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お知らせ

平成19年8月10日

東京都千代田区四番町5−3
科学技術振興機構(JST)
電話(03)5214-8404(広報・ポータル部広報課)
URL http://www.jst.go.jp

地雷の材質や形状に依存せず「爆薬そのものを探知する地雷探知センサー」を開発

(9月7日 名古屋大学にて公開デモを開催)

 JST(理事長 沖村憲樹)は、人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業において、対人地雷を探知するため、爆薬そのものを探知するセンサーの開発に成功しました。開発したのは爆薬を探査する3種類の地雷探知器で、3機(試作機)の公開デモを平成19年9月7日、名古屋大学東山キャンパスで行います。
 現在、地雷探知作業には主に金属探知器が用いられており、作業者は金属探知器の反応音をよりどころに探知作業を行っています。しかし、金属反応だけに頼る探知器には誤警報が多く、本物の地雷による反応は約1000回に1回の割合ともいわれています。
 JSTはすでに、世界各地で行われている対人地雷の探知・除去活動をより安全で効率よく実施するため、地中を映像化し、地雷を探知する地中レーダーに金属探知器を補完的に組み合わせた複合センサーを開発しています。これにより誤探知発生数は大幅に削減されますが、それでも地雷と外形の似た空き缶や木の根、石、空洞などは地雷との区別が困難な場合があります。
 このためJSTは「爆薬そのものを探知する」新センサーの開発に5年かけて取り組んできました。物体の金属反応や形状情報に加え、爆薬の有無を探知することで、より確実に地雷を探知し同時に誤探知を減少させることができます。
 センサーは、地雷探知に携わるNGOなどからも注目されています。他の探知技術(金属探知器や地中レーダー)をサポートする革新的技術であり、広く爆発物探知への応用が可能で、テロ対策、警備用途への適用も考えられます。
 本プロジェクトの試作機の探知性能が地雷探知・除去の現地実証試験で検証されれば、爆薬探知センサーが「実際に使える技術」として大いに役立つことになります。

<公開デモンストレーション開催概要>

開催日時平成19年9月7日(金)13:00〜17:15
場所名古屋大学東山キャンパス(名古屋市千種区不老町)
IB情報館前集合(地図参照:PDF 221KB)
集合時間13:00(第1回:マスコミ向けへの説明内容となっています)
15:00(第2回:一般見学者向けへの説明内容となっています)
主催独立行政法人 科学技術振興機構
参加費無料
申込方法氏名(ふりがな)、所属、連絡先、住所、TELをご記入の上、Eメール()にてお申し込み下さい。当日会場にてお申し込み頂くこともできます。

 *詳細スケジュールなどは、追ってホームページにてお知らせします。
   (URL: http://www.jst.go.jp/kisoken/jirai/index.html

<今回デモンストレーションを行う地雷探知器(試作機)>

1.軽量・小型で、バギー車両に搭載可能なNQRセンサー
 (研究代表者:糸崎 秀夫 大阪大学大学院基礎工学研究科教授)

 爆薬そのものを探知する技術の1つとしてNQR(Nuclear Quadruple Resonance:核四極共鳴)があります。化学物質(分子)中の窒素原子核は周囲分子からの電気的影響を受け、ある特定の周波数の電磁波に共鳴して同じ共鳴周波数の電磁波を発信します。この共鳴波を測定することにより特定の化学物質(爆薬)の検出を可能とするのがNQRセンサーです(写真1参照)。強い磁場の下で計測するNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)のような強力な磁石が不要であり、大型な設備を必要としません。したがって、軽量(センサー部5kg程度)で小型の装置が作製可能です。また地雷に含まれる爆薬の化学物質自体を識別して検出するため、誤探知が極めて少ない探知技術です。
 このセンサーは、短期的研究開発課題の広瀬研究チーム(研究代表者:広瀬茂男 東京工業大学大学院理工学研究科教授)が開発した遠隔操作可能な小型バギー車両に搭載することができます(写真2参照)。
 この車両は、耐環境性を考慮して製作されており、搬送性が高くて小回りがききます。これにより、遠隔操作で安全な距離からの探知作業が可能となります。

写真1:最新NQRセンサー部分 写真2:バギー車両とのインテグレーション
写真1:最新NQRセンサー部分 写真2:バギー車両とのインテグレーション
2.ガンマ線の入射方向から、地雷の位置を特定できる中性子利用型センサー
 (研究代表者:井口 哲夫 名古屋大学大学院工学研究科教授)

 中性子を対人地雷に照射し、爆薬の主要構成元素である窒素を検出することによって探知するシステムです。中性子を照射すると、中性子と窒素原子の核反応でガンマ線(γ線)が放出され、それをキャッチすることで地雷の有無および埋設位置を遠隔・非破壊・選択的に検知することができます(写真3参照)。この探知システムを実現するために大強度のコンパクト加速器中性子源とともに、「蛍光パターン認識型ガンマカメラ」という世界初の技術による新しいシステムを開発しました。シンチレーター(放射線の可視光への変換器)で光情報として捉えたガンマ線の検出情報に高度な信号処理を施すもので、迅速かつ正確な地雷探知に適しています。また、この検出システムで爆薬から放出されたガンマ線を捉えると、その入射方向を推定できることから、爆薬(地雷)の埋設位置推定と、粗いながらも3Dイメージングが可能となりました(写真4参照)。
 さらに、短期的研究開発課題の福田および池上研究チーム(研究代表者:福田敏男 名古屋大学大学院工学研究科教授および池上友博 (株)タダノ開発部ユニットマネージャー)が開発した大型地雷探知車両に、このセンサーを搭載することができます(写真5参照)。最大到達作業半径20mの長尺アームで、山岳斜面や水路側面などの特殊な地雷原へのアクセスを実現します。
 探知作業は、センサーから十分な距離を確保し遠隔操作により行われるので、中性子およびγ線による被ばくから作業者の安全が確保されています。

写真3:中性子利用型センサー部分(今回の公開対象) 写真4:中性子利用型センサーから得られる画像
写真3:中性子利用型センサー部分
(今回の公開対象)
写真4:中性子利用型センサーから得られる画像
写真5:クレーン車両とのインテグレーション
写真5:クレーン車両とのインテグレーション
3.地雷方向からのガンマ線を識別し、高S/N比を実現した中性子利用型センサー
 (研究代表者:吉川 潔 京都大学エネルギー理工学研究所 名誉教授)

 小型核融合装置により発生した中性子線を地雷原に照射し、爆薬の主要構成元素である窒素の中性子捕獲反応で発生する高エネルギーのガンマ線を捉えることにより、爆薬の有無を検知するセンサーです(写真6参照)。
 中性子源は、重水素の放電による核融合反応(D-D反応:D+D→3He+中性子)で中性子を発生させる方式で、電源を切ればすぐに中性子やガンマ線発生が止まるため、安全性・制御性に優れています。また、高い精度で地雷を探査するために、2種類の異なる検出器を組み合わせた複合ガンマ線検出器を新たに開発しました。各々の検出器からの信号を処理することよって、地雷方向からのみ飛来する高エネルギーガンマ線を選択的に検出することができます(写真7,8参照)。

写真6:中性子利用型センサーの外観と重水素放電(上) 写真7:複合ガンマ線検出器の外観
写真6:中性子利用型センサーの外観と
重水素放電(上)
写真7:複合ガンマ線検出器の外観
写真8:ガンマ線計測スペクトル
写真8:ガンマ線計測スペクトル
参考1 人道的対人地雷探知・除去技術研究開発推進事業 研究開発スキーム
参考2 対人地雷と外形の似た物体との区別ができる爆薬探知センサー

<お問い合わせ先>

独立行政法人科学技術振興機構 研究推進部研究第三課
〒102-0075 東京都千代田区三番町5番地
担当: 内田 信裕(ウチダ ノブヒロ)、土屋 暢久(ツチヤ ノブヒサ)
TEL: 03-3512-3526  FAX: 03-3222-2065