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平成27年10月29日

科学技術振興機構(JST)
高知大学
株式会社テクノネットワーク四国

核酸の大量合成技術を開発するベンチャー企業を設立

(JST 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)の研究開発成果を事業展開)

ポイント

JST(理事長 濵口 道成)は産学連携事業の一環として、大学・公的研究機関などの研究成果をもとにした起業のための研究開発を推進しています。

平成25年度より高知大学に委託していた研究開発課題「医薬品利用を指向したリボヌクレオチド関連化合物の大量合成技術の開発」〔プロジェクトリーダー:片岡 正典 高知大学 教育研究部 総合科学系 特任講師、起業家:喜多山 篤、起業支援機関:株式会社テクノネットワーク四国(四国TLO)〕において、独自の核酸モノマー注1)およびこれを用いた核酸オリゴマー注2)の液相合成技術の開発に成功しました。この成果をもとに研究開発に参加したメンバー、および、四国TLOが出資して、「株式会社四国核酸化学」を設立しました。

核酸医薬品は、細胞内のあらゆる遺伝子を制御することができ、今まで治療困難とされてきたさまざまな疾患への臨床応用が期待されているバイオ医薬品であり、世界で急速に研究開発が進展しています。核酸医薬品の合成原料となる核酸オリゴマーは、現在、主に固相法による化学合成にて製造されていますが、安価に大量合成ができない点が課題でした。片岡特任講師らは専用の核酸モノマーを用いた液相合成法により、安価、高収率、高純度で核酸オリゴマーを大量合成する技術を開発し、この問題を解決しました。また、この技術を実用化・事業化するため、ベンチャー企業を設立しました。

今後は、設立したベンチャー企業を通じて、製薬企業などと共同で核酸医薬品の合成原料の大量合成技術の開発を実施し、国内外の核酸医薬品の開発に貢献することを目指します。現在は1バッチあたり数10gほどの合成量ですが、グラムスケール以上の核酸オリゴマーの受託合成を主事業として、平成29年度をめどに売り上げ目標5億円を目指します。

なお、本研究開発は、平成27年4月1日に日本医療研究開発機構(AMED)が設立されたことにともない、AMEDに承継され、引き続き研究開発の支援が実施されます。

今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。

研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)本格研究開発ステージ 起業挑戦タイプ

研究開発課題 「医薬品利用を指向したリボヌクレオチド関連化合物の大量合成技術の開発」
プロジェクトリーダー 片岡 正典(高知大学 教育研究部 総合科学系 特任講師)
起業家 喜多山 篤
起業支援機関 株式会社テクノネットワーク四国
研究開発期間 平成25~28年度

A-STEPは大学・公的研究機関などで生まれた研究成果をもとに、実用化を目指すための幅広い研究開発フェーズを対象とした技術移転支援制度です。今回の「株式会社四国核酸化学」設立により、JSTの「プレベンチャー事業」、「大学発ベンチャー創出推進」、「若手研究者ベンチャー創出推進事業」および「A-STEP」によって設立したベンチャー企業数は130社となりました。

詳細情報:http://www.jst.go.jp/a-step/

<開発の背景>

近年、生体高分子を医薬品として利用するバイオ医薬品の創薬研究が活発に行われており、医薬品販売トップ10のうち抗体医薬品が7品目を占めています。バイオ医薬品のうち「核酸医薬品」は、細胞内のあらゆる遺伝子を制御することができ、今まで治療困難とされてきたさまざまな疾患への臨床応用が期待されている医薬品です。抗体医薬品に続いて急成長すると見込まれ、2020年には数千億円規模の市場を形成すると予想されています。

しかしながら、核酸医薬品の合成原料となるDNA/RNAの短鎖オリゴマーは化学合成にて製造されていますが、グラムスケールでもかなり高額になってしまい、これが核酸医薬品開発の最大の課題となっています。

<研究開発の内容>

片岡特任講師らは、独自に開発した核酸モノマーを用いて核酸の液相合成法を開発しました(図1)。このモノマーは、少ないステップ数で高収率で合成でき、必要な原料は安価で大量調達が可能です(図2)。従来法(固相法)ではオリゴマー合成時に大量の廃溶媒が排出されていましたが、本法ではこれを大幅に低減できます。また、オリゴマーの長さを伸ばす鎖長伸長反応の各ステップは高収率に進みます。通常の低分子化合物の合成と同じ操作要領で核酸オリゴマーを合成できるため、反応容器の大型化に比例して製造量を増強できる見込みです。

<今後の事業展開>

国内の製薬企業などは、医薬品シーズの開発段階から実績豊富な外国企業より核酸素材を購入することが多く、コストは徐々に下がってきているものの依然として割高で、核酸医薬品開発の足枷になっています。ベンチャー企業設立後は、外国企業より購入しているこのnon-GMP注3)の国内需要を満たすことに注力します。また、5年以内をめどにGMP準拠注3)製造法を確立し、核酸医薬品の原薬製造を実施する予定です。開発した液相合成法は、30年以上使われてきた従来法(固相法)と比較して合成実績が少ないので、製薬企業などと共同でさまざまな配列の核酸オリゴマーを合成していきます。

また、今後開発が進むと考えられる長鎖核酸オリゴマーや、コンジュゲート技術注4)についても、本法の柔軟性を生かして、製薬企業などと共同で技術開発を継続していきます。開発段階のnon-GMP品を安価かつ高品質に供給することにより、起業後早期の収益化を目指します。さらに、中期的目標としてGMP準拠生産を確立し、国内外の製薬企業に対する原薬供給を行うことを目指します。本ベンチャー企業では、上記の液相合成技術の他、A-STEPで開発された高付加価値核酸関連化合物(ユニバーサル塩基注5)無細胞たんぱく質合成基質注6)など)の合成技術も開発中であり、将来的に新規核酸医薬品シーズや特殊たんぱく質(ペプチド)の合成に貢献することが期待されます。

本ベンチャー企業は、核酸関連化合物に特化した合成技術をさらに進化させながら、世界の核酸医薬品の低コスト製造と新規核酸医薬品の効率的な研究開発に貢献します。

<参考図>

図1 液相合成法による鎖長伸長反応の一例

図2 核酸合成の従来法と新合成法との比較

<用語解説>

注1) 核酸モノマー
核酸(DNA/RNA)は、糖に4種類の塩基が結合した化合物を最小単位とする繰り返し構造をとっており、この最小単位をモノマーと呼ぶ。従来技術では、固相合成に特化したアミダイトモノマーが使用されるが、本ベンチャー企業では、A-STEPで開発した独自のモノマーを使用する。このモノマーは短工程かつ安価に合成できるため、コスト上の優位になる。
注2) 核酸オリゴマー
核酸モノマーがおよそ10~40個ほど繋がったものを核酸オリゴマーと呼ぶ。核酸オリゴマーの塩基配列により医薬品としての特性が決定する。また、製薬企業では、天然型の核酸オリゴマーだけではなく、人工的に改変を加えた人工核酸オリゴマーを用いる場合も多い。
注3) non-GMP,GMP準拠
GMPとは、Good Manufacturing Practiceの略で、適正製造規範と訳されている。原料の入庫から製造、出荷にいたるすべての過程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるように定められた規則とシステムである。non-GMPとは、このGMPに準拠していないことを意味する。
注4) コンジュゲート技術
機能性分子などを結合させる技術である。低分子医薬品に抗体などを結合させることにより標的特異性を付与する技術などが開発されている。開発した液相合成法はコンジュゲートの柔軟性が高く、大量生産性を維持しつつ、糖、ペプチド、脂質などを核酸オリゴマーに結合させることが可能である。
注5) ユニバーサル塩基
核酸塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類で構成されており、AはT、CはGとのみ結合して塩基対を形成する。ユニバーサル塩基は、この規則性によらず、A、G、C、Tの4種類の核酸塩基すべてと結合(塩基対を形成)するように設計された人工の核酸塩基である。
注6) 無細胞たんぱく質合成基質
無細胞たんぱく質合成法は、大腸菌などの細胞を使用せず、代わりに細胞内に存在する酵素などを利用してたんぱく質(ペプチド)を合成する方法のことである。天然型のアミノ酸だけではなく、人工のアミノ酸をたんぱく質の配列に組み込む手法も種々開発されている。A-STEPでは、糖たんぱく質を任意の配列に組み込むことができるような特殊な基質を開発している。糖鎖を任意の配列に導入できるたんぱく質合成技術は製薬企業などにニーズが高い。

<企業概要>

社名株式会社四国核酸化学
設立日平成27年10月2日
所在地香川県高松市寿町2-2-10 寿町プライムビル4階
資本金1,100万円
役員 代表取締役安田 崇
取締役片岡 正典
取締役藤本 賢二
事業内容核酸化合物を中心とする高付加価値化合物の製造販売

<事業形態>

<提供する製品>

<お問い合わせ先>

<開発内容に関すること>

株式会社四国核酸化学
代表取締役 安田 崇
〒760-0023 香川県高松市寿町2-2-10 寿町プライムビル4階
Tel:087-804-7624 Fax:087-804-7601
E-mail:

<JST事業に関すること>

科学技術振興機構 産学連携展開部
〒102-0076 東京都千代田区五番町7 K’s五番町
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<報道担当>

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高知大学 総務部 総務課 広報戦略室
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株式会社テクノネットワーク四国
技術移転部 安田 崇(株式会社四国核酸化学 代表取締役)
Tel:087-811-5039
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