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平成29年3月16日

株式会社日立国際電気
京都大学
科学技術振興機構(JST)
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

従来比100倍のエリアをカバーするIoTデータ収集・制御用
広域系Wi-RANシステム用小型無線機の基礎開発に成功

ポイント

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の原田 博司 プログラム・マネージャーが推進する「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」の一環として、株式会社日立国際電気(以下、日立国際電気、代表執行役 執行役社長:佐久間 嘉一郎)の加藤 数衞の研究グループは、このたび広域系Wi-RAN注1)システム用無線機(以下、本装置)の小型化、基礎開発に成功しました。

従来の広域系Wi-RANシステムでは、無線中継段数に制約がある上、中継のために1拠点あたり複数の無線機を必要とするなど、設置場所・消費電力などの観点から、超広域かつ広帯域なデータ収集システムを構成することの障壁となっていました。

本装置は、従来の広域系Wi-RANシステム用無線機に比べ、低消費電力かつ小型であるとともに、中継段数無制限のスケーラブルな多段中継機能を具備させることにより、従来比100倍である数km~数十kmという飛躍的な通信距離拡大を実現するものです。

本装置は、通信方式にOFDM注2)、変調方式に64QAM注3)などの多値変調を用いて、数千のセンサーから情報を伝達することに必要な、大容量のデータ通信(最大約4Mbps)を実現し、従来のWi-RAN装置では2台の無線機で行っていた無線多段中継を1台の無線機で行うことにより、大幅に小型・軽量化を実現することに成功しました。

【広域系Wi-RAN 無線多段中継装置】

また本装置は、今後の研究開発により創出される多様な研究開発成果を、実環境下で確認するためのプラットフォームとして活用していくことを予定しています。

なお本信号処理ソフトウェア部は、京都大学 大学院情報学研究科 原田 博司 教授が主体的に開発した成果を用いています。

本成果は、以下のプログラム・研究開発課題によって得られました。

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) http://www.jst.go.jp/impact/

プログラム・マネージャー 原田 博司
研究開発プログラム 「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」
研究開発課題 「超ビッグデータ創出ドライバ用広帯域無線機の研究開発」
研究開発責任者 「加藤 数衞 (株式会社日立国際電気)」
研究期間 平成28年度~平成30年度

本研究開発課題では、数十km以内のエリアに存在する数万のメーター、センサーからデータ収集、機器制御を行う超ビッグデータを創出可能な多段中継広帯域無線機の研究開発に取り組んでいます。

<原田 博司 プログラム・マネージャーのコメント>

PM

社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォームを構築するためには各種センサー、メーター、モニターに代表される数千のIoTデバイスから創出された超ビッグデータを効率的に処理エンジンに伝送する必要性があります。今回開発したWi-RAN対応小型無線機は数千のIoTデバイスからの超ビッグデータを数kmの範囲内で収集し、かつそのデータを多段中継により数十km先の処理エンジンに伝送可能とするものです。今回この規格に対応した無線機の開発に成功したことにより、簡単に超広域の超ビッグデータ収集が可能となります。

<研究の背景と経緯>

ImPACT 原田 博司 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムでは、現状のビッグデータ規模をはるかにしのぐ「超ビッグデータ」の創出・活用を可能とする超ビッグデータプラットフォーム(図1)を構築し、この技術による新たな社会応用として、製造工場へのサイバー攻撃、故障の撲滅を目指すファクトリセキュリティと予見先取ヘルスケア・医療サービスを目指すヘルスセキュリティに関する研究開発を行っています。

IoT(Internet of Things:“モノ”のインターネット)の時代を迎え、本プログラムで提案している超ビッグデータプラットフォーム実現のためにも、センサー、メーター、モニターなどの各種計測器に無線デバイスを備え、創出されたビッグデータをインターネットなどを介して効率的に処理エンジンに伝送する技術が求められてきています。この無線デバイスによるネットワーク(以下、NW)実現のためには、高品質で長距離かつ安全で消費電力の低いNW技術が必要です。

また、超ビッグデータプラットフォームは、超高能率無線スマートライフラインNW(狭域系Wi-SUN注4)システム)による一次的なデータ収集と、超広域高能率無線中継ラインNW(広域系Wi-RANシステム)による二次的なデータ収集をシームレスに統合することにより構成されます。高信頼性、高レスポンス性(数十ms)を保ちつつ自らNWを構築して、数kmから数十km以内に存在する千から数万のモニタ・センサから、1日数百万から数億生成されるビッグデータを収集するものです。

超ビッグデータプラットフォームの構成要素のひとつである広域系Wi-RANシステムについては、これまで、情報通信研究機構(以下、「情報通信研究機構」)が国際標準化に取り組み、京都大学において当該方式の大容量伝送するための高能率受信方式の開発を行ってきました。日立国際電気は情報通信研究機構からの技術移転を受け、無線機の開発に成功し、共同で実用化を行ってきました。しかし、従来の広域系Wi-RAN無線機は、中継機能を持つものの、中継段数に制限があり広域をカバーすることが難しいという問題がありました。

<研究の内容>

今回のImPACTにおける研究開発プログラムの中で、日立国際電気は超ビッグデータ創出ドライバ用広域系無線機の研究開発を担当し、その成果の一部として広域系Wi-RANシステム用無線機を開発しました。主要諸元を(図2)に示します。本装置は、従来の広域系Wi-RANシステム用無線機に比べ、低消費電力かつ小型であるとともに、原理的に中継段数は無制限の多段中継機能を具備させることにより、従来比100倍である数km~数十kmという飛躍的な通信距離拡大を実現するものです。また、従来のWi-RAN装置では2台の無線機で行っていた無線多段中継を1台の無線機で行うことにより、大幅に小型・軽量化を実現することに成功しました。図3に従来型無線機との比較を示します。中継利用時の所要設置スペースが約1/5化、質量では、約1/4化を達成しております。

<今後の展開>

本装置は、現在は基本的な無線通信機能のみ実装していますが、ソフトウェア無線技術を活用し、今後以下に示す研究開発成果を順次追加実装してまいります。

平成29年度中にプログラム全体の構成要素との接続試験を完了し、最終的に平成30年度末のプログラム完了までに、京都大学と日立国際電気の産学官連携体制のもと、医療関係や工場関係の数kmから数十km以内に存在する千から数万のモニターやセンサーから、1日数百万から数億生成されるビッグデータを、高信頼性、高レスポンス性(数十ms)を保ちつつ自らNW構築し、収集することができる無線通信NW(従来比100倍のカバーエリア、収容能力)を可能とする「超ビッグデータ創出ドライバ」の実現を目指します。

<参考図>

図1 従来別個のシステムであった狭域系Wi-SUNシステムと
広域系Wi-RANシステムの統合による超ビッグデータ創出ドライバの概要

項目 内容
通信方式 OFDMA/TDD
変調方式 下り(DL) QPSK、16QAM、64QAM
上り(UL) QPSK、16QAM、64QAM
定格送信出力 1W(30dBm)
ダイバシチ受信 最大比合成方式(2ブランチ)
外形寸法 W:210×H:90×D:200(mm)(突起物含まず)
質量 3kg以下(本体)
環境対応 RoHS対応
消費電力 公称70VA以下
その他機能 多段中継機能 36ホップ(原理的には無制限)
想定するカバーエリア 基地局から最大半径約3km(オムニアンテナ利用時)

図2 広域系Wi-RAN無線多段中継装置 主要諸元

仕様項目 従来型無線機 小型無線機
送信出力 1W 1W
消費電力 80VA以下 70VA以下
外形寸法 W:228×H:335×D:122
(mm)
W:210×H:90×D:200
(mm)
質量 6kg以下 3kg以下
容積 約10L 約4L
中継使用時 従来型多段中継無線機 小型多段中継無線機
中継利用時の消費電力 160VA 70VA以下
中継利用時の所要スペース 約20L 約4L
中継利用時の質量 12kg以下 3kg以下
多段中継機能 2ホップ 36ホップ(原理的には無制限)
想定する中継通信距離 約15km 約117km
(原理的には無制限に延伸可能)

中継利用時、従来型は無線機が2台必要となる

図3 従来型との比較

<用語解説>

注1) Wi-RAN(Wireless Regional Area Network)
数km~数十kmの範囲をカバーする地域無線NWの呼称。
注2) OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)
デジタル変調の一種で直交周波数分割多重方式の呼称。
注3) 64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation)
デジタル信号を無線信号に変換する変調技術のひとつで、直交振幅変調の呼称。
注4) Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)
最大1km弱程度の距離で相互通信を行う省電力無線通信規格。標準化は情報通信研究機構の主導により実施された。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

堂坂 淳也(ドウサカ ジュンヤ)
株式会社日立国際電気 映像・通信事業部 通信装置設計本部 無線機器設計部
〒187-8511 東京都小平市御幸町32番地
Tel:042-322-3111
E-mail:

原田 博司(ハラダ ヒロシ)
京都大学 情報学研究科 通信情報システム専攻
〒606-8501 京都府京都市左京区吉田本町
Tel:075-753-5317
E-mail:

<ImPACT事業に関すること>

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラム内容およびPMに関すること>

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9012 Fax:03-6380-8263
E-mail:

<報道担当>

株式会社日立国際電気(CSR本部広報室)
〒105-8039 東京都港区西新橋2-15-12(日立愛宕別館6F)
Tel:03-6734-9401 Fax:03-3502-2507
E-mail:

京都大学 企画・情報部 広報課 国際広報室
〒606-8501 京都市左京区吉田本町36番地
Tel:075-753-5727 Fax:075-753-2094
E-mail:

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
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