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平成21年4月3日

科学技術振興機構(JST)
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理化学研究所
Tel:048-467-9272(広報室)

「クラゲ由来天然素材の研究開発・製造・販売」などを行うベンチャー企業設立

(JST大学発ベンチャー創出推進の研究開発成果を事業展開)

 JST(理事長 北澤 宏一)は産学連携事業の一環として、大学や公的研究機関などの研究成果をもとにした起業のための研究開発を推進しています。
 JSTは独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進にて理化学研究所(理事長 野依 良治)に委託して平成18年度より研究開発課題「クラゲ廃棄物から抽出した新規ムチン生産の企業化」(開発代表者:丑田 公規 理化学研究所 基幹研究所 丑田環境ソフトマテリアル研究ユニットリーダー=現 基幹研究所 和田超分子科学研究室 専任研究員=、起業家:木平 孝治)の研究開発を実施しました。その成果をもとにメンバーらが出資して平成21年4月3日、「株式会社 海月研究所」を設立しました。
 本研究開発チームでは、未使用資源であるクラゲ廃棄物からの新規ムチン注1)大量生産の第一段階として、製造プラントを完成させました。また新規ムチンの応用として、東海大学医学部外科学系整形外科の研究グループと協力し、ウサギを使った動物実験で変形性関節症の治療効果を高める新たな治療方法の開発にも成功しました。この治療方法は、新規ムチンとヒアルロン酸を併用するもので、ヒアルロン酸単独投与に比べ治療効果を飛躍的に改善・向上させるという特徴があり、新規ムチンの医用材料としての有用性を示すものです。
 「株式会社 海月研究所」は、起業後2〜3年間でクラゲから有用物であるムチンとコラーゲンをより効率よく抽出・製造する技術の開発およびそれらの商品開発を進め、起業後4年目に年間売上高3億円を目指します。
 今回の「株式会社 海月研究所」設立により、プレベンチャー事業および大学発ベンチャー創出推進によって設立されたベンチャー企業数は88社となりました。

今回の企業の設立は、以下の事業の研究開発成果によるものです。
 独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進
研究開発課題:「クラゲ廃棄物から抽出した新規ムチン生産の企業化」
開発代表者:丑田 公規(理化学研究所 ユニットリーダー=現 専任研究員=)
起業家:木平 孝治
研究開発期間:平成18〜20年
独創的シーズ展開事業 大学発ベンチャー創出推進では、大学・公的研究機関などの研究成果をもとにした起業および事業展開に必要な研究開発を推進することにより、イノベーションの原動力となるような強い成長力を有する大学発ベンチャーが創出され、これを通じて大学などの研究成果の社会・経済への還元を推進することを目的としています。

<開発の背景>

 日本海沿岸で大量発生し漁業に深刻な被害をもたらす巨大クラゲ「エチゼンクラゲ」や、海水を利用する原子力・火力発電プラント、臨海プラントなどの取水を止め、プラントの機能の低下をもたらす「ミズクラゲ」は、利用価値がなくクラゲ廃棄物として取り扱われてきました。しかし、理化学研究所基幹研究所の丑田環境ソフトマテリアル研究ユニットと信和化工株式会社が共同で、これらのクラゲ中に糖たんぱく質「ムチン」、すなわちクラゲ由来ムチン注2)という新物質を発見し、抽出しました。これを医薬品や化粧品、食品添加物などへの用途に応用できれば、クラゲ廃棄物の有効利用の事業化が可能と考えました。

<研究開発の内容>

―技術面―
 未同定であった糖鎖修飾基を確定し、ムチンの全体像を明らかにしました。全体像が分かったことで、今後の用途開発がさらに加速するものと期待されます。
 医用材料としての品質要求に耐えられる高品質ムチンの精製法を確立し、開発用サンプル提供を可能にしました。この開発用サンプルにより、理化学研究所は東海大学医学部とムチンの関節症治療への応用研究を行い、医療用途への道が開けました。
 ムチン大量製造の技術開発においては、丸和油脂株式会社の協力を得て最大年間処理量50t(クラゲ湿重量)のクラゲ由来ムチン・コラーゲン製造プラント(協力会社工場内設置)を完成させました。今後新会社でこのプラントの最適化を行い、事業化に活用する予定です。

―事業化面―
 調査・事業化活動により、各地漁協や電力会社の参加を得て、クラゲ原料の安定確保を、また、製品開発および販売先確保を目的として医用材料や医薬品、食品添加物、化粧品企業などのネットワーク構築を行いました。これらの活動の結果、協力会社2社の支援を得て株式会社 海月研究所を設立しました。

<今後の事業展開>

 クラゲ有用化事業を可能とするためには、さらなる製造コストの低減やムチン新規用途開発、コラーゲンなど他の有用物の同時製造が求められます。今後、株式会社 海月研究所では協力会社・支援者と協調して、製造ステップの最適化を進め、医療用途の他に、協力会社の製品分野(化粧品・食品)を中心に用途開発を加速します。最終目標として、クラゲ廃棄物の利活用事業を実現することによって、環境保全の推進やクラゲの被害に困っている漁業事業者などへの利益還元、雇用創出、経済刺激など社会的貢献につなげたいと考えています。

<用語解説>

注1)ムチン
 ムチン型たんぱく質。糖たんぱく質の一種で、複数の糖からなる糖鎖がα-O-グリコシド結合によって、たんぱく質骨格のスレオニン、あるいはセリンの水酸基と高頻度で結合しているもの。粘液の主成分であることが多く、一般に粘度・保水性が高い。

注2)クラゲ由来ムチン
 クラゲから抽出したムチン。構造から分類するとムチン型たんぱく質に含まれるが、糖鎖が短く、また糖鎖がシリアチンと呼ばれるアミノ酸の一種で修飾されていることを特徴する新規のムチン化合物であり、その新規性からこれまでとは異なる用途への利用が期待される。


<お問い合わせ先>

株式会社 海月研究所(クラゲケンキュウショ)
〒213-0012 神奈川県川崎市高津区坂戸3−2−1 KSP内
馬場 崇行(ババ タカユキ)
Tel:044-819-2001 Fax:044-819-2009
E-mail:

独立行政法人 科学技術振興機構 イノベーション推進本部 戦略的イノベーション推進部
〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3
下田 修(シモダ オサム)、廣田 昭治(ヒロタ ショウジ)
Tel:03-5214-0016 Fax:03-5214-0017

独立行政法人 理化学研究所 広報室 報道担当
〒351-0198 埼玉県和光市広沢2−1
長坂 滋(ナガサカ シゲル)
Tel:048-467-9272 Fax:048-462-4715
E-mail: