>

図 携帯型自動血圧計

<用語解説>

注1) 高感度身体活動
微小な体動を検知できる加速度センサーで記録した身体活動。
注2) カフ容積脈波形
心臓の拍動から生じる血流を血圧測定用のカフによって得られる容積変化のこと。
注3) 日内変動
脳にある「体内時計」によってコントロールされた覚醒-睡眠のリズムに伴って、体温・心拍数・血圧等の値が、1日の中で変動すること。
注4) 白衣性高血圧
病院の診察室などで緊張により普段よりも高い血圧が計測される現象。
注5) 仮面高血圧
診察室で測定した血圧値は正常であるが、家庭などで自己測定した血圧が高くなり、高血圧となる現象。
注6) 早朝高血圧

昼間の血圧は正常でも朝の血圧が高くなる現象。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

苅尾 七臣(カリオ カズオミ)
自治医科大学 内科学講座 循環器内科学部門 主任教授
〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1
Tel:0285-58-7538 Fax:0285-44-4311
E-mail:

<ImPACTの事業に関すること>

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラム内容およびPMに関すること>

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9012  Fax:03-6380-8263
E-mail:

<報道担当>

学校法人 自治医科大学 研究支援課
〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1
Tel:0285-58-7550 Fax:0285-40-8303

株式会社エー・アンド・デイ グローバルマーケティング本部 メディカル事業推進部
〒170-0013 東京都豊島区東池袋3-23-14
Tel:03-5391-6120 Fax:03-5391-1566

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
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