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平成21年7月23日

東京大学 大学院情報理工学系研究科
Tel:03-5841-8602(石川・小室研究室)

科学技術振興機構(JST)
Tel:03-5214-8404(広報ポータル部)

「ロボットが投げたボールをロボットが打つ」システムの開発

〜 野球のようなダイナミックな動作を実現する高速ロボットの開発 〜

 東京大学 大学院情報理工学系研究科 石川・小室研究室は、スローイングロボットが投げたボールをバッティングロボットが打つシステムを開発した。このシステムは、人間のように多指ハンドを用いてボールをコントロールし、目標位置に投球するスローイングロボットと、高速ビジョンを用いてボールを確実に打つバッティングロボットを組み合わせたものであり、今回、これら2つのロボットを用いてボールを投げて打ち返すという連続的な動作を実現した。
 スローイングロボットでは、1秒間に180度の開閉動作を10回実現する指を備えた高速多指ハンドを開発し、腕と指を巧みに操った器用なリリース動作によってストライクゾーンへの投球を実現した。バッティングロボットは、1秒間に1,000枚の画像を処理する高速ビジョンにより、ボールの軌道を的確に捕らえ、ストライクのボールを確実に打つことが可能である。
 これらのロボットは、従来のロボットの動作速度の限界を打ち破る運動性能と人間を超える高速の認識機能を実現したものである。従来のロボットが静止状態に近いものを対象としていたのに対して、動的に変化する対象物に対してもロボットの応用可能性を広げたものであり、人間を超える能力を有するロボットの研究を加速するとともに、生産工程の高速化や飛んでいる対象を扱うロボット等、今後のロボット技術の対象範囲を飛躍的に拡大する可能性を示唆するものである。

 本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 発展研究(SORST)の研究課題「感覚運動統合理論に基づく「手と脳」の工学的実現」(研究代表者 石川 正俊)の一環として行われた。

<研究の狙い:人間を超えるロボットの実現>

 従来の知能ロボットは、人間と比較してその動作が緩慢であった。一方、産業用ロボットは、一定の繰り返し作業に対しては高速の動作が実現されていたが、特定の繰り返し作業に特化した動作しか実現されていなかった。また、両者ともその対象は静止状態あるいは静止状態に近いものが想定されており、動きを伴い変化する対象に対しての作業は実現できていなかった。その意味で、人間の能力には遠く及ばなかった。
 今回、人間の能力を超えるロボットとして、動的に変化する対象を扱うロボットの実現をめざし、その第一歩として、スローイングロボットとバッティングロボットを開発し、その連続動作を実現した。

<スローイングロボット>

 スローイング動作は、アームの動作とハンドの動作を協調させ、一定以上の速度を引き出す必要があり、ハンドの高速動作と制御性能が求められている。詳しく述べると、アーム全体でエネルギーを伝播しながらハンドの動きを加速させ、同時に把持している物体を精密にコントロールする必要がある。つまり、アームとハンドの動作を適切に連動させることで最大限のパフォーマンスが発揮できると考えられ、それに必要な性能が必要となる。
 そこで、腕には軽量高速ロボットアームを使い、その先端に0.1秒で180度開閉が可能な高速多指ハンドを取り付け、ボールをストライクゾーンへ投球するというタスクを実現した。つまり、腕を高速にスウィングしながら手首をスナップし、多指ハンドを用いてリリース方向とタイミングを調整することにより人間と類似のスローイング方法を実現した。

<バッティングロボット>

 1秒間に1,000枚の画像を処理できる高速ビジョンを用いて1/1,000秒ごとにボールの3次元位置を検出し、それに合わせてバットをコントロールしている。1/1,000秒の間にボールはほとんど進まないため、このロボットから見ればボールが止まって見えることに相当し、確実にバットで捕らえることが可能である。ストライクゾーン入りさえすればほぼ100%打ち返すことが可能である。

<2台のロボットの連続動作>

 これら2台のロボットを組み合わせ、「投げて打つ」という動作を実現した。スローイングロボットから投げられたボール(速度は約40km/h)を約3.5m先のバッティングロボットが打つシステムとなっている。ただし、今回は、バッティングのスウィング時間に0.2秒必要なため、スローイングの投球速度を制限している。
 現状の知能ロボット研究の多くが「人間と同じ動作の実現」を目指しているのに対して、本研究は機械システムの限界に挑む研究であり、ロボットの速度と操りの器用さを追求したものである。この研究成果は、高速な運動系(腕と手)と高速な認識系(目と脳)で構成された新たなロボットシステムの世界を示しており、静的な対象から動的な対象へとロボットの可能性を広げるものである。世界をリードする日本のロボット技術に新たな展開の可能性を与えるものである。

<参考図・写真>

図1

図1 実験概要


写真1

写真1 バッティングロボット


写真2

写真2 スローイングロボット


写真3

写真3 高速多指ハンド


写真4

写真4 リリースの瞬間


写真5

写真5 連続動作

※スイングとバッティングの動画は、下記のアドレスからダウンロードできます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20090723/video/video.mpg(mpeg形式、約5MB)

<お問い合わせ先>

<研究に関すること>
石川 正俊(イシカワ マサトシ)
東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 教授
Tel:03-5841-8602 Fax:03-5841-8604
E-mail:

妹尾 拓(セノオ タク)
東京大学 大学院情報理工学系研究科 創造情報学専攻 特任研究員
Tel:03-5841-8704 Fax:03-5841-6952
E-mail:

<JSTの事業に関すること>
内田 信裕(ウチダ ノブヒロ)
科学技術振興機構 イノベーション推進本部 研究推進部
〒102-0075 東京都千代田区三番町5 三番町ビル
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