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<用語解説>

(注1)ユビキチン化
 新しく合成されたタンパク質分子が受ける化学的修飾の1つ。ユビキチンと呼ばれる76個のアミノ酸からなる分子が、標的タンパク質の中にあるアミノ酸のリジンに共有結合させる反応をユビキチン化と呼びます。たくさんのユビキチンを共有結合させるポリユビキチン化は、その標的分子を分解させる目印になります。一方、1分子のユビキチン化のみを標的タンパクのリジンに共有結合させるモノユビキチン化反応は、様々な酵素の活性を変化させます。UBC13もタンパク質分解ではなく、タンパク質分子の機能をコントロールするタイプのユビキチン化を行ないます。

(注2)タンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)
 アデノシン三リン酸(ATP)などのリン酸結合を持つ分子からタンパク質分子へリン酸基を移す(リン酸化する)酵素で、キナーゼと呼びます。新しく合成されたタンパク質分子は、様々な化学的修飾を受けます。タンパク質分子の中にあるアミノ酸のセリン、スレオニン、チロシンのリン酸化はその1つです。ヒトでは数百種類のキナーゼが存在します。細胞分裂もキナーゼによってコントロールされています。

(注3)細胞自殺のプログラム
 成人を構成する細胞は、細胞分裂と細胞死とによって常に置き換わっています。1年間に死ぬ細胞の量は成人の体重に相当します。細胞は死ぬ前に高度に制御された自殺プログラムを起動して、すみやかに周囲の細胞に障害を与えずに死にます。X線によって誘導される細胞死もこの自殺プログラムの起動によります。

(注4)相同組み換え
 2本のDNAが切断されたあと、元と違う組み合わせで切断が修復された場合に、DNAが組み換えられたと言います。組み換えする2本のDNAが、同じ塩基配列を持つ場合の組み換えを相同組み換えと呼びます(図2)。生きた細胞の中の染色体DNAを改変する時には、人工的に作ったDNAと染色体DNAとの間の相同組み換えを利用します。

(注5)シスプラチン
 現在までに知られている最も強力な抗がん剤で、がん治療において最もよく使われています。DNA鎖を繋いでしまう(架橋する)ことにより、DNA複製や転写を阻害して細胞死を誘導します。

(注6)カンプトテシン
 臨床で使われるイリノテカンはこの薬の誘導体です。DNA複製時にDNA鎖をほどくために必須の酵素トポイソメラーゼIを阻害することにより、複製を阻害し、細胞死を誘導します。