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平成21年7月1日

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失語症でなくとも左前頭葉の一部損傷で文法障害が生じることを実証

―脳腫瘍患者のMRI診断で特定―

 JST目的基礎研究事業の一環として、東京大学 大学院総合文化研究科の酒井 邦嘉 准教授(言語脳科学)らは、左前頭葉の一部「文法中枢」注1)に脳腫瘍がある患者で純粋な文法障害が生じることを実証しました。左前頭葉に脳腫瘍を持つ患者に文法判断テストを実施し、その腫瘍部位を磁気共鳴映像法(MRI)注2)で調べたところ、左前頭葉の一部である「文法中枢」に腫瘍がある患者では、左前頭葉の他の部位に腫瘍がある患者より誤答率が高くなりました。臨床的には失語症注3)と診断されていないにもかかわらず、今回のように顕著な文法障害(「失文法」注4))が特定されたのは初めてのことです。本成果は、150年来の失語症研究に関する論争に決着をつけ得るものです。
 これまでの研究により、母語としての日本語はもちろん、外国語としての英語の文法処理においても、左前頭葉の文法中枢の活動が明らかとなっています。一方、同部位の損傷で文法に選択的な障害が生じるかについては明らかになっていませんでした。
 今回、成人の脳腫瘍患者を対象として、絵と文を用いた文法判断のテストに加えて、腫瘍部位をMRIで正確に同定し、その関係を詳細に分析しました。その結果、左脳の「下前頭回」または「運動前野外側部」の損傷が文法判断に伴う成績低下を選択的に引き起こすという因果関係が分かりました。さらにこの脳の部位は、以前本研究グループが語学の習得期間や適性に関連した脳部位を調べる実験で明らかにしてきた文法中枢と完全に一致しました。
 今回の成果は、文法中枢の機能を直接的に証明する脳科学データであり、言語リハビリの改善や、人間に固有な脳機能の解明へとつながるものと期待されます。
 本研究は、昭和大学 医学部内科学講座 神経内科学部門の金野 竜太 助教、東京女子医科大学 大学院医学研究科 脳神経外科分野の村垣 善浩 講師らと共同で行われ、本研究成果は平成21年7月1日(グリニッジ時間)発行の国際科学雑誌「Brain & Language(ブレイン&ランゲージ)」のオンライン版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)
研究領域 「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」
(研究総括:津本 忠治 (独)理化学研究所脳科学総合研究センター グループデイレクター)
研究課題名 言語の脳機能に基づく獲得メカニズムの解明
研究代表者 酒井 邦嘉(東京大学 大学院総合文化研究科 准教授)
研究期間 平成15年10月~平成21年3月
 JSTはこの領域で、脳機能発達と学習メカニズムに関する独創的、先進的研究が進展し、その結果、教育や生涯学習における諸課題解決に対する示唆を提供することによって、成果を社会に還元することを目指しています。上記研究課題では、言語の脳機能に焦点を当て、言語獲得のメカニズムの解明を行います。これにより、精神疾患の発症機構の解明と、脳機能に基づく適切な教育方法の提案を行い、脳科学の成果を広く教育へ応用することを目指します。

<研究の背景と経緯>

 脳科学の進歩に伴い、人間の脳の活動を画像として捉える機能イメージングの手法を用いて、心のさまざまな機能の座が、脳のどこにあるかを調べられるようになってきました。しかし、「言語などの高次機能の脳における機能局在の研究」注5)は緒に就いたばかりです。
 これまで本研究グループは、機能的磁気共鳴映像法(fMRI)注6)の実験で言語課題と一般的な認知能力の課題を直接対比することにより、文法を使う言語理解で特異的に活動する「文法中枢」(図1)を初めて発見し(Neuron, 2002、JST 平成14年8月1日プレスリリース)、さらに経頭蓋的磁気刺激法(TMS)注7)の実験から、左下前頭回に対する磁気刺激が文法判断を選択的に促進することを明らかにしました(Neuron, 2002、JST 平成14年9月12日プレスリリース)。最近の脳の局所体積をMRIで測定する実験では、下前頭回の局所体積において、右脳の対応部位より左脳の対応部位の方が大きいという“非対称性”の程度が、英語(外国語)の文法課題の成績に比例することを報告しています(Human Brain Mapping, 2009、JST 平成21年4月28日プレスリリース)。
 次の重要課題は、文法中枢の損傷で実際に文法に選択的な障害が生じるという、脳の構造と機能の間の最も直接的な因果関係を明らかにすることです。言語の中でも文法機能が本当に脳の一部に局在するかどうかは、脳科学で未知の問題とされてきました。本研究では、文法判断を適切に調べることで、従来の失語症検査や知能検査で正常であると診断された患者でも文法中枢の損傷に伴う文法障害(失文法)が現れると考え、左前頭葉に脳腫瘍を持つ患者を調査の対象としました。

<研究の内容>

 今回本研究グループは、参加者・計21名に母語である日本語の文法能力をテストしました。参加者(25~62歳、全員右利き)は脳腫瘍摘出手術を受ける前の患者で、本人や担当医師からは失語症や精神疾患の報告はなく、知能検査の結果(言語性IQ、非言語性IQ共に)も標準の範囲内にありました。全参加者からインフォームド・コンセントを得ています。その内訳は以下の通りです。

 (A)左下前頭回に脳腫瘍のある患者:5名
 (B)左運動前野外側部に脳腫瘍のある患者:6名
 (C)左下前頭回と左運動前野外側部以外の左前頭葉に脳腫瘍のある患者:10名

 用いた文法判断テストは、絵と日本語の文を同時に見ながら内容が合っているか否かを答える「絵と文のマッチング課題」です(図2)。人物を○□△の記号で表したのは、人物に関する意味的な情報を最低限に抑えるためです。例えば「泥棒 警官 捕まえる」という文では、常識的な意味によって助詞を補うことができるので、このような手がかりを除く必要がありました。また、能動文(AS)・受動文(PS)・かきまぜ文(SS)の3条件で同一の絵のセットを用いることにより、意味処理を完全に統制することができ、条件間に何らかの差が認められた場合は、その差は文型に対する文法処理が唯一の要因であると結論されます。
 次に、このテストの誤答の原因となる脳腫瘍の場所をMRIで調べました。各人の高精細MRI画像(解像度0.75×0.75×1mm3)上で腫瘍部位の正確な同定を行い、この画像から腫瘍部位をマスクして一定の標準脳座標上に変換することで各個人の脳の形状を標準化しています。誤答の原因となる腫瘍部位(責任病巣)の同定には、VLSM法(voxel-based lesion-symptom mapping)を用いました(Batesら、2003年)。この手法は、脳画像の1画素(voxel)を損傷部位に含む患者と含まない患者の2群に分け、この2群間で課題の成績を比較(t 検定)するものです。もし統計的に有意な差を示す画素が脳の一領域に限局すれば、その脳部位の損傷が成績低下の原因(十分条件)であると特定できます。本研究では、腫瘍部位のMRIデータに基づいて、絵と文のマッチング課題の誤答率(間違えた試行の割合)を3つの条件に分けて解析しました。
 その結果、課題の各条件での誤答の責任病巣は、これまで文法中枢として提案してきた左下前頭回と左運動前野外側部であることが分かりました(図3)。また、受動文(PS)条件と能動文(AS)条件の「誤答率の差」に対する責任病巣は左下前頭回の一部であり(図4A)、かきまぜ文(SS)条件とAS条件の「誤答率の差」に対する責任病巣は左運動前野外側部であること(図4B)が明らかになりました。上記のように、この「誤答率の差」は、文型に対する文法処理の能力差を反映しています。しかも、これらの場所は、同様の課題を用いた本研究チームによる脳機能イメージング研究(Human Brain Mapping, 2008)で脳活動が観察された場所(図4の青色)と完全に一致しました。
 さらに詳しい解析を行ったところ、上記の3つの患者群は、課題の3条件に対して異なるパターンの誤答率を示しました(図5)。左下前頭回に脳腫瘍のある患者(A群)は、正則文(SOV語順)のAS条件よりも非正則文であるPS条件とSS条件で有意に高い誤答率を示しました(図5B)。一方、左運動前野外側部に脳腫瘍のある患者(B群)は、主語が文頭に来るAS条件とPS条件よりも目的語が文頭に来るSS条件で有意に高い誤答率を示しました(図5D)。また、A群とB群のどちらも、3条件すべてに対して健常者より有意に高い誤答率を示しています。さらに、左下前頭回と左運動前野外側部以外の左前頭葉に脳腫瘍のある患者(C群)は、健常者と同等の誤答率を示しました(図5F,G)。つまり、2つの文法中枢である左下前頭回と左運動前野外側部はそれぞれ特定の文型に対する文法処理に寄与しており、これらの領域が正常に働く限り、それ以外の左前頭葉の損傷では文法障害が起こらないということです。
 また、各条件での誤答率は、年齢や知能指数、腫瘍の大きさとは無関係であることを確認しました。つまり、脳が全体として機能するという説(全体論)から今回の結果を説明することはでないと示唆されます。以上の結果は、言語の核心となる文法機能が大脳皮質の一部に局在するという説(機能局在論)を実証するもので、P・ブローカ(注5参照)の流れを汲む重要な業績です。
 最後に、臨床的に失語症と診断されていないにもかかわらず、今回のように顕著な文法障害が特定されたことの意義を説明します。従来の失語症の診断や知能検査では文法について深く調べないため、検査法自体に限界があったと考えられます。理論言語学のトレーニングを受けた言語聴覚士が今なお少ない現状では、言語理解を支える文法処理自体に注意があまり払われません。また、日常会話では文脈や常識が文法的な情報の欠落を補えるため、文法障害には自分でも気づきにくいのです。言語理解に困難を覚える場合でも、文法障害に対する自覚(病識)が本人になければ、発話の聞き取りにくさや活字の見えにくさ、そして注意力が原因であると見なされがちです。さらに、脳腫瘍によって文法中枢以外の領域に「機能再編」が生じることが考えられ、文法機能を補う働きのために言語障害が目立たなくなっている可能性もあります。このような脳の代償作用にもかかわらず、今回のように基本的な能動文の理解にまで顕著な障害が見られたのは驚くべきことです。用いた「絵と文のマッチング課題」が文法障害を検出するのに有効かつ適切であったと示唆されます。
 最後に、これまでの研究プロジェクトにおける今回の成果の位置づけについて述べます。「言語脳科学」という脳科学と言語学を融合させた新分野を開拓するにあたって、本研究グループは主としてfMRI、脳磁図、光トポグラフィといった最先端イメージング技術を用いてきました。これらの手法は特定の課題を行う時の機能に関係した脳の活動を調べる「相関法」注8)ですが、その逆である脳の活動から機能への因果関係については結論できません。そこで「干渉法」注9)の1つであるTMSの実験などを行い、左下前頭回と左運動前野外側部が「文法中枢」として機能することを提案してきました。しかし、懸案の失文法の問題にまで踏み込むことができていなかったため、脳の構造から機能への因果関係の証明が欠けていました。実際に左下前頭回と左運動前野外側部の損傷が失文法を引き起こすことを実証した今回の成果は、本研究グループがCRESTの課題としてこれまでに取り組んできた、脳科学と言語学を融合させた一連の研究の集大成と言うことができます。

<今後の展開>

本成果の社会的意義の要約を以下に示します。  
1)言語の基本メカニズムの解明
言語学では、文法処理が言語理解の核心であるということを明らかにしてきました。この意味で、脳の文法中枢の役割は「言語のエンジン」なのです。文法障害を各個人の病態に合わせて脳科学の手法で定量的に測定できるという本成果により、言語の基本メカニズムの解明がさらに進むものと期待されます。
 
2)言語リハビリの改善
従来の言語リハビリでは、文法能力の評価が等閑視されてきました。本研究は、文法能力を精査することの重要性と共に、文法機能に注目した「リハビリ・プログラム」の必要性を示しています。このように客観的な評価結果に基づいた各個人に適した医療、すなわち「テーラーメイド医療」という新しいコンセプトが今後重要になっていくと予期されます。これは、失語症を患う患者の「生活の質」(QOL)を向上するためにも大切な視点です。
 
3)人間に固有な脳機能の解明
脳科学における未解決の謎の1つに、人間だけに備わる言語機能の問題があります。人間以外の霊長類では、文の語順や受動文を識別するような文法能力は知られていません。今回の研究は、脳の特定の部位に局在する人間の文法能力こそが、無限に文を生み出すことのできる人間に固有な創造的能力の基盤でないかと示すものです。今後、この研究成果が突破口になって言語のメカニズムの解明がさらに進み、人間に対する正しい科学的理解につながることが期待されます。

<付記>

 本研究は、論文の共著者である昭和大学 医学部内科学講座 神経内科学部門の河村 満 教授、東京女子医科大学 大学院医学研究科 脳神経外科分野の堀 智勝 教授と丸山 隆志 助教の協力を得て行われました。

<参考図>

図1

図1 人間の左脳の言語中枢

 左脳(L)の外側面(左が前側)を示す。前頭葉に「文法中枢」と「文章理解の中枢」があり、側頭葉から頭頂葉にかけての領域に、「音韻(アクセントなど)」と「単語」の中枢があると考えられている〔Science 310, 815-819 (2005) に発表した図を改変〕。

図2

図2 意味処理を完全に統制した「絵と文のマッチング課題」

 参加者は、絵と文の内容が合っているか否かを判断して、提示後5.8秒以内に2つのボタンの一方を押す。短期的な記憶は不要である。人の頭部を○□△のいずれかで表した絵のセット(48枚)に対して、図のように能動文(AS)・受動文(PS)・かきまぜ文(SS)のいずれか(文字数は一定)を組み合わせた。これらの3条件のうち、能動文のみが主語(S)・目的語(O)・動詞(V)語順の正則文である。なお、左右を反転させた絵を半数含めて、絵の表す動作の方向を統制した上で、3条件をランダムな順序でテストした。

図3

図3 各条件の成績に対する責任病巣(VLSM法による)

 左前頭葉の中で下前頭回または運動前野外側部(赤色~オレンジ色)に脳腫瘍のある患者は、絵と文のマッチング課題の3条件において有意に高い誤答率を示した。

図4

図4 2条件間の「誤答率の差」に対する責任病巣(VLSM法による)

(A)左: 受動文(PS)条件と能動文(AS)条件の「誤答率の差」に対する責任病巣は、「左下前頭回」(L. F3op/F3t)の一部(赤色~オレンジ色)であった。
   右: その水辺断面(数字は前交連と後交連(左右脳の連絡線維)を結ぶ水平面からの高さ。単位mm)。
(B)左: かきまぜ文(SS)条件とAS条件の「誤答率の差」に対する責任病巣は、「左運動前野外側部」(L. LPMC)の一部(赤色~オレンジ色)であった。
   右: その水辺断面。
 どちらの場合も、責任病巣の位置(赤色)が、同じ課題を用いた脳機能イメージングで示された健常者の脳活動の場所(青色)と一致した。

図5

図5 腫瘍部位によって異なる3条件の誤答率

(A)左: 図4Aに示した左下前頭回に脳腫瘍のある患者5名の腫瘍部位の重なり(下に示した色で人数を表す)。
   右:その水辺断面。
(B)(A)の患者群による誤答率。AS条件よりもPS条件とSS条件で有意に高い誤答率を示した。
(C)左: 図4Bに示した左運動前野外側部に脳腫瘍のある患者6名の腫瘍部位の重なり。
   右:その水辺断面。
(D)(C)の患者群による誤答率。AS条件とPS条件よりもSS条件で有意に高い誤答率を示した。
(E)左:図4に示した左下前頭回と左運動前野外側部以外の左前頭葉に脳腫瘍のある患者10名の腫瘍部位の重なり。
   右:その水辺断面。
(F)(E)の患者群による誤答率。健常者と同等の誤答率(G図参照)を示した。
(G)健常者21名による誤答率。

<用語解説>

注1)文法中枢
 人間の言語の文法処理に特化すると考えられる左脳の前頭葉の一領域で、ブロードマン44・45野(ブローカ野:注5参照)にあたる「左下前頭回」(図1参照)と、6・8・9野にあたる「左運動前野外側部」の一部を含みます。

注2)磁気共鳴映像法(MRI)
 脳の組織構造を、水素原子の局所磁場に対する応答性から測定し画像化する手法。全く傷をつけずに外部から人間の脳組織を観察する方法として広く使用されています。

注3)失語症
 感覚や発声器官に異常がないのに、言葉の使用や理解に障害が現れる状態。発話の障害が起こると考えられている「ブローカ失語」の他にも、話し言葉の理解や発話時の言葉の選択に障害が現れる「ウェルニッケ失語」などの言語障害が知られています。

注4)失文法
 文法的な文を構成する能力の障害であり、失語症の一部です。失文法の人は、個々の単語は話せても、それを正しく並べて意味のある文にできない、といった障害を示します。

注5)言語などの高次機能の脳における機能局在の研究
 言語は、人間に固有の高次脳機能です。P・ブローカは、最初の失語症患者の報告(1861年)に基づいて、言語のような高次機能が大脳皮質の一部に局在するという説(機能局在論)を初めて提唱しました。ブローカの報告した発話障害の原因となる脳の損傷部位(責任病巣)は、「ブローカ野」と呼ばれています。
 その後、150年来の失語症研究の中でブローカの機能局在論はくり返し批判されてきました。特に、K・ラシュレーのように脳が全体として機能するという説(全体論)は、「脳はネットワークである」といった近年の主張にも根強く残っています。N・ゲジュビントは、失文法の原因がブローカ野を含む前頭葉の損傷であることを主張しましたが、この考えに異論を唱える研究者が多数現れて、論争が続けられてきました。前頭葉の一部の損傷では、認知障害や短期記憶などの障害が生じることも報告されているため、失文法は認知障害の一端に過ぎないと主張する研究者もいて、これまで実験的な検証は困難でした〔酒井 邦嘉 著『言語の脳科学』中公新書、平成14年〕。

注6)機能的磁気共鳴映像法(fMRI)
  脳内の神経活動に伴う血流変化を、局所磁場の変化から測定し画像化する手法です。全く傷をつけずに外部から人間の脳活動を観察する方法として広く使用されています。

注7)経頭蓋的磁気刺激法(TMS)
  磁気による刺激を脳の電気活動に干渉させて感覚や反応がどのように変わったかを調べる手法で、脳の活動から機能への因果関係を調べるための「干渉法」(注9参照)の1つです。

注8)相関法
  特定の課題を行う時の機能に関係した脳の活動を調べる、fMRIなどの手法の総称です。相関法によって「ある脳機能に変化が起これば特定の脳部位に活動変化が観察される」という相関関係が明らかになりますが、その逆に、「その脳部位に活動変化が起これば特定の脳機能に変化が観察される」という因果関係は必ずしも成り立つとは限りません。これが相関法の原理的な限界です。

注9)干渉法
  外から刺激を加えて脳の電気活動に干渉させ、感覚や行動がどのように変わったかを調べることで、刺激した場所の機能を推測する、TMSなどの手法の総称です。干渉法によって「ある脳部位に活動変化を起こせば特定の脳機能に変化が観察される」という因果関係が明らかになりますが、傷や痛みを引き起こさない(侵襲性のない)手法が限られているため、因果関係の実証のためには脳の病気や損傷によって生じる脳機能障害の研究も必要です。

<論文名>

"Agrammatic comprehension caused by a glioma in the left frontal cortex"
(左前頭皮質の腫瘍が引き起こす文法的な言語理解障害)
doi: 10.1016/j.bandl.2009.05.001

<お問い合わせ先>

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東京大学 大学院総合文化研究科 相関基礎科学系
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URL: http://mind.c.u-tokyo.ac.jp/index-j.html

<JSTの事業に関すること>
廣田 勝巳(ヒロタ カツミ)
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