東北大学 大学院工学研究科 技術社会システム専攻の須川 成利 教授は、最高2000万コマ/秒の超高速動画撮影が可能なCMOSイメージセンサ注1)を株式会社 島津製作所(代表取締役社長:中本 晃)と共同で開発しました。この成果により、1マイクロ秒(百万分の1秒)以下の短時間で起こる物質の変形、破壊や放電などの超高速現象の詳細な機構が解明され、新たな材料や加工技術の開発が促進されるものと期待されます。
平成23年4月5日
東北大学 工学研究科・工学部
Tel:022-795-5898(情報広報室)
科学技術振興機構(JST)
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東北大学 大学院工学研究科 技術社会システム専攻の須川 成利 教授は、最高2000万コマ/秒の超高速動画撮影が可能なCMOSイメージセンサ注1)を株式会社 島津製作所(代表取締役社長:中本 晃)と共同で開発しました。この成果により、1マイクロ秒(百万分の1秒)以下の短時間で起こる物質の変形、破壊や放電などの超高速現象の詳細な機構が解明され、新たな材料や加工技術の開発が促進されるものと期待されます。
本成果は、以下の事業・課題によって得られました。
研究成果最適展開支援事業(A-STEP) 本格研究開発ステージ シーズ育成タイプ
課題名 | : | 「超高速光イメージング技術の実用性検証」 |
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研究者 | : | 須川 成利(東北大学 大学院工学研究科 教授) |
企業 | : | 株式会社 島津製作所 |
支援期間 | : | 平成21年12月~平成23年3月 |
1000~1万コマ/秒の動画撮影が可能な高速度ビデオカメラは放送やスポーツ科学、自動車衝突実験などで利用されていますが、材料科学や生命科学、マイクロマシン技術の分野において、各種材料や細胞の挙動、衝撃波や放電に伴う物理現象を解明するために、100万コマ/秒を超える超高速の撮影装置が必要とされています(図1)。従来このような装置として、記録コマ数分のイメージセンサを内蔵したカメラがありましたが、記録コマ数が極端に少ないため研究者が現象を確実に捉えることが難しいうえ、装置が大型で使いにくいという問題がありました。一方、記録コマ数が100コマを超えるイメージセンサを搭載した小型のカメラも市販されていますが、撮影速度が最高100万コマ/秒程度に留まっていました。
イメージセンサによる動画撮影は、入射光によって生じた電荷(電子または正孔)を集めて、その量を電気信号に変換する画素と、多数の画素から電気信号を送り出す伝送線と、送られてきた電気信号を1コマずつ記録するメモリ、の3つの要素によって成り立っています。撮影速度は、画素で電荷が集められる速さと、伝送線の本数と速さによって決まります。通常のイメージセンサではメモリが外部にあるために、伝送線の本数がセンサの出力端子の数で制約されてしまい、撮影速度を上げることができません。本研究のイメージセンサはメモリを内蔵し、撮影中にそのメモリに記録した電気信号を、撮影後に外部に読み出す方法を取ることにより、出力端子の数の制約を受けない超高速の動画撮影を可能にしました(図2)。これまでにも同様の概念のCCDイメージセンサ注2)で100万コマ/秒程度の撮影速度を実現した例がありましたが、CCDイメージセンサは消費電力が大きいため、発熱の問題からそれ以上の高速化が困難でした。本研究では消費電力が少ないというCMOSイメージセンサの特長を活かすとともに、伝送線における電気信号の劣化を最小限に抑える設計を行った結果、大幅な速度向上を実現しました。また同時に、画素内部の電界分布(電荷を動かす力の分布)を最適化することにより、画素内の電荷が集められる時間を大幅に短縮しました。以上の結果、従来のCCDイメージセンサに比べ20倍の2000万コマ/秒の撮影速度を実現することに成功しました(図3、図4)。
今後、本研究の成果をもとに超高速撮影装置の実用開発を進めます。この装置が普及し、さまざまな分野の超高速現象が解明されることにより、例えば軽量で耐衝撃性の高い自動車・航空機素材や、材料の無駄が少ないレーザ加工、放電加工などの高精度な加工技術、さらにはエネルギー消費が少ないインクジェット印刷による電子回路製作技術の開発が促進されるものと期待されます。また、情報通信などの分野で用いられるマイクロマシン部品の信頼性向上や、生命科学の基礎研究で利用されるレーザ細胞手術技術の改良にも役立つことが期待されます。
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