用語説明


[注1] より正確には、全反射と呼ばれる現象により、光は屈折率の高い領域に閉じ込められる。ここに、全反射とは、屈折率の大きい物質から小さい物質へ光が進むとき、その境界面において、ある角度(全反射角と呼ばれる)以下の光が全て屈折により反射してしまう現象。屈折率差が大きいほど全反射角が大きく、多くの光が屈折率の大きい物質に閉じこめられる。 一般に半導体の場合、90%以上の光が内部に閉じこめられてしまう。これまではこの全反射を防ぐために、表面を荒らすなどの方法がとられてきた。


[注2] 発光効率ηは、単位時間あたりに生じる「不要な発光」の割合r1と、「有用な発光」の割合r2を用いると、η = r2/(r1+r2)で表される。r1およびr2の逆数、すなわち1/ r1、1/ r2は、それぞれ、与えたエネルギーが、「不要な発光」および「有用な発光」で消費されていく時間に相当するものとなる。 ここで、r1>> r2 ゆえ、1/ r1 << 1/ r2となり、与えたエネルギーは、「不要な発光」により、すぐに消費されていくことになる。


[注3] フォトニック結晶は、周期的な屈折率分布をもつ光ナノ構造を意味する。屈折率分布の周期に対応する波長の光の存在を許さないという特長(これをフォトニックバンドギャップ効果と呼ぶ)をもつ。野田教授らはこれまでにも様々な光の制御が可能であることを示してきた。 例えば、(a)光を微小欠陥共振器で捕獲し、自由空間への放出が可能なことの実証[英科学誌ネイチャー、2000/10/5号]、(b)極めて強い光閉じ込め効果をもつ光ナノ共振器の実現[同、2003/10/30 & 2004/5/13号、英科学誌ネイチャーマテリアル、2005年3月号]、(c)ヘテロ構造の概念の導入と光ナノデバイスへの展開[米科学誌サイエンス、2003/6/6号]、(d)大面積なコヒーレント共振器の実現の可能性の実証[同2001/8/10号]、さらには、(e)完全3次元フォトニック結晶による発光の制御の可能性の実証[同2000/7/28 & 2004/6/9号]など。


[注4] 通常の発光体でも、フォトニック結晶を形成した発光体の場合でも、外部へと放射される「有用な発光」の生じる割合は、ほぼ等しく、(注2)で述べたr2 で表わされる。今、フォトニック結晶の効果により、「不要な発光」が禁止されると、発光体に与えたエネルギーは、1/r2 の時間で消費されるため、通常の発光体の場合に消費される時間1/r1に比べて、ゆっくりとエネルギーが消費されていくことになる。


[注5] 現実的には、非発光再結合過程というエネルギー損失過程が存在するため、100%の効率を得るためには、さらなる最適化が必要となる。