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<用語解説>

(注1)抗原
 抗体に特異的に結合できる物質のことを抗原と呼びます。ウイルスを構成している蛋白質や化学物質アレルギーの原因である低分子化合物まで大小問わず様々な物質が抗原になりうる可能性をもっています。本研究で用いた抗原はニトロフェニル基を持つ低分子化合物で、1960年代から用いられており、非常に良く研究されている抗原抗体反応系の一つです。

(注2)抗体
 生体防御反応における主要な蛋白質成分の一つ。Y字型をしており2カ所の抗原結合部位(図2抗体モデルの赤い箇所)で抗原と特異的に結合し、外来異物を排除します。研究用試薬や医薬品としても注目されており、多くの分野で基礎研究、応用研究が盛んに行われています。

(注3)SPring-8(スプリング8)
 世界に3台ある第3世代大型放射光施設のうち、日本の播磨にある大型放射光施設の略称(Super Photon Ring 8 GeV)。この施設が利用できるようになって、生命科学から物質科学の極めて多くの分野のサイエンスが進歩しました。特に、生命科学の分野では、生体分子の原子レベルの構造情報を決定することに数多く成功しています。次のターゲットは細胞内で働いているその場での構造情報の取得です。

(注4)X線回折
 電磁波の中でもX線は透過する能力が強く、通常の散乱する能力や反射率は高くありません。しかし、散乱体の結晶構造体の周期性とX線の周期性が一定の条件(ブラッグの条件)を満たした場合のみ反射率が高くなり、それがスポット(ラウエの斑点)として現れます。

(注5)平均二乗変位量(Mean-Square Displacement:MSD)
 運動の大きさを表す統計処理指標の1つ。ある決まった時間幅の中での運動の始点と終点の距離の自乗(運動の方向性を無視する)の総和量です。特に、ブラウン運動のような各時間内ではランダムな運動をしており、その総和的な解析でその特徴が現れる物理現象を取り扱う時に使われる解析因子です。

(注6)ギブス自由エネルギー変化
 自由エネルギーとは、熱力学における状態量の一つであり、特に等温等圧過程の自由エネルギーは、ギブス自由エネルギーと呼ばれています。一般的にこの値が小さい方がより安定な状態を取っていると解釈されます。生体分子間相互作用では、結合前の状態に比べて結合後の状態の方が安定な状態と言えますので、結合反応が起きることでギブス自由エネルギーは、減少し、その変化量(ΔG)は、負の値を取ることになります。また結合力(Ka)とは、

ΔG = -RTlnKa

 という関係式で結びついています。ここで、Rは気体定数、Tは絶対温度を表しています。つまりある一定温度下で分子間相互作用を比較するとき、ΔGが負に大きな値であれば結合力が高い(Kaが大きい)ということになります。