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参考2

発表事例(新しいゼオライト・メソポーラス物質の合成設計)

○発表時間・場所:15:45-16:05、A会場
○発表テーマ:「新しいゼオライト・メソポーラス物質の合成設計」
○発表者:辰巳 敬(東京工業大学資源化学研究所 教授)
○発表概要:

1. キラルなねじれシリカの合成

 アニオン性界面活性剤の形成するミセルを鋳型として用いたメソポーラスシリカ(AMS)の合成手法を開発しました。さらに、L-アラニンから誘導したアミノ酸系アニオン性界面活性剤を用いることで、らせん状にねじれたロッド状粒子(下図a SEM写真)で、その粒子内部に外形と同様の向きに配列するナノサイズの細孔(下図b,c,d)を有するAMSの合成にも世界で初めて成功しました。このシリカをキラルな分子を合成する触媒・反応場ならびにラセミ体から片方のキラルな分子を取り出す光学分割剤として応用する端緒が見いだされています。

図

2. 規則的に配列した球状シリカナノ粒子の合成と応用

図

 リジンやアルギニンのような塩基性アミノ酸を用いてテトラエトキシシラン(TEOS)からナノサイズで従来と比べて一桁ほど小さい(8-100 nm程度)均一なシリカ粒子を調製し、さらにそれらを極めて規則的に配列させることができました(右図)。この球状シリカナノ粒子は均一な粒子間メソ細孔を有する新しいタイプの多孔体です。メソ構造のカーボンや各種の酸化物を合成する鋳型、フィルム、触媒、透明フィラー、研磨剤、触媒、ドラッグデリバリーなど様々な分野への応用が可能です。すでにシリカ粒子の単層フィルムが合成出来ています。シリカ粒子自身を多孔体化することにも成功しています。


3. シリカ層状ユニットをナノパーツとした新規構造のゼオライトの合成

図

 ファインケミカルス合成用のゼオライト触媒を開発する上では大きな分子の反応を可能とする大孔径ゼオライトの重要性が増しています。大孔径ゼオライトは嵩高い有機分子を鋳型とした水熱合成が近年活発に行われていますが、実用化を考えた場合、嵩高い有機分子の使用はコスト的に不利です。我々は様々な層状のゼオライト前駆体をナノパーツとし、さらにシリカ源などの無機元素化合物を加えることによって、右図に示すように拡大した細孔を持つ新たなゼオライト構造を組み立てる手法を開発しました。