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【語句説明】

注1 フォトニック結晶:フォトニック結晶とは、一般に光の波長と同程度の周期的な屈折率分布をもつ新しい光ナノ構造を意味しており、周期に対応する波長の光が結晶の内部に存在できずに,一切排除されることを特長とします。この特長を生かすことで,極微小域で光の伝播や発生を自在に制御できることから,光ナノ材料として近年大きな注目を集めています。野田教授らはこれまでにも様々な光の制御が可能であることを示してきました。 例えば、(a)光を微小欠陥共振器で捕獲し、自由空間への放出が可能なことの実証[英科学誌ネイチャー、2000/10/5号]、(b)偏光制御フォトニック結晶レーザの実現[米科学誌サイエンス、2001/8/10号]、(c)極めて強い光閉じ込め効果をもつ光ナノ共振器の実現[同、2003/10/30 & 2004/5/13号、英科学誌ネイチャーマテリアル、2005年3月号]、(d)ヘテロ構造の概念の導入と光ナノデバイスへの展開[米科学誌サイエンス、2003/6/6号]、(e)完全3次元フォトニック結晶による発光の制御の可能性の実証[同2000/7/28 & 2004/6/9号]、(f)2次元フォトニック結晶による発光の制御及びエネルギー再分配の実証[同2005/5/27号]など。

注2 レーザ共振器:レーザとは、光に対する発振器のことを意味します。一般に発振器は以下のような原理で動作します。ある信号を増幅器に入射し、増幅された信号を、再度、増幅器に入射するとさらに増幅されます。これを繰り返すことにより、発振状態になります。(例えば、マイクとスピーカを近づけすぎると、ハウリングが起こりますが、これはまさしく発振状態を意味します。)光の場合も同様で、光の増幅器に光信号を入射すると増幅され、これを再び、光の増幅器に入射すると、さらに増幅され、以上の繰り返しにより光の発振状態となります。この際、増幅された光を再び、増幅器に入射するために、一般に、鏡を用います。つまり、光増幅器を挟んで、両側に鏡を設置すると鏡で反射し合っている間に、増幅が繰り返され、発振状態になります。反射を繰り返すための2枚の鏡が、レーザ共振器と呼ばれるものです。本研究で開発したレーザは、このような鏡2枚からなる共振器を用いるのではなく、フォトニック結晶を用いるという独自のアイデアに基づくものです。

注3 超波長分解能レーザ:レーザ光は波長が単一(単色)の光波であり、このためレンズによる集光性に優れているが、原理的には波長以下のサイズには集光できません(回折限界)。集光サイズを波長の数分の1まで小さくすることができる特殊なレーザ光源をここでは超波長分解能レーザと呼びます。この超波長分解能光源は、例えば、光メモリーの高密度化にとって極めて有用であると考えられます。一般に、光メモリーの1ビット記憶のための面積は、レーザ光を集光できるサイズで決まるため、もし、同じ波長の光を波長以下に集光できるとなると、単位面積あたりの記憶容量が飛躍的に増大するものと期待されます。例えば、青色のレーザ光が、1/3以下にまで集光できるようになりますと、現在の最先端の光メモリー容量が、さらに一桁以上増大することになります。

注4 光ピンセット光源:集光させたレーザ光を透明な微粒子に照射すると、光強度の強い場所に向かうような力が粒子に働く(放射圧)。この性質を利用し、微粒子を捕獲、操作する光学系を光ピンセットと呼びます。光ピンセット光源には通常、円形単峰に整形されたビームを用いますが、金属等の不透明粒子や、泡などの周囲よりも屈折率の低い物質に対しては、光強度の強い場所から逃れるように力が働くため、通常のレーザ光源では捕獲困難です。しかしながら、ドーナッツ形状のビームをもつレーザ光源を用いると、金属、あるいは低屈折率微粒子であっても外側から力を加えることができ、捕獲、操作が可能になります。

注5 マイクロフルィディクス:微量流体工学とも呼ばれる研究分野であり、マイクロ、ナノ(十億分の一)リットル程度の液体の振る舞いの解析、制御を目的とします。微量の試料で様々な化学的、生物学的な試験を行えることから、分析コストの低減、反応時間の短縮、精度の向上や検査システムの統合を実現する技術として期待されています。近年、液体中の微粒子を光ピンセット等で分別したり、レーザを量流センサーに利用したりする用途が増えてきており、この分野におけるレーザの重要性が増してきています。また、ドーナッツビームは、液体を流すスクリューの動力源(アクチュエータ)への応用も期待できます。

注6 光の群速度:光のエネルギーが伝搬する速度。共振器中を光が往復する場合、進行方向とその逆向きに進行する波が重なり合い、光が止まっているように見えます(定在波)。この時エネルギー伝搬速度(群速度)は零となります。