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平成25年6月13日

公益社団法人 日本分析化学会
独立行政法人 科学技術振興機構

放射能分析用大豆認証標準物質(粉末状、低濃度)を作製
—食品の放射能分析の信頼性向上のために—

平成24年4月1日より、食品の放射能濃度について新たな基準値が定められました。食品について微弱な放射能を正確に定量するためには、測定対象に対応した放射能分析用の標準物質が必要です。JST 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、武蔵大学 藥袋 佳孝 教授を中心とした開発チームは、放射能分析の妥当性確認や測定器の精度管理に使用できる大豆の放射能分析のための標準物質を開発しました。放射能分析用大豆認証標準物質(粉末状、低濃度)は、公益社団法人 日本分析化学会が2013年6月17日から頒布を開始します。現在、より高濃度の大豆認証標準物質の開発も進めており、2013年8〜9月に頒布を開始する予定です。

東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により、放射性物質が環境中に飛散しました。環境試料や食品中の放射性物質の量を正確かつ迅速に測定する技術の開発は、放射線計測を担う企業や大学などに求められている火急の使命です。特に食品分析については、微弱な放射能の定量が社会的なニーズとなっています。

放射能測定値の信頼性を確保するには、測定対象と類似の組成を持ち、計量トレーサビリティも確保された標準物質が必要です。標準物質と測定対象の分析値を比較して初めて、信頼性の高い放射能測定を行うことができます。このため日本分析化学会では、いち早く放射能分析用土壌認証標準物質を開発し、2012年6月1日に供給を開始しました。

2012年5月からはJST 先端計測分析技術・機器開発プログラムの一環として、武蔵大学 藥袋 佳孝 教授を中心とした開発チームが、食品の標準物質開発を行っています。その成果である玄米(粒状)、牛肉(フレーク状)認証標準物質も、既に頒布を開始しています。

開発チームは今回、大豆の放射能分析用の認証標準物質を開発しました。

放射能汚染のある大豆試料を105℃、24時間乾燥、フードミルで粉砕、ふるい分け、混合の後、100mLポリプロピレン製容器(U8)、100mL褐色ガラス瓶、1L褐色ガラス瓶に充填しました。瓶詰め後、20kGyの60Coγ線照射による滅菌を行いました。この中から選んだ12試料の134Cs、137Cs及び40Kを放射能測定して均質性試験を行い、作製された候補標準物質は十分均質であることを確認しました。こうして評価された均質性の値は、測定のばらつきを示す不確かさの中に含めました。

放射能濃度の認証値は、国内の信頼ある13分析機関の共同分析により求めました。なお分析を行った13機関は、下記の通りです(順不同)。

東京都市大学 原子力研究所、東京都市大学 工学部、明治大学 理工学部、東京大学 アイソトープ総合センター、(公社)日本アイソトープ協会、(公財)日本分析センター、(一財)日本食品分析センター、(独)放射線医学総合研究所、(独)日本原子力研究開発機構、(独)農業環境技術研究所、エヌエス環境株式会社、株式会社環境総合テクノス、日本ハム株式会社 中央研究所。

全機関からの分析の報告値を統計処理し、認証値と不確かさを以下のように算出しました。なお下記の不確かさは、約95%の確率で真の値が存在する範囲(包含係数=2の拡張不確かさ)を示しています。

134Cs放射能濃度:(37.1 ± 2.6) Bq/kg
137Cs放射能濃度:(68.2 ± 4.6) Bq/kg
40K放射能濃度:(619 ± 60) Bq/kg

本開発成果は、容量の異なる3種類の放射能分析用大豆認証標準物質(JSAC 0761、JSAC 0762、JSAC 0763)として、2013年6月17日から頒布を開始します。

<税込価格>U8容器(JSAC 0761)21,000円、100mL容器(JSAC 0762)21,000円、1L容器(JSAC 0763)105,000円

JST 先端計測分析技術・機器開発プログラム「放射線計測領域」革新技術タイプ(要素技術型)
開発課題名「放射能環境標準物質の開発」チームリーダー:武蔵大学 藥袋 佳孝 教授

<参考図>

写真1

写真1 開発した放射能分析用大豆認証標準物質(粉末状、低濃度)(JSAC 0761)

ポリプロピレン製容器(U8)内に、高さが50mmになるように充填された標準物質と、梱包の箱。容器上部にみられる白色部分は大豆が移動しないための充填剤です(内容量75.0g)。

写真2

写真2 開発した放射能分析用大豆認証標準物質(粉末状、低濃度)(JSAC 0762及びJSAC 0763)

ガラス製容器に充填され標準物質と梱包の箱。
左(JSAC 0762);100mL容器、内容量 約80g、
右(JSAC 0763);1L容器、内容量 約800g。

お問い合わせ先

<標準物質に関する問い合わせ先>

公益社団法人 日本分析化学会
担当 阿部 健一
〒141-0031 東京都品川区西五反田1−26−2 五反田サンハイツ304
Tel:03-3490-3351 Fax:03-3490-3572

<JST 先端計測分析技術・機器開発プログラムに関する問い合わせ先>

独立行政法人 科学技術振興機構 産学基礎基盤推進部 先端計測室
〒102-0076 東京都千代田区五番町7番地 K’s五番町
Tel:03-3512-3529