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[用語説明]

◆電子
全ての原子は電子と言うマイナスの電気を帯びた粒子と原子核からなる。金属などの固体中では、電子が自由に動き回り電気を運ぶ。
◆スピン注入
電子は電気と同時にスピンを持つ。スピンとは電子の磁石としての性質である。従って、電子の運動は電荷とスピンの運動と捉えることが出来る。電荷の運動は電流である。一方、スピンの運動は「スピン流」と呼ばれる。これは、磁石の流れである。磁石に電流を流すとスピン流が発生する。スピン流が磁石から銅のような通常の金属に入ると磁石の向きが乱れてスピン流は急速に消滅する。消滅するまでの距離は例えば100nm程度である。そこで、非常に小さな接合構造を作ると一方の物質から他方へとスピン流を流し込むことが可能となる。これをスピン注入と呼ぶ。すなわち、スピン注入とは磁石がスピン流に乗って他の物質に流れ込む現象である。流れ込んだスピンは、もともとあったスピンとの間にトルク(磁石の磁極の向きを変えようとする力)を発生する。これをスピン注入トルクと呼んでいる。本発明の素子はスピン注入トルクを用いたダイオードなのでスピントルクダイオードと命名した。
◆スピン注入磁化反転
スピン注入トルクを用いて磁石の磁極の向きを反転することをスピン注入磁化反転と言う。次世代の磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)における磁気書き込み技術として期待されている。
◆磁気抵抗素子
素子内部の磁石の磁極の並び方により電気抵抗が変わる素子。磁化配置を変えるには磁場を印加する方法と電流を注入する方法がある。
◆磁気共鳴
方位磁石の磁針は北極(N極)を指す。針の方向を少しずらしてから離すとN極の周りで振動する。さて、磁石はその中にある小さな磁石の集合体である。この小さな磁石(スピン)も磁界の中ではN極の方向を向き、その周りで振動する。この振動は、コマの首振り運動(歳差運動)と似ているので、歳差運動と呼ばれる。歳差運動の振動数は加える磁界の大きさに依存するが、通常は数GHz程度である(1GHzは、一秒間に十億回振動する場合の周波数)。スピンにその歳差運動の振動数に一致した周波数の磁界を印加すると歳差運動が共鳴的に誘起される。これを磁気共鳴と呼んでいる。
本発明は、スピン注入トルクによりスピンの歳差運動を共鳴的に誘起できることを発見したことに基づいている。
◆マイクロ波
周波数が約1GHzから50GHzの電磁波。携帯電話などの通信に用いられている。
◆検波・整流
プラスとマイナスの電圧(電流)から一方のみを取り出す作用を整流作用と言う。特に、整流によって高周波信号から音声などの必要な信号を取り出すことを検波と呼ぶ。
◆ダイオード
半導体などからなる2端子素子。整流作用、検波作用などを示す。