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<用語解説>

注1) 強磁性半導体
 強磁性(磁石の性質)を示す半導体。非磁性の半導体(ヒ化ガリウムやヒ化インジウムなど)に磁性をもつ原子(マンガンなど)を高濃度(数%)混入した半導体では、正孔(プラスの電荷をもつキャリア)を介してそれぞれの磁性原子の磁気モーメントが揃い、強磁性を示すようになります。

注2) 磁壁
 強磁性体内部で磁化の方向が揃った領域(磁区)の境界。図1のように、磁壁の中では、磁気の向きが一つの磁区の磁気の方向から隣接磁区の磁気の向きへと徐々に角度を変えます。今回実験に用いた(Ga,Mn)Asにおいては、その厚さは20 nm程度です。

注3)クリープ運動
 物質に一定の作用を加えたまま放置したときに、熱運動の支援により生じる物質のゆっくりとした変形のことです。物質中の境界面である磁壁の場合は、この変形に伴う前進運動として理解されます。

注4)スケーリング
 スケールは物差しのことで、温度や磁界などの大きさを適当な目盛りに変換した時に、物理量が一つの関数(スケーリング関数)で表記できることを意味します。一般にスケーリング関数は温度や磁界の「べき」によって表されます。「べき」の値をスケーリング指数と呼び、振る舞いを特徴づける数値となっています。

注5)普遍性
 物理系の振る舞いの本質的な部分が、系の詳細には依存せず、一定の数値で特徴づけられる共通の振る舞いを示すことを普遍性と呼んでいます。次元や対称性などの基本パラメーターが同じである場合、異なる物質の物理量は同じスケーリング指数を持つスケーリング関数で記述できます。逆に、異なるスケーリング指数を持つ場合は、異なる普遍性の分類に属するものと見なし、本質的に異なる物理的特徴を持っているものとの判断基準になります。