JSTトッププレス一覧共同発表 > 用語の説明

用語の説明

◆量子コンピュータ
 量子力学の「重ね合わせ」、「干渉効果」、「量子もつれ合い」という3つの性質を効果的に利用して超並列計算を行うことが可能な計算機。量子ビットを複数個配列した構造に、各量子ビットでの状態を外部から制御(演算)することより、情報処理を行う。超並列計算の特徴として、現在のコンピュータで2のn乗かかる論理演算をnステップで実行することが可能になり、現在のコンピュータに比べて膨大な情報処理能力を有すると期待されている。

◆量子演算素子(量子ゲート)
 従来のコンピュータでは論理演算を実行する基本素子を「論理演算素子」または「ゲート」と呼ぶのと同様に量子コンピュータでの論理演算を実行する基本素子を量子(論理)演算素子、または量子ゲートと呼ぶ。
 従来のコンピュータでは、基本ゲートとしてNOTゲートやANDゲートの組み合わせ(万能ゲート)があれば任意の論理演算が行えることが知られている。同様に量子コンピュータでは、1量子ビットの重ね合わせを制御する1量子ビット演算素子(回転ゲート)と、2量子ビットの条件付操作を行なう2量子ビット演算素子(制御NOTゲートまたは制御回転ゲート)の組み合わせにより任意の演算回路を構成できるということが証明されている。

◆量子ビット
 量子コンピュータでのデータを扱うための基本単位。"0"状態、"1"状態の他に、それらを任意の重みで、重ね合わせた状態(たとえば0の状態がa%, 1の状態が(100ーa)%という確率的な分布)をとること可能な量子2準位系のこと。従来のコンピュータは、情報の基本単位として「0」または「1」の2つの状態を表す「ビット」を用いているのに対して、量子コンピュータでの情報の基本単位として"0"状態、"1"状態の2つの状態を有する量子2準位系である「量子ビット」を用いる。

◆励起子
 半導体または絶縁体中で、クーロン引力の相互作用によって結びついている電子・ホール対のことである。光励起によって半導体中に電子・ホール対を形成する際に、伝導体中に励起された電子と、価電子帯中に残されたホールの間とのクーロン相互作用を介して励起子が形成される。

◆量子ドット
 電子またはホールまたは、それらが結合してできる励起子等の微小な粒子を内部に閉じ込めることができる、大きさ数十nm程度のドット構造を「量子ドット」と呼ぶ。量子ドットでは、閉じ込め効果によってエネルギー準位が原子のように離散的になり、人工原子のような性質を示す。

◆結合量子ドット
 半導体量子ドットを2個または、数個近接して配置した構造。量子ドット中に閉じ込められている電子またはホールの波動関数の広がりよりも、ドット間の距離を近くに配置した強結合構造では、量子ドット間を電子または、ホールがトンネルして移動することが可能になる。量子ドットを人工的な原子としてみなした場合は、結合量子ドットは人工分子として呼ばれることもある。

◆MBE法
 超高真空中で加熱された基板に分子線または原子線を入射させて、基板上に結晶成長層を形成する方法