用語説明

*1 量子コンピュータ
 量子ビットを複数個配列した構造(量子レジスター)に様々な演算をさせることにより情報処理を行うコンピュータのこと。量子コンピュータでは、演算途中で状態の「重ね合わせ」が可能なため、この性質を利用した並列計算が可能と考えられています。例えば量子ビットn 個を自在に制御できるようになれば、現在のコンピュータで2ステップかかる論理演算をn ステップで実行することも可能です。

*2 量子ビット
 量子2状態系の別名で、量子コンピュータの基本構成要素です。現在のコンピュータで使われている0、1の二つの状態しか取り得ない古典ビットに対して、量子ビットと呼ばれます。量子ビットは、演算途中では、|0 > 状態と|1 > 状態のほか、それらの任意の重ね合わせ状態をとることが可能です。

*3 核スピン
 荷電粒子である原子核は自転することにより小さな磁石として振る舞いスピンとしての性質をもつ。これを核スピンと言う。核スピンを磁場中に置いたときにスピン準位がどのように分裂するかは核種により異なり、これを利用してNMRなどの高感度の測定が実現されている。昔から広く普及しているNMRが核スピンのコヒーレントな振動を利用していることからもわかるように核スピンはコヒーレント性が保たれやすい性質があり、量子ビットの有力な候補と考えられている。

*4 コヒーレント
 互いに干渉することができる波動の性質(可干渉性)を示す用語で、ここでは、量子状態がほぼ一定の位相関係を保つことにより干渉を示す度合いを定量的に表わします。量子状態のコヒーレントな特性は一般に外部由来のノイズによって時間と共に指数関数的に失われていきます。

*5 ポイントコンタクト
 量子井戸に板状(二次元)に閉じ込められた電子が点のような狭い領域で横に接続された構造を言い、伝導状態はこの狭い領域の特性で決定されます。量子ドットなどのナノ構造はこのポイントコンタクトを組み合わせて作ることも多く、半導体ナノ構造の基本デバイスです。

*6 核磁気共鳴(NMR)
 核スピンがちょうどスピン準位間のエネルギーに相当する交流電磁波によりコヒーレントに制御されることを利用して特定の核種の存在やその周囲の化学結合を解析する手段。昔から構造分析に広く用いられてきました。通常は交流磁場に反応した核スピンがその後コヒーレントに回転する様子をピックアップコイルで拾い測定するので測定には少なくとも1011個以上の核スピンが必要になります。