NEC(代表取締役 執行役員社長:矢野薫)と物質・材料研究機構(理事長:岸輝雄、以下NIMS)、科学技術振興機構(理事長:沖村憲樹、以下JST)はこのほど、固体電解質※注1中での金属イオンの析出・溶解反応を利用したスイッチ素子(「NanoBridge ®」):※注2、(図1)に金属酸化物(酸化タンタル)を用いることにより、スイッチの動作電圧を改善し、信頼性を向上することに成功しました。
NanoBridgeはプログラマブルLSIの再構成用スイッチ※注3として研究開発を進めているものです。今回の成果は、NanoBridgeの固体電解質として新たに採用した酸化タンタルの金属イオンの伝導度が非常に低いことを利用して得られたもので、以下の特徴を有しています。
今回の技術開発により、NanoBridgeを用いた高性能なプログラマブルLSIの実現に向けて一歩進展しました。本プログラマブルLSIが実現すると、モバイル機器やデジタルテレビなど多くの電子機器の開発の効率化・高性能化が可能になります※注4、(図2)。
これまでは、NanoBridgeの固体電解質には硫化銅を用いていましたが、(1)オン・オフ状態が変化する電圧(スイッチング電圧)がLSIの動作電圧よりも低いため、LSIの動作中に回路の構成情報が失われる、(2)オンおよびオフ状態の保持時間が室温で3ケ月と短い、(3)硫化銅はLSIの加工工程に必要な熱耐性を備えていない―、などの課題がありました。
今回の研究では、固体電解質中の金属イオンの伝導がNanoBridgeのスイッチング電圧を決める重要な要素であることを解明し、イオン伝導度の大幅な低減を目指しました。また、イオン伝導度を低減することによる、オン・オフ状態の保持特性の向上も目指しました。これらに加え、LSIの加工工程で加わる熱への耐性も考慮した結果、硫化銅と比較しイオン伝導度が十数桁以上低く、耐熱性も高い酸化タンタルを最適な材料として選定しました。
酸化タンタルを用いたNanoBridgeを作製し、実際にスイッチング電圧がLSIの動作電圧よりも高いこと、通電時のオン状態の保持時間が室温で10年以上であること、などを確認しました。
NEC、NIMSおよびJSTは今後もNanoBridgeのプログラマブルLSIへの搭載を目指し、研究開発活動を継続していきます。
本開発の一部は、JSTの戦略的創造研究推進事業ICORP型研究の「ナノ量子導体アレープロジェクト(研究総括:青野正和、物質・材料研究機構ナノシステム機能センター)」の一環として、NECとNIMSとの共同研究としてなされたものです。
なお、NECとNIMS、JSTは本成果を、6月12日から14日まで、リーガロイヤルホテル京都(京都府、京都市)で開催される「VLSIシンポジウム(2007 Symposium on VLSI Technology)」で、初日の12日に発表します。
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