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<用語解説>

(注1)H5N1鳥インフルエンザウイルス:
 A型、B型、C型と大きく3種類に分かれるインフルエンザウイルスの中で、ウイルスが変化しやすく過去に何度か世界的流行を起こしてきたA型インフルエンザウイルスは、ウイルス膜表面にある2つの糖タンパク質、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の抗原性(抗体物質と結合することができる性質)の違いにより、さらに細かく亜型が分類されています。現在までに、HAでは、16種類(H1からH16)、NAでは、9種類(N1からN9)の亜型が報告されています。H5N1というのは、H5亜型、N1亜型に分類されるインフルエンザウイルスのことです。H5N1鳥インフルエンザウイルスは、家禽に対して高い病原性を示すことが多く、稀にヒトに感染した場合においても高い致死率を示します。

(注2)ヘマグルチニン(HA):
 ウイルス膜表面タンパク質のひとつで、HAが動物細胞の表面にあるレセプター(受容体)と結合することで、ウイルス粒子が細胞に取り込まれ、感染が開始されます。

(注3)レセプター(受容体):
 一般に、外界からの刺激や情報を受け取るための細胞表面にある分子、またはその複合体のことをいいます。インフルエンザウイルスは、レセプターとして細胞表面にあるシアル酸と結合します。

(注4)世界的流行(パンデミック):
 ある感染症が世界的に流行することを言います。その病原体が免疫学的に未経験である場合、その被害は大きく、1918年のH1N1インフルエンザウイルスの流行(スペイン風邪)では、4,000万人以上が死亡したと言われます。その後も、1957年にH2N2亜型の流行(アジア風邪)、1968年にH3N2亜型の流行(香港風邪)が起きています。

(注5)シアル酸とガラクトースの結合:
 シアル酸は、細胞表面の糖タンパク質や糖脂質の糖鎖の末端にある糖の1種です。ガラクトースとは、乳製品や甜菜(テンサイ)などに天然に存在する他、ヒトの体内でも合成され、糖タンパク質や糖脂質の糖鎖の一部を形成します。シアル酸は、糖鎖の中でガラクトースと結合していることが多く、その結合様式は、ガラクトースとα2,3結合しているものやα2,6結合しているものなどがあります(図2(b))。

(注6)プラスミド:
 細菌などの細胞内で、染色体のDNAとは独立して複製されるDNA分子の総称です。遺伝子組み換えの際に、遺伝子の「運び屋」として広く利用されています。

(注7)ポリメラーゼ遺伝子:
 RNAやDNAを合成する酵素「ポリメラーゼ」の遺伝子。インフルエンザウイルスは、自身のもつRNAポリメラーゼにより、感染した細胞内でウイルスRNAの転写や複製を行い、子孫ウイルスを増やします。ポリメラーゼの働きの善し悪しはウイルスの増殖に大きく影響します。