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平成28年5月17日

山形大学
科学技術振興機構(JST)

山形大学発のプリンテッドエレクトロニクス技術を
事業展開するベンチャー企業設立

山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任 静士 教授と熊木 大介 准教授らは、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)の支援により得られたプリンテッドエレクトロニクス注1)に関する研究開発成果をもとに、微細な印刷半導体回路注2)を実現する銀ナノ粒子インク注3)の開発・販売や、その応用製品であるフィルム型のセンサデバイスを試作・開発する「株式会社フューチャーインク」を設立しました。株式会社フューチャーインクでは、高性能な印刷半導体回路を形成する技術をコアテクノロジーとして、ヘルスケアセンサを始めとした高付加価値なプリンテッドデバイス注4)をより低コストで提供することで、だれもが快適で暮らしやすい社会の実現を目指します。

<企業概要>

社名:株式会社フューチャーインク(Future Ink Corporation)

設立日:平成28年4月1日

所在地:山形県米沢市城南4-3-16(山形大学 工学部キャンパス内)

資本金:1,000万円

役員:代表取締役社長 時任 静士、取締役副社長 熊木 大介、他4名

事業内容:

株式会社フューチャーインクは、山形大学 有機エレクトロニクス研究センターのプリンテッドエレクトロニクスに関する材料技術、プロセス技術、デバイス技術を事業展開し、高性能な印刷半導体回路を実現する「銀ナノ粒子インクの製造・販売」やこれを応用したヘルスケアや医療応用等に向けた「プリンテッドデバイスの試作・販売」を行っていきます(図1)。

プリンテッドデバイスは、薄いフィルム上に印刷プロセスで形成された電子デバイスで、人に貼って使うことや衣服として装着した際にも違和感が無いフィルム型のセンサデバイスを実現できるため、ヘルスケアや医療分野において今後ニーズが大きく拡大すると期待されています。

一般的に、センサの制御やセンサで得られた信号を処理して無線で情報送信するには、薄膜トランジスタ(TFT)注2)を多数組み込んだ半導体回路が不可欠となります。しかしながら、これまでのプリンテッドエレクトロニクス技術では、そのように複雑な印刷半導体回路を形成することが困難でした。

株式会社フューチャーインクでは、「低温」、「10μm以下の微細な線幅」、「高い歩留り」で半導体回路を形成できる優れた特徴をもつ銀ナノ粒子インクの開発に成功しています。また、ロール・ツー・ロール注5)印刷プロセスを使った大規模な半導体回路やセンサデバイスの製造技術の開発も進めており、プリンテッドエレクトロニクスの中でも特に、高性能な印刷半導体回路を形成する技術に強みを持っています。

この印刷半導体回路を中心としたプリンテッドデバイスの事業化を進めて、ヘルスケアセンサや大面積シート型センサ(図2)、電子ペーパーといった、高付加価値の新しい電子デバイス市場の開拓を目指します。

<研究開発の内容>

山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)の時任教授、熊木准教授の研究グループでは、全て印刷プロセスで形成したTFT回路の高性能化や、ロール・ツー・ロール方式のインクジェット印刷装置による大面積TFT回路の試作、タンパク質、アミノ酸、糖質などの生体を構成する材料を電気的にセンシングする有機TFT型バイオセンサの開発など、プリンテッドエレクトロニクスに関連した、材料、デバイス、プロセス技術を網羅する研究開発を進めています。

特にSTARTでは、印刷半導体回路の高性能化にフォーカスし、微細な配線を形成する印刷装置に適用可能な銀ナノ粒子インクの開発や、大規模な印刷装置に適用できる量への銀ナノ粒子インクの製造スケールアップ、それを用いたロール・ツー・ロール印刷プロセス開発に関する研究を進めてきました。 その結果、従来の技術では難しかった銀ナノ粒子インクの表面エネルギー注6)制御に成功し、従来のインクジェット印刷では難しかった線幅10μmよりも微細な配線を形成することに成功しました。また、銀ナノ粒子インクの製造量について、合成プロセスの最適化等により、ラボスケール(1g)からロール・ツー・ロールインクジェット印刷装置などが扱えるスケール(50g)へのスケールアップも達成しています。さらに、開発した銀ナノ粒子インクを用いて作製したTFTにおいて、センサを十分に駆動できる1cm/Vsのホール移動度注7)が得られており、本技術で得られるTFTが実用に耐えうることを確認いたしました。これらの研究開発成果については、銀ナノ粒子インクに関する特許をはじめとして、フレキシブルデバイス注8)で重要となる電極密着性の向上技術に関する特許なども権利化しています。

<山形大学 有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)について>

山形大学では、有機エレクトロニクス、プリンテッドエレクトロニクス、フレキシブルエレクトロニクスといった次世代エレクトロニクスをコアとする研究開発拠点事業を推進しています。拠点の中核となる有機エレクトロニクス研究センター(ROEL)では、次世代エレクトロニクスの開発を目的とする共同研究企業が50社以上集積していると同時に、数多くの海外研究機関とも連携しており、プリンテッドエレクトロニクスの世界的な研究拠点の1つとして注目されています。

今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。

研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)

プロジェクト名 「微細印刷集積回路に向けた高精細、高機能な銀ナノ粒子インクの開発、製造・販売」
研究代表者 熊木 大介(山形大学 有機材料システム研究科 准教授)
事業プロモーターユニット 東北イノベーションキャピタル株式会社
研究開発期間 平成25~27年度

STARTでは大学等の革新的技術の研究開発支援と、民間の事業化ノウハウを持った人材(事業プロモーター)ユニットを活用した事業育成を一体的に行い、企業価値の高い大学発ベンチャーの創出を目指しています(詳細情報:http://www.jst.go.jp/start/)。

STARTは平成24年度に大学発新産業創出拠点プロジェクトとして文部科学省により創設され、平成27年度からJSTに大学発新産業創出プログラムとして移管されました。

<参考図>

図1 株式会社フューチャーインクの事業イメージ

図2 90cm×60cmのPETフィルム上に、ロール・ツー・ロール方式のインクジェット印刷装置で
試作した大面積印刷回路(東レエンジニアリング株式会社との共同開発)

<用語解説>

注1) プリンテッドエレクトロニクス
印刷プロセスを用いて電子回路を形成する研究分野の総称で、特に小型・薄膜状の電子デバイスを大量に低コストで製造できる技術が産業的に非常に注目されています。
注2) 印刷半導体回路、薄膜トランジスタ(TFT)
印刷プロセスを使って形成された半導体回路で、センサの信号増幅回路や表示素子の駆動回路などに応用できます。半導体回路は、数百~数万個の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)で構成されています。TFTは複数の電極層や半導体層、絶縁層から成る積層構造であるため、印刷プロセスを使って高性能な半導体回路を形成するには、高精度な塗り分け(パターニング)など非常に高度な技術が必要とされます。
注3) 銀ナノ粒子インク
数ナノから数十ナノメートルの銀粒子を溶媒に分散させたインクで、印刷して配線を形成できる電極材料です。
注4) プリンテッドデバイス
印刷プロセスを使って作製された電子回路や電子デバイスを指します。
注5) ロール・ツー・ロール
ロール状に巻いたフィルムを巻き送り出しながら任意の加工(インクジェット印刷など)を施し、再びロール状に巻き取るプロセスです。低コスト化を実現できるフレキシブルデバイスの究極的な製造技術として期待されています。
注6) 表面エネルギー
固体表面(基板)に対する液体(インク)の濡れ広がりやすさの指標となる物性値です。銀ナノ粒子インクを濡れ広がりにくいインク特性に改良することで、より微細な配線を形成することが可能となります。
注7) ホール移動度
移動度は電荷(電子またはホール)が物質中を移動する際の移動のしやすさを表す物性値で、単位電場(V/cm)当たりの電荷の移動速度(cm/s)で表現し、半導体材料の電気的特性の優劣を示します。電子移動度とホール移動度の2種類ありますが、有機半導体を使った有機トランジスタでは、一般にホール移動度の方が高い移動度を示します。
注8) フレキシブルデバイス
柔らかく、曲げることができる電子回路や電子デバイスを指します。従来の硬い電子デバイスでは作れなかった円筒状に丸められる電子回路や、衣服にセンサ機能をもった電子デバイスなどが次世代技術として注目されています。

<お問い合わせ先>

<株式会社フューチャーインクに関すること>

熊木 大介
株式会社フューチャーインク
Tel:0238-26-3290 Fax:0238-26-3788
E-mail:

<START事業に関すること>

松村 郷史(マツムラ サトシ)、東出 学信(ヒガシデ タカノブ)
科学技術振興機構 産学連携展開部 START事業グループ
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
Tel:03-5214-7054 Fax:03-3238-5373
E-mail:

<報道担当>

山形大学 総務部総務課(広報室)
担当:菅井 久美子
〒990-8560 山形県山形市小白川町1-4-12
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科学技術振興機構 広報課
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