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平成28年9月28日

株式会社ブリヂストン
科学技術振興機構(JST)
内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)

強靭高分子複合体による省資源タイヤの実現

ポイント

本発表は、株式会社ブリヂストンが内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の伊藤 耕三 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として取り組んだ研究成果です。

近年、タイヤにはさらなる低燃費性や省資源性が求められており、ブリヂストンではタイヤの転がり抵抗の低減や、タイヤ一本あたりの原材料使用量を減らす取り組みなどを行っています。

こうした取り組みを加速させるため、ブリヂストンは伊藤 耕三 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムに参画し、産官学の連携による革新的な強靭高分子複合体「タフポリマー」の開発に取り組んでいます。これは、既存技術の枠を超えた高強度な材料を開発し、タイヤの各部材をより薄くすることで、タイヤ重量の軽量化と材料使用量を削減し、さらなる低燃費性・省資源性の実現を目指すものです。

これまでの活動から強靭化に向けた設計指針が大学の研究室から提示されており、現在この指針を基に材料を開発中です。今回、ブリヂストンでは、燃費特性を意識した標準的なゴム配合(基準配合)に対して燃費特性を大きく損なうことなく、き裂進展の転移エネルギーを約4倍強上昇させる材料の開発に成功しました。この開発段階の材料をゴムクローラに用いて実証検証を行った結果、摩耗速度が60%低減し、設計指針の妥当性を確認しました。今後、さらなる強靭性の向上と、低燃費性との両立を追求していきます。

本研究は、京都工芸繊維大学 浦山 健治 教授、お茶の水女子大学 奥村 剛 教授、東京大学 梅野 宜崇 准教授らと共同で行ったものです。

本成果は、以下のプログラム・研究開発課題によって得られました。

PM

角田 克彦
フェロー

内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT) http://www.jst.go.jp/impact/

プログラム・マネージャー 伊藤 耕三
研究開発プログラム 超薄膜化・強靱化「しなやかなタフポリマー」の実現
研究開発課題 強靭高分子複合体に因る省資源タイヤの実現
研究開発責任者 角田 克彦
株式会社ブリヂストン 中央研究所 フェロー
研究期間 平成26年10月~平成30年3月

本研究開発課題では、強靭な高分子複合体による省資源タイヤの実現に取り組んでいます。

<伊藤 耕三 プログラム・マネージャーのコメント>

PM

本チームでは、「タイヤ薄ゲージ化プロジェクト」において、タイヤを構成する各種部材を強靭化し薄くすることで、タイヤの省資源化および軽量化を実現することを目指しています。今回、アカデミアによる実験解析や理論計算とブリヂストンの材料技術を融合することにより、き裂進展挙動の本質を明らかにすることで、ゴム・エラストマー注3)材料における高速き裂進展の大幅抑制に成功しました。これは、タイヤの耐久性の向上や耐摩耗性能の顕著な向上に繋がる成果であり、まさに非連続イノベーションの実現といえます。今後は、検討の中で得られた材料設計指針を基にさらに強靱な材料を開発し、プロジェクトの最終目標であるタイヤ重量の大幅な軽量化とそれによる低燃費性の達成を期待しています。

<研究の背景と経緯>

近年の環境問題に対する関心の高まりを受け、タイヤにはますます、低燃費性・省資源性が求められています。低燃費性を向上するために、ゴム材料の転がり抵抗の低減、すなわち粘性散逸注4)の低いゴム材料の開発と適用が各社で精力的に行われています。一方、タイヤの各構成部材の薄ゲージ化による重量の低減は、タイヤ使用時の低燃費性に大きく貢献するだけでなく、使用する原材料の削減による省資源性、生産時の消費エネルギーの低減、さらには廃棄時の廃棄物量の削減にも繋がることから、タイヤライフサイクル全般に渡って有効です。しかし、薄ゲージ化を実現するためには十分な耐久性能の確保が必要であり、既存技術の枠を超えた強靭な材料の開発が必要です。ブリヂストンは、「ImPACT」の「超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現」活動を通して、これまでの限界を超えた高強度材料を開発し、省資源タイヤを具現化することでサステナブル社会への貢献を目指します。

<研究の内容>

ゴム・エラストマーの強靭化の視点としては、高破断強力、高破断歪、耐摩耗性、耐カット性、耐引裂き性など多岐にわたる強度特性が挙げられますが、それらに共通する課題は、潜在欠陥(初期き裂)の生成とその成長(き裂進展)の抑制と考えられています。本プログラムにおいてブリヂストンは、き裂進展、特に所定のエネルギー解放率注5)を与えき裂を自走させた際に観察される特異なき裂進展速度の転移挙動注6)図1)に着目し、産官学の連携で、その本質理解と転移エネルギー注7)の制御手法の確立に取り組んでいます。具体的には、①き裂先端の形状変化に着目した実験的マクロスケール解析、②大規模放射光設備などを活用したき裂先端の実験的ミクロスケール解析、③理論物理・計算機シミュレーション、④新概念材料の具現化、の4つの視点からの取り組みを同時並行で進めています。

これまでの活動から、強靭化に向けた設計指針が大学の研究室から提示されておりこの指針とブリヂストンの有する材料設計技術を用いて、ゴム・エラストマー材料での具現化を進めています。現時点では燃費特性を意識した標準的なゴム配合(基準配合)に対して燃費特性を大きく損なうことなく、き裂進展の転移エネルギーを約4倍強上昇させる材料を開発しました(図3)。この材料をゴムクローラに用いて実証検証を行った結果、基準配合に対して摩耗速度が60%低減することを確認でき、設計指針の妥当性を確認しました(図4)。

<今後の展開>

今後、さらなる強靭性の向上と、低燃費性との両立を目指していく予定です。

<参考図>

図1 き裂進展評価方法の概念図

長方形のゴムシートの長手方向を掴み、幅方向に所定の歪(ひずみ)まで伸長し、歪を固定します。そこで伸長した試験片の片側面に初期き裂を導入し、き裂の進展速度や進展形態を高速度ビデオカメラなどを用いて解析します。

図2 き裂進展全体像と転移挙動の概念図

与えたエネルギー解放率でのき裂進展速度をプロットすると、あるエネルギー解放率(転移エネルギー)でき裂進展速度が不連続に増大します。ブリヂストンでは、この転移エネルギーの増大に取り組んでいます。

図3 現在の開発状況

一般的に、転移エネルギーは粘性散逸を大きくすることで増大します。しかし粘性散逸が大きくなると、燃費特性が悪化します。タイヤでは省燃費性が求められますので、粘性散逸を増加させずに転移エネルギーを大きくすることを目指しています。

図4 ゴムクローラを用いた実証検証結果

耐久走行時の摩耗速度を基準配合と比較すると、本研究成果を適用した開発ゴム配合は摩耗速度が60%低減することを確認し、開発指針の妥当性を確認しました。

<用語解説>

注1) 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
「ImPACTImpulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Program」とは、実現すれば産業や社会のあり方に大きな変革をもたらす革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進することを目的として創設されたプログラム。
注2) ゴムクローラ
コンバイン、トラクター、ミニショベルなどの農業機械や建設機械に使用されるゴム製の履帯(りたい)。
注3) エラストマー
常温でゴム弾性を示す高分子物質を指す。一般的には、常温における伸びが200%以上で、外力を取り除けば短時間でほぼ元の長さに戻る高分子物質をいう。
注4) 粘性散逸
ゴム・エラストマーは、弾性と粘性の両方を有する粘弾性体である。粘性が働くことによって、与えられたエネルギーが熱エネルギーに変換されることをいう。
注5) エネルギー解放率
ある温度、ある歪速度で、単位面積の破壊面を形成させるために要するエネルギーのこと。ゴム、エラストマーでは、引裂きエネルギーと呼ぶこともある。
注6) き裂進展速度の転移挙動
一定のエネルギー解放率下でき裂を自走させてそのき裂進展速度を計測する試験において、あるエネルギー解放率でき裂進展速度が急激に増大する現象。一般的にこのエネルギー解放率を跨いでき裂進展速度が100~1000倍程度大きくなる。
注7) 転移エネルギー
き裂進展速度の転移挙動が起こるときのエネルギー解放率のこと。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

角田 克彦(ツノダ カツヒコ)
株式会社ブリヂストン 中央研究所 研究第1部
〒187-8531 東京都小平市小川東町3丁目1番1号
Tel:042-342-6252 Fax:042-345-6113
E-mail:

<ImPACTの事業に関すること>

内閣府 革新的研究開発推進プログラム担当室
〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
Tel:03-6257-1339

<ImPACTプログラム内容およびPMに関すること>

科学技術振興機構 革新的研究開発推進室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-6380-9012 Fax:03-6380-8263
E-mail:

<報道担当>

株式会社ブリヂストン 広報部 広報第二課
〒104-8340 東京都中央区京橋3丁目1番1号
Tel:03-6836-3333 Fax:03-6836-3184

科学技術振興機構 広報課
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
Tel:03-5214-8404 Fax:03-5214-8432
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