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平成28年4月20日

早稲田大学
科学技術振興機構
東京電力パワーグリッド株式会社

国内初、スマートグリッド実現に向けた
配電網の電力損失最小化の実証試験開始について

早稲田大学(本部:東京都新宿区 総長:鎌田 薫 研究代表:理工学術院教授 林 泰弘)と、東京電力パワーグリッド株式会社(本社:東京都千代田区 社長:武部 俊郎 以下「東京電力パワーグリッド」)は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(本部:埼玉県川口市 理事長:濵口 道成 以下「JST」)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)注1)において、2016年4月から2020年3月までの予定で、共同実証試験を開始することといたしました。

近年、再生可能エネルギーの導入促進、省エネルギーや二酸化炭素排出量低減など環境負荷低減に対する社会的な要請が高まるなか、様々な地点の電力実測データと情報通信技術を活用した高効率な配電網注2)であるスマートグリッド注3)の実現に向けた技術開発の必要性が高まっております。

こうしたなか、早稲田大学と東京電力パワーグリッドは、一部地域の配電網を用いて、配電損失電力注4)が最小となる配電網構成のための最適な運用方法の検討などを行うために本実証試験を行うこととしました。

具体的には、早稲田大学は、配電損失電力を最小化する手法を活用して、電柱にセンサ内蔵開閉器注5)などを設置した実際の配電網を用いて、電気の流れ方を最適にすることを検証します。

東京電力パワーグリッドは、センサ内蔵開閉器で計測するデータを用いて、損失電力の削減効果を実測により評価・検証することで、電力の供給信頼度注6)などへの影響を考慮し、配電損失電力が最小となる配電網構成の運用を検討いたします。

なお、配電網の電力損失最小化を目的とした最適な設備構成に関して、実際の配電網を活用した実証試験を実施するのは国内初の取り組みとなります。

早稲田大学とJSTと東京電力パワーグリッドは、今回の実証試験を通じて、電気エネルギーを最大限有効活用できる配電網構成を実現し、低炭素社会の鍵となるスマートグリッドの実現に取り組んでまいります。

<用語解説>

注1) 戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)
我が国の社会的・経済的ニーズの実現に向けた戦略目標に対して設定され、インパクトの大きなイノベーションシーズを創出するためのJSTのチーム型研究のプログラム。
注2) 配電網
発電所から送られてきた電気を最後の変電所から工場や家庭へお届けするもの。
注3) スマートグリッド
双方向の情報通信制御技術を駆使して、発電電力・送電電力・消費電力を監視・制御しながら、エネルギー効率・電力品質・安定供給面から全体最適で運用・管理される次世代電力ネットワーク。
注4) 配電損失電力
配電線に電気が流れることにより熱(ジュール熱)が発生し、その熱が電力損失となる。長い配電線を電気が流れる場合や、流れる電気が大きい場合に電力損失は大きくなる。
注5) センサ内蔵開閉器
配電系統で電気の流れを入り切りするスイッチを開閉器というが、さらに開閉器設置地点の電圧・電流の計測ができるもの。
注6) 供給信頼度
電気は絶えず供給されることが望ましいが,実際には雷や設備の故障などによって電気の供給が停止することがある。電気の信頼度は電気の供給の停止,すなわち停電(供給支障)を対象として,電力の供給信頼度と呼ばれる。

<添付資料>

別紙:「配電網の電力損失最小化の共同実証試験」概要


(英文)“Initiating the first experimental tests in Japan to minimize power loss in distribution networks for smart grid in the future