JST(理事長 中村 道治)と国立遺伝学研究所(所長 桂 勲)は、国内で初めてヒトの塩基配列や画像データなどの研究データを共有するためのデータベース(NBDCヒトデータベース)の運用を10月1日より開始します。
近年、ゲノム解析技術が飛躍的に発達し、ヒトについても個人レベルのデータが急速に増加しつつあります。欧米諸国では、米国生物工学情報センター(NCBI)や欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)を中心に、ヒトに関するデータの一元化が進められており、次世代シークエンサー(NGS)から出力されたデータや遺伝子型・表現型のデータを共有するシステムが構築・運営されています。日本では、総合科学技術会議 ライフサイエンスPTにおいてライフサイエンス分野のデータベース統合の必要性が求められ、また、ゲノム解析技術の進展により、各研究者が産出している膨大な量のヒトに関する研究データを有効利用するため、研究データを共有することの重要性が高まっています。
JST バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)では、上記PTでまとめられた「総合科学技術会議 統合データベースタスクフォース報告書(平成21年5月)」に基づき、ライフサイエンス分野の研究成果が広く研究者コミュニティにおいて共有され、研究者が効果的・効率的に研究を推進できるように、日本のライフサイエンス分野のデータベースの統合を実現するための研究開発とサービス提供を実施しています。
国立遺伝学研究所 日本DNAデータバンク(DDBJ)センターでは、欧米との3極間での協力体制のもと、NGSより出力された塩基配列データを一元化して管理するためのデータベースDRA(DDBJ Sequence Read Archive)を始めとする、ライフサイエンス研究の基盤となる数多くのデータベースを提供しています。
個人の全塩基配列など、ヒトの大量の塩基配列データは、個人を特定し得る可能性があることから、倫理問題への対応を踏まえて慎重に審議された上で、データの提供・利用が行われる必要がある点がほかの生物種のデータと異なっており、その審査体制が強く望まれていました。
NBDCとDDBJは、NBDCが2013年4月に公開した「NBDCヒトデータ共有ガイドライン注1)」に基づき、ヒトに関する研究データの提供・利用にあたって、倫理面で適切に対応がなされているかなどの点について審査を行ない、研究で得られた個人レベルの塩基配列データなどを保管し、ほかの研究者などが利用できる仕組みの構築について協力することとし、ヒトに関するさまざまな研究データを共有するNBDCヒトデータベースのサービスを開始します。NBDCヒトデータベースでは、個人レベルの塩基配列データ以外に、ヒトの画像データや疫学データなど種々の研究データを受け入れ、セキュリティ上安全な環境で保管し利用者に提供して行く予定です。
このデータベースが整備されることにより、今後は日本人のゲノム情報などが蓄積され、医学や創薬の研究を日本人に適した形で推進できるようになることが期待されます。
『NBDCヒトデータベース』URL: http://humandbs.biosciencedbc.jp/