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平成23年10月27日

科学技術振興機構(JST)
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バイオテック株式会社
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理化学研究所
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株式会社ダナフォーム
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一塩基多型(SNP)を短時間で高感度に検出する装置の実用化に成功
〜遺伝子の個人差に基づく医療の実現に前進 〜

JST 研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)の一環として、バイオテック株式会社の長倉 誠 代表取締役社長と理化学研究所の石川 智久 上級研究員、株式会社ダナフォームの三谷 康正 事業開発部長らの開発チームは、理化学研究所が開発した30分以内で一塩基多型(SNP)注1)を検出する「SmartAmp(スマートアンプ)法」注2)を技術基盤として国産のSNP検出装置の実用化に成功しました。

患者個人の体質に合った治療を行う「個別化医療」を実現するには、安価で正確、迅速なSNP検出方法とその装置開発は必要不可欠です。しかし、これまでのSNP検出技術は、核酸の精製、増幅、検出と多段階ステップに分かれており、1検体を解析するのに半日から数日かかるような手法でした。

SmartAmp法は、SNPを正確に識別しながらDNA増幅を効率的に行うことができます。1滴の血液から検出でき、さらに時間は30分程度に大幅に短縮できることから、測定時間を削減することが可能です。また、SmartAmp法では、60℃、30分間の等温条件下で反応を進行させるため、従来の温度変化をさせながら増幅するPCR法注3)に用いる装置と比較して、小型化、簡便性の良い装置を開発することに成功しました。さらに、専用ソフトウェアも新たに開発し搭載することによって、測定やデータ処理の簡便性を担保しています。

今回、総合病院などの臨床検査部で利用可能なSNP検出装置を開発することができました。今後さらに国内外の医療現場で試験を実施して、臨床での利便性と確実性を検証して、個別化医療の実現に貢献します。

本開発成果は、以下の事業・開発課題によって得られました。

事業名 研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)
プロトタイプ実証・実用化タイプ
開発課題名 「世界最速SNP診断装置の開発」
チームリーダー 長倉 誠(バイオテック株式会社 代表取締役社長)
開発期間 平成21〜22年度
担当開発総括 尾形 仁士(三菱電機エンジニアリング株式会社 相談役)

JSTはこのプログラムのプロトタイプ実証・実用化タイプで、プロトタイプ機の性能の実証並びに高度化・最適化、あるいは汎用化するための応用開発を行い、実用化可能な段階まで仕上げることを目的としています。

<開発の背景と目的>

「個別化医療」を実現する上で、安価で正確、迅速な一塩基多型(SNP)の検出方法とその装置開発は必要不可欠です。しかしながら、従来のPCR法やDNAチップ法などは海外企業によって開発されたものです。これらの技術を使用するたびに海外企業に特許使用料を払わなければならず、日本の医療制度にとって不利です。そのため「個別化医療」を広く普及させるためには、日本が独自に安価・正確・迅速なSNP検出装置を開発し、それを実用化することが焦眉の急です。

具体的には、1検体あたり数千円以下で、検出時間30分程度、さらに100%の正確さが求められます。そこで、理化学研究所が開発した30分程度でSNPを検出するSmartAmp法を技術基盤として迅速なSNP検出装置を開発し、薬物トランスポーターや薬物代謝酵素などのSNP検出を実現することを目指しています。

市場ターゲットとして、病院の臨床検査室をはじめ臨床検査会社への導入、さらに国際市場への進出を考えています。そのため、医療機器としての届出が不可欠となり、それを考慮しての開発を目的に、2009年度より本開発プロジェクトに取り組みました。その結果、SmartAmp法を用いた国産SNP検出装置の医療機器としての実用化に成功しました(図1)。

<本装置の主な特長>

個別化医療に向けたSNP検出方法には、PCR法、DNAチップ法などの技術がありますが、いずれも血液サンプル採取から1時間以内に検出することは困難です。またこれらの方法においては、薬物トランスポーターであるABCB1(P−gp)遺伝子などの3種類のアレル注4)を解析する際に、誤った検出結果を引き起こす可能性が報告されています。SmartAmp法はそれらの問題を解決したSNP検出法です。

<今後の展望>

外来患者が病院に来て、内科医と面談するまでにかかる時間は30分から1時間程度です。臨床現場では、その間に従来の採血・臨床検査と並列して体外診断用医薬品の承認を得た試薬を用いて、薬物動態関連遺伝子(薬物代謝酵素およびトランスポーター)のSNPを迅速かつ正確に検出し、その結果に基づいて医師が診断を行い、医薬品の種類と最適投与量を選択できるようなトータル情報システムの開発が期待されています。

しかし、SNP検出に基づく個別化医療を実現するには、試薬、装置、データベースの3つの要素がそろわなくてはなりません。特に疾患治療に使う薬の副作用に関与する遺伝子(薬物代謝酵素、トランスポーター、薬物ターゲット)においては、あらかじめ、その遺伝子の多型を検出することにより副作用の低減を図る必要性が提唱されています。本開発プロジェクトにおいて、SmartAmp法に基づく技術を確立し、総合病院などの臨床検査部で利用可能なSNP検出装置を開発することができました。今後さらに国内外の医療現場で試験を実施して、臨床での利便性と確実性を検証して、個別化医療の実現に貢献するつもりです(図3)。

<参考図>

図1

図1 本開発装置

図2

図2 従来のSNP検出技術との比較

図3

図3 SmartAmp法の医療現場での活用(将来予想)

<用語説明>

注1) 一塩基多型(SNP)
 Single Nucleotide Polymorphismの略称で「SNP(スニップ)」と呼ばれる。集団のゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性が見られ、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる時、これを一塩基多型と呼ぶ。一方、対立遺伝子頻度が1%より低い場合には、突然変異と呼ばれる。
注2) SmartAmp(スマートアンプ)法
SmartAmp法は等温核酸増幅技術の一種であり、DNA鎖置換活性を有するAacDNAポリメラーゼと非対称なプライマーデザインによって、目的のDNA配列部分を迅速かつ高感度に増幅することができることが特徴である。SmartAmp法を応用することによって、1滴の血液からヒトの1塩基多型(SNP)を検出することや、がん組織特異的な遺伝子変異を検出すること、さらにはさまざまな感染症を引き起こすバクテリアやウィルスを検出することも原理的に可能である。
注3) PCR法
ポリメラーゼ連鎖反応とも呼ぶ。PCR法では、増幅対象(テンプレート)のDNA、DNA合成酵素(DNAポリメラーゼ)および大量のプライマーと呼ばれるオリゴヌクレオチドを予め混合しておく。この状態でDNAポリメラーゼが働くと、結合したプライマーの3’端を起点として1本鎖部分と相補的なDNAが合成される。DNAが合成された後、再び高温にしてDNA変性から繰り返す。PCR法は、DNA鎖長の違いによる変性とアニーリングの違いを利用して、温度の上下を繰り返すだけでDNA合成を繰り返し、DNAを増幅する技術である。
注4) アレル
アレル(allele)とは、対立遺伝子ともいい、相同な遺伝子座を占める遺伝子のこと。有性生殖をする動物の多くは、両親から配偶子を通してそれぞれ 1 セットのゲノムを受け取り、計2セットのゲノムを持つ2倍体(ヒト, 2n=46など)である。ヒトをはじめ2倍体の生物は、それぞれの遺伝子座について父母それぞれから由来した2つの対立遺伝子を持つ。両親から同じ種類の遺伝子を引き継いでいる(両方の対立遺伝子に変異がないか、対立遺伝子が両方とも同じように変異している)場合、ホモ接合と呼ばれ、異なる種類の遺伝子を引き継いでいる(片方の対立遺伝子が変異している)場合、ヘテロ接合と呼ばれる。

<お問い合わせ先>

<開発内容に関すること>

石川 智久(イシカワ トシヒサ)
理化学研究所・横浜研究所 オミックス基盤研究領域 上級研究員
〒230-0045 神奈川県横浜市鶴見区末広町1−7−22
Tel:045-503-9222(代表) Fax:045-503-9216
E-mail:

<販売装置に関すること>

深見 剛明(フカミ タケアキ)
バイオテック株式会社 開発部
〒113-0034 東京都文京区湯島2−29−4
Tel:03-3816-6931(代表) Fax:03-3818-4554
E-mail:

<試薬販売に関すること>

三谷 康正(ミタニ ヤスマサ)
株式会社ダナフォーム 第2事業部 事業開発部長
〒230-0046 神奈川県横浜市鶴見区小野町75−1
Tel:045-510-0607(代表) Fax:045-510-0608
E-mail:

<JSTの事業に関すること>

安藤 利夫(アンドウ トシオ)
科学技術振興機構 イノベーション推進本部 産学基礎基盤推進部(先端計測分析技術・機器開発担当)
〒102-0075 東京都千代田区三番町5 三番町ビル
Tel:03-3512-3529 Fax:03-3222-2067
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