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平成25年10月23日

株式会社国際電気通信基礎技術研究所

国立大学法人 大阪大学

独立行政法人 科学技術振興機構

抱き枕型通信メディア「ハグビー®」によるストレス軽減

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と国立大学法人 大阪大学、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)は、抱き枕型の通信メディア「ハグビー®」を抱きながら通話するとストレスを軽減する効果があることを体内のホルモンの変化から明らかにしました。

この結果や研究において使われたホルモンによる製品評価の方法は、既存の通信メディアの評価や人にやさしい通信メディアの開発に役立つと考えられます。そのため、NTTデータ 経営研究所が事務局を務める応用脳科学コンソーシアム内に「コンフォータブルブレイン研究会」を同社と共同で新たに発足し()、複数の企業とホルモン検査の可能性について調査を開始しました。この取り組みはホルモン検査による製品評価の恒常的なサービス体制の構築を目指しています。

本研究成果は10月23日(英国時間)にNature Publishing Groupから発行されるオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されます。

研究は以下の一環として行われたものです。

・ JST 戦略的創造推進事業(CREST) 研究領域「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」(研究総括:東倉 洋一 国立情報学研究所 名誉教授)における研究課題「人の存在を伝達する携帯型遠隔操作アンドロイドの研究開発」(研究代表者:石黒 浩 ATR 社会メディア総合研究所 特別研究室 室長(ATRフェロー))

・ JST 戦略的創造研究推進事業(さきがけ) 研究領域「情報環境と人」(研究総括:石田 亨 京都大学 大学院情報学研究科 教授)における研究課題「インターネット環境が脳と認知機能へ与える影響の解明」(研究者:金井 良太 サセックス大学 准教授)

・ 文部科学省グローバルCOEプログラム「認知脳理解に基づく未来工学創成」(拠点リーダー:石黒 浩 大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授(特別教授))

<研究概要>

ハグ(抱擁)のような直接的な接触はストレスの軽減や関係の維持など我々の健康にとって良い効果があることが明らかになってきています。我々はこれまで、人のように感じられる「テレノイド®R1」(2010年8月報道発表)において、ロボットを抱きかかえながら対話する場合にも人の存在を強く感じ、人との接触に見られるような効果が起こる可能性を確認しました。さらに、直接的な接触に注目し、人の存在を感じる最低限のデザインとして、人の形をしたクッションのような存在感メディア「ハグビー®」(2012年4月報道発表)を開発しました。

しかしながら、これまで触覚情報に注目したメディアとの接触体験が我々にどのような効果を及ぼすのかはアンケートなどの質問紙でのみ調査されており、生理的な効果については確認されていませんでした。例えば、人が人とハグや他の接触行動をしたときのストレス軽減の効果が、ストレスを受けると分泌量が増加する「コルチゾール」というホルモンや心拍数の減少によって確認されています。同様の効果を人工的に作られたメディアが与えられるかどうか確認することは、新しい通信メディアの開発や既存の通信メディアの評価に極めて重要だと考えられます。

本研究では、通話中にハグビーを抱きしめるだけでストレス軽減効果があることを明らかにしました。実験では被験者を、ハグビーを抱きながら話をするグループと携帯電話で話をするグループに分け、会話前後での血液中、唾液中のコルチゾール濃度の変化を調べました。その結果、ハグビーを抱きながら会話をしたグループでは血液中、唾液中ともに有意にコルチゾールが減少し、人との接触で見られるようなストレス軽減効果がハグビーのような人工的なメディアとの接触にもあることが分かりました。

この結果は現在我々が使っている通信メディアのデザインに新たな示唆を与えます。例えば、遠隔カウンセリングなどストレス軽減を目的とした通話においてはハグビーのような抱くことのできる通信メディアが有効であることを示しています。また生理反応から製品の効果を評価することは我々の生活で使用される多くの製品の評価に適用でき、我々の健康をより効果的に支援する製品開発につながると考えられます。そのため、NTTデータ 経営研究所が事務局を務める応用脳科学コンソーシアム内に「コンフォータブルブレイン研究会」を同社と共同で発足し、いくつかの企業とともにホルモンによる製品評価の可能性について調査を始めました。最終的に生理的な製品評価を行う恒常的な検査サービスを構築することも視野に入れ、研究を進めています。

今後はデンマークで行われている高齢者や認知症患者に対するテレノイドやハグビーの効果検証にもホルモン検査を導入し、異なる文化圏でも同様の効果があることを確認する予定です。

<参考図>

図A図B

図(A) 実験設定

血液・唾液採取後、被験者は携帯電話かハグビーのどちらかで見知らぬ異性と会話する。その後血液と唾液が再度採取される。

図(B) 会話前後での血中コルチゾールの変化

<論文情報>

“Huggable communication medium decreases cortisol levels”
 Sumioka, H., Nakae, A., Kanai, R., and Ishiguro, H.
 doi: 10.1038/srep03034

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

国際電気通信基礎技術研究所 社会メディア総合研究所 住岡、吉岡
Tel:0774-95-1560
E-mail:

<報道全般、ATR全般に関すること>

国際電気通信基礎技術研究所 経営統括部 藤村
Tel:0774-95-2524
E-mail:

<ハグビーの販売に関するお問い合わせ>

ヴイストン株式会社
Tel:06-4808-8701
E-mail:

<JSTの事業に関すること>

科学技術振興機構 戦略研究推進部 松尾
Tel:03-3512-3525
E-mail:

NTTデータ経営研究所、報道発表資料
http://www.keieiken.co.jp/aboutus/newsrelease/130913/index.html)
研究会・コンソーシアムに関するお問い合わせは以下にお願い申し上げます。
株式会社NTTデータ 経営研究所 マネジメントイノベーションセンター 山川、福田
Tel:03-5213-4160
E-mail:

※※テレノイド、ハグビーは(株)国際電気通信基礎技術研究所の登録商標です。