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<用語解説>

(注1)制御性T細胞:
 T細胞は、リンパ球の一種で、骨髄の中で生み出された前駆細胞が、肋骨の後ろ、心臓の上にコブシ状の大きさで存在する胸腺と呼ばれる臓器での選択を経て分化し、成熟したもので、細胞に対する免疫反応に関係しています。T細胞の表面には特徴的なT細胞受容体(T cell receptor; TCR)が存在します。T細胞の中にもいくつかの種類があり、胸腺から移出したT細胞のうち、抗原刺激を未だ受けていないものについては、ナイーブT細胞(naive=無知、未経験)と呼びます。ナイーブT細胞が抗原刺激を受けたものは、エフェクターT細胞となり、腫瘍細胞やウィルス感染細胞の破壊、異物を排除するための免疫反応を引き起こします。一方、胸腺中で自己抗原による刺激をうけたものがCD4、CD25、Foxp3を発現して制御性T細胞となり、他のT細胞の過剰な免疫反応を抑制的に調節しています。

(注2)自己免疫病:
 自分の身体の成分を異物として認識してしまい、自己に反応するリンパ球や抗体をつくり、自分の身体を攻撃する病気です。慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病が代表例として知られています。

(注3)細胞表面マーカー:
 様々な細胞の表面には、それぞれ特徴的な蛋白質などの物質からなる種々の抗原分子が発現しており、これらのうちいくつかは細胞の起源・性格を示すいろいろな目印となりえます。これを調べることにより、顕微鏡で観察しただけでは判断がつかない細胞のタイプを見分けることが可能になります。例えば、がん細胞を正常な細胞から区別する際や、様々なタイプの免疫細胞を見分ける際などに用いられます。

(注4)葉酸・葉酸受容体:
 葉酸は、生物の生存に必須の栄養素ビタミンの一種で、その欠乏は貧血等の原因になります。増殖の速い細胞が多くの葉酸を必要とし、DNAやRNAの合成に必要なものです。葉酸受容体は細胞が葉酸を効率良く取り込むために働いていると考えられています。

(注5)MHC:
 主要組織適合性遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex)の略号です。もともと臓器移植の際に拒絶される主要な分子であることから名付けられました。MHCはクラスⅠとクラスⅡに大別でき、クラスⅠはすべての細胞表面に発現し、プロテアソームによる分解産物を提示し、CD8+ T細胞により認識されます。クラスⅡは限られた細胞集団に発現し、ライソソーム酵素による分解物を提示し、CD4+ T細胞により認識されます。