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<用語解説>

◆深紫外線
 紫外線の中でも波長が短く、エネルギーが強い200nmから350nm付近の光を深い紫外線といいます。

◆間接遷移型半導体
 発光は半導体中の電子と正孔が結合して起こりますが、間接遷移形半導体では、半導体結晶中の自由な電子と正孔が、お互いに別な結晶の対称点に存在するため、電子と正孔が再結合するのに格子の熱振動のエネルギーが必要になります。このため電子と正孔が光を放射して直接再結合することがほとんどなく、発光デバイスには不向きとみなされています。単元素の半導体であるシリコンやゲルマニウムおよびダイヤモンドがこの型の半導体である。

◆内部量子効率
 LEDに電流を流すことによって発生する電子と正孔の対は、光を放射して再結合するか、結晶中に存在する欠陥を介在して光を放射しないかあるいは別な波長もつ光を放射して再結合します。 内部量子効率はこの電流によって発生する電子と正孔の対がどれだけ、目的の波長をもった光を放射して再結合するかの割合を示します。したがって、この値は、結晶中の欠陥の濃度や発光機構などの材料の物性によって決まり、100%が理想的な値となります。実用レベルでのLEDでは、10%以上の内部量子効率が要求されます。

◆励起子
 エキシトンとも呼ばれます。半導体結晶中にある電子と正孔対がクーロン力で弱く結合して一つの結合体として結晶中を動く中性の電子・正孔対の状態をいいます。 励起子は結晶の本来の性質として存在するもので、結晶が欠陥や不純物原子ない高品質であればあるほど結晶内に多く存在できますが、結晶の温度が高いと励起子状態より、通常の自由な電子と正孔になってしまいます。そのため従来の半導体では励起子は低温で低密度しか存在しなく、室温下では励起子状態は考慮されていませんでした。しかし、ダイヤモンド等のバンドギャップが大きい半導体では高温でも励起子のほうが自由電子・正孔対より安定で高密度状態がとれます。

◆直接遷移型半導体
 直接遷移型半導体とは、結晶の同じ対称点で自由電子・正孔対が直接再結合できる半導体をいいます。電子と正孔が効率よく結合するため発光効率が非常に高く、発光デバイスに向いている。現在一般的なLEDやレーザダイオードはこの直接遷移型半導体で作られます。

◆バンドギャップ
 半導体中に存在する電子と正孔のエネルギーの最も少ないエネルギーに対応しています。 どの半導体も、固有のバンドギャップを持っています。ダイヤモンドのバンドギャップは約5.5eVで半導体のなかでは大きな値を有しています。

◆カソードルミネッセンス
 材料に電子ビームを照射すると蛍光(ルミネッセンス)が観測され、これをカソードルミネッセンスという。通常のルミネッセンスの強度は、照射する電子ビームの電流値(励起プローブ電流)に比例することが期待されます。

◆励起プローブ電流
 材料に電子ビームを照射すると蛍光(ルミネッセンス)が観測され、これをカソードルルミネッセンスといいます。励起プローブ電流とはこのカソードルミネッセンスを観測するときの電子ビームの電流に対応し、通常のルミネッセンスの強度はこの電流値に比例することが期待されます。

◆しきい値
 ある物理量が別な物理量に依存して変化するとき、その物理量のある値からを越えると急激に変化するときの値をしきい値と呼びます。

◆リンドープ
 半導体を合成するとき、不純物を少量混混ぜることをドーピングといい、リン原子を混ぜることをリンドープといいます。

◆n型ダイヤモンド半導体、p型ダイヤモンド半導体、i型ダイヤモンド半導体
 n型ダイヤモンド半導体とは、リン原子などのマイナスの電荷である電子を作り出す不純物原子をダイヤモンド半導体に少量混ぜることにより得られる。また、逆にホウ素原子などをダイヤモンド半導体に混ぜるとプラスの電荷である正孔が発生し、p型ダイヤモンド半導体が得られる。i型ダイヤモンド半導体は不純物原子を混ぜずに合成したダイヤモンド半導体で、真性(intrinsic)という意味でi型と呼んでいます。

◆高温高圧合成法
 天然ダイヤモンドは、地中の非常に深い場所で形成され、地球の造山活動で地上近くまで出てきたものが採掘されている。産業用に使用されるダイヤモンドは人工的に安価に大量生産されたもので、人工合成ダイヤモンドと呼ばれる。合成法には2種類あり、高圧(約5万気圧)と高温(約1,500 ℃)で作る高温高圧合成法と、低圧(約0.03気圧)のメタンと水素から成る原料ガスをプラズマ中で反応させ、約900 ℃の基板上に堆積させる気相合成(CVD)法があります。

◆マイクロ波プラズマCVD法
 気相合成((CVD)法のひとつで、2.5 GHzのマイクロ波でメタンなどの気体をプラズマ状態にし、基板にダイヤモンドを堆積させる方法。気相中の化学反応により薄膜を型成する技術です。

◆取り出し効率、電圧効率
 LEDは電流を流すことにより電気エネルギーが光エネルギーに変換され、最終的に外部に取り出されて利用します。このとき、発生した光エネルギーのうちで外部に取り出される光エネルギーの割合を取り出し効率と言います。また、発生する光子のエネルギーに対する1電子あたりの動作電圧の割合を電圧効率と言います。さらに、最初に注入された電気エネルギーのうちで外部に取り出される光エネルギーの割合を外部量子効率と言います。外部量子効率は先に説明した内部量子効率と取り出し効率の積になります