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平成23年2月21日

新日鐵化学 株式会社
Tel:03-5207-7600(総務部)

国立大学法人 九州工業大学
Tel:093-884-3007(総務課)

独立行政法人 科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報ポータル部)

「色素増感太陽電池」の耐久性向上に成功

−独自のセル構造で電解液漏洩のない製品を目指す−

1. 国立大学法人 九州工業大学 大学院生命体工学研究科の早瀬 修二 教授と新日鐵化学 株式会社は、次世代の太陽光発電として共同研究を進めている「色素増感太陽電池」について、独自の円筒型セル構造の開発により耐久性向上に成功した。円筒型受光面に対し、封止面積が少ないセル構造の開発により、約70日間(1700時間)にわたり発電効率が低下していないことを確認。引き続き耐久性を評価中である。電解液漏洩の少ない構造にすることで、高耐久性かつ低価格の色素増感太陽電池の実現が期待される。

2. 今回の耐久性向上は、従来の平板型色素増感太陽電池が2枚の平面状ガラス板の間に接着剤で壁を設け電解液を封入しているのに対し、この度開発した色素増感太陽電池のセルは、円筒型のガラス管で太陽電池を作製できるため、円筒形ガラス管の端面のみを封止すればよく、電解液を封止する部分の面積が平板型に比べて少なくなり、封止性が向上したためである。

3. また、受光面を円筒型にすることで、光入射角の影響をほとんど受けなくなった。円筒管受光面で入射光が屈折して光が円筒形内部に集まり、発電量の低下は認められなかった。

4. この成果は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST) 産学イノベーション加速事業【戦略的イノベーション創出推進(S−イノベ)】「有機材料を基礎とした新規エレクトロニクス技術の開発」(プログラムオフィサー:谷口 彬雄 国立大学法人 信州大学 名誉教授・特任教授)における研究課題「フレキシブル浮遊電極をコア技術とする新太陽電池分野の創成」(プロジェクトマネージャー:国立大学法人 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 教授 早瀬 修二、開発リーダー:新日鐵化学 株式会社 主幹研究員 山口 能弘)の一環として得られた。また、従来の直径6mm、長さ30mmの試作セルに対し、今回は直径30mm、長さ200mmの円筒型色素増感太陽電池の試作に成功した。本大型セルは、2011年3月2日から4日まで東京ビッグサイトで開催される「PV EXPO 2011(主催:リードエグジビションジャパン 株式会社)」の新日鐵化学 株式会社ブースで展示される。

5. なお、本課題は、「平成23年度科学・技術重要施策アクション・プラン」施策パッケージ(総合科学技術会議)に登録されている課題である。

<研究の背景>

色素増感太陽電池は1991年にスイス・ローザンヌ工科大学のグレッツェル教授により開発され、従来のシリコン系太陽電池とは全く異なった組成を持つ新しい太陽電池である。酸化物半導体と有機色素からなり、低コストプロセスである塗布で太陽電池が作製できるため、良好な発電効率が得られる安価な有機系太陽電池として注目されている。現時点でのエネルギー変換効率の最高値(1cm以上のセルでの認証値)は約10.4%(標準太陽光基準注1))であり、次世代の太陽電池として欧米日を中心に開発が行われている。

色素増感太陽電池は電解液に酸化還元対として、ヨウ素およびこれを溶解する極性有機溶剤を使用するため、接着剤等を利用した封止方法では電解液漏れが生じ、耐久性が得にくい問題点があった。これを解決する方法として、ヨウ素を含む電解液に溶けにくい高分子材料による封止剤や、ガラスによる融着等の封止方法が研究されている。電解液を漏らさない封止方法は、色素増感太陽電池の耐久性を向上させる技術として必須の技術であった。

<成果の内容>

本研究グループでは、平板型色素増感太陽電池は封止に必要な面積が大きいことに着目し、これを小さくするセル構造が必要であると考え、セル構造を円筒型にし、端部の封止構造を発電面積に対し相対的に小さくすることで、電解液の封止性が向上し、耐久性が高くなることを見出した。円筒型セルでは、円筒管端部への入射角度が小さくなり発電量が低下することが危惧されたが、円筒管端部で光がガラス管内部に屈折する効果があることから、発電量の低下は認められなかった。

このたび開発した「円筒型色素増感太陽電池」は以下の特長を有している。

  1. 1. 受光面に対して電解液を封止する部位の面積が、平板型セルに比べて小さい(図1−1「九州工業大学試作セル」、図1−2「新日鐵化学試作セル」、図2「セル封止面積比率」)。
  2. 2. 光の入射角の影響を受けにくく、散乱光による発電性能が高い色素増感太陽電池を円筒型にすることで、管端部の光が内部に屈折し、発電量が低下しない(図3−1「光入射角度の依存性」、図3−2「円筒管の径方向の発電量変化(LBIC法注2)」)。
  3. 3. 透明導電膜を用いないセル構造にすることで、インジウム等のレアメタルを使用せずにセルが作製できるので、製造コストの削減が期待される(図4「円筒型色素増感太陽電池の構造」)。
  4. 4. 簡単な封止構造で、耐久性を大きく伸ばすことができる。室温で約70日間(約1700時間)、効率を維持できている(図5「円筒型セルの耐久性」)。
  5. 5. 国立大学法人 九州工業大学では直径6mm、長さ30mmのセルを試作し、その動作確認を行ったが、今回、新日鐵化学 株式会社は直径30mm、長さ200mmの円筒型色素増感太陽電池を開発し、製品化に近づけた。

<今後の展開>

円筒型金属酸化物半導体電極の作製方法の改良および電極加工方法の最適化を図ることで、変換効率向上を目指す。また、セルの耐久性評価をJIS規格に合わせて評価する。

<谷口 彬雄 プログラムオフィサー(PO)コメント>

円筒管構造の封止面積が少ない特徴を活かして、耐久性と受光面の大面積化を両立させる技術への道を切り開いた。これにより、電解液漏洩のない耐久性に優れる色素増感太陽電池の研究を加速させていきたい。

<参考図>

図1−1

図1−1 九州工業大学試作セル(直径6mm×長さ30mm)

図1−2

図1−2 新日鐵化学試作セル(直径30mm×長さ200mm)

図2

図2 セル封止面積比率

図3−1

図3−1 光入射角度の依存性
(国立大学法人 九州工業大学測定データ)

図3−2

図3−2 円筒管の径方向の発電量変化(LBIC法)
(国立大学法人 九州工業大学測定データ)

図4

図4 円筒型色素増感太陽電池の構造

図5

図5 円筒型セルの耐久性(比率)
円筒サイズ 直径10mm×100mm

<用語解説>

注1) 標準太陽光基準
標準太陽光にはAM1.5(エアマス1.5)が使用され、角度42度で地表に到達する太陽光スペクトルで太陽光強度が1000W/mである。
注2) LBIC法(Light Beam Induced Current)
試料にレーザーを照射し、試料からの出力電流を測定する方法である。

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>

山口 能弘(ヤマグチ ヨシヒロ)
新日鐵化学 株式会社 開発推進部
〒804-8503 福岡県北九州市戸畑区大字中原先の浜46−80
Tel:093-884-1621 Fax:093-884-1923

早瀬 修二(ハヤセ シュウジ)
国立大学法人 九州工業大学 大学院生命体工学研究科 教授
〒808-0196 福岡県北九州市若松区ひびきの2−4
Tel:093-695-6044 Fax:093-695-6005

<JSTの事業に関すること>

独立行政法人 科学技術振興機構 イノベーション推進本部 産学基礎基盤推進部
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
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<報道担当>

新日鐵化学 株式会社 総務部(広報)
〒101-0021 東京都千代田区外神田4−14−1 秋葉原UDX 13階
Tel:03-5207-7600 Fax:03-5207-7647
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国立大学法人 九州工業大学 総務課 広報企画係
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