補足説明

 電子は自転していると考えると、どちらに自転していてもその電子のエネルギーは等しいが磁場の中に入ると2つのエネルギー準位を持つようになる。この磁場によるエネルギー準位の分裂をゼーマン分裂という。

 量子ドットでは電子数を1個単位で変えることができる。このことを利用して、電流が水のように連続的に流れる現在のトランジスタとは違って、水滴がぽたぽたと落ちるように電流が流れる原理を利用して、電子数を1個単位で制御した新しいエレクトロニクス。消費電力が小さいことが予想されている。

 古典コンピュータと違って量子の状態を情報媒体(量子ビット)として利用する全く新しいタイプのコンピュータ。量子物理学を動作原理としていることから、量子の世界に特有の重ね合わせ・超並列性が特徴。素因数分解を超高速で行うことができる量子アルゴリズムが発見され急速に注目を浴びている。まだ、1量子ビットができたかできないかという段階であり、その作製にはナノテクノロジーの粋を集めた技術が必要とされる。

 閉じ込めとはある有限の空間に電子が束縛されることである。たとえば、ここでは、数ナノメートルのカーボンナノチューブの中に電子を閉じこめようとする。閉じこめは、束縛ともいう。すなわち、原子核に束縛されているとか、量子ドット中に束縛されているという。電子が有限の空間に閉じこめられると、許されるエネルギー状態(準位)は離散的になる。原子のエネルギー準位がとびとびなのはまさに、電子が原子に束縛されているからである。従って量子ドットの中のエネルギー準位もとびとびになる。離散準位の間隔は、閉じこめの空間が小さければ小さいほど、広くなる。おおよそ、自然の原子では、可視からX線、半導体人工原子ではマイクロ波、カーボンナノチューブではテラヘルツ波領域となる。

 同じ準位に入れる電子の数。一般に量子物理学では、パウリの排他原理により、1つの準位には1つの電子しか入れない(スピンを無視した場合)。しかし、準位が縮退している場合には、複数個の電子が入ることができる。このとき、入る準位は同じでも、それぞれの電子の量子状態は異なる。スピンを考えたとき、今までの議論で縮退していない準位も2重に縮退している。しかし、この縮退は磁場をかけると解ける。

 1925年にヴォルフガンク・パウリが提唱した「1つの原子軌道に同じスピンの向きを持った電子は2個入れない」という仮定である。言い方を変えると、「2つ以上の電子や陽子等が、全く同一の量子状態を持つことはできない」ということ。