平成16年12月21日

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植物と共生菌との共生メカニズムを解明

〜共生関係を制御するタンパク質を明らかに〜

 JST(理事長:沖村憲樹)、国立大学法人大阪大学(総長:宮原秀夫)、および独立行政法人農業生物資源研究所(理事長:岩淵雅樹)の研究チームは、植物のプラスチドと呼ばれる細胞小器官に局在するタンパク質(CASTOR、POLLUX)が、菌根菌・根粒菌の植物への共生を制御していることを見出した。プラスチドが共生の過程に必要であることを示したのは世界で初めてのことである。今回明らかになったメカニズムは、共生関係を利用した環境低負荷型の持続型農業などの応用につながると期待される。
 これは、JST・戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CRESTタイプ)の研究テーマ「共生ネットワークの分子基盤」(研究代表者:東京大学大学院理学系研究科 川口正代司助教授)のチームメンバーである大阪大学大学院工学研究科の林誠助手、同大学大学院博士課程の武田直也、および生研センター・「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業」の研究テーマ「マメ科植物等のゲノム分析による根粒形成機構の系統的解明」研究代表者:独立行政法人農業生物資源研究所 川崎信二上席研究官、同研究所の今泉温子特別研究員らにより得られた研究成果である。12月22日付の英国科学誌「ネイチャー」にオンライン発表される。

<研究の背景>

 陸上植物の大部分は、根において土壌微生物である菌根菌1)と共生することで、土壌中のリン酸などの養分を効率よく植物体へ供給している。また、ダイズに代表されるマメ科植物は、菌根菌の他に窒素固定のはたらきを持つ根粒菌2)とも共生することができる。植物の3大栄養素である窒素、リン、カリウムのうち2つの栄養素を供給する菌根菌・根粒菌(共生菌)との共生関係は、植物の生育にとって欠かすことのできないものである。
 植物の共生に関する研究は古く、特に窒素固定のメカニズムについてはこれまでに多くの研究がなされてきた。共生に必要な植物の遺伝子の同定はここ数年で始まったばかりであるが、今回、共生に必要な遺伝子産物が根のプラスチド3)に局在することを世界で初めて明らかにした。

<具体的な研究成果>

 植物と土壌微生物の共生において、植物は自らを取り巻く土壌微生物の中から、有用なもののみを区別し、共生関係をつくるために様々な戦略を発達させている。本研究では共生に必要な植物遺伝子を明らかにするために、マメ科植物のモデル植物であるミヤコグサから共生変異体を単離し、CASTOR、POLLUXという2つの遺伝子を同定し、解析を行った。
 その結果、以下のような結果が得られた。

これらの遺伝子に変異がある植物では、菌根菌・根粒菌双方とも共生できなくなり、低窒素、低リン土壌では生育できなくなった。これにより、CASTOR、POLLUXは植物の共生に重要な役割を果たしていると考えられた。
これらのタンパク質はイオンチャネル4)と類似しており、共生の細胞内情報伝達に関与するカルシウムスパイキングという、カルシウムイオンの周期的な濃度変動に必要であることが分かった。さらに、二つの遺伝子産物はプラスチドに局在していることが分かった(図1)。このことから、植物のプラスチドが共生に必要であること見出した。
 この2つのタンパク質は高い相同性を示すが、どちらか一方の機能が不全になっても共生できなくなる。この特徴について解析を進めることで、類似した2つのタンパク質がそれぞれどういった機能分担をしているか、また、進化の過程で共生メカニズムがどのように変化していったかなどの疑問に答えが出せると期待される。

<結果から得られた知見>

<今後の展開>

(1) 基礎研究面に関して
CASTOR、POLLUXタンパク質という新たなイオンチャネルファミリーが発見されたことで、イオンチャネルの研究に新たな視点を与えるものと期待される。さらに、これまで役割があまり理解されていなかった根のプラスチド研究に一層の知見をもたらすと考えられる。
(2) 応用面に関して
肥料に依存しない環境低負荷型の農業は21世紀の重要課題となっており、なるべく少量の肥料で効率よく栽培する持続型農業の開発が望まれている。そのような中、共生に必要な遺伝子の同定が進むことで、共生関係を制御し少ない肥料でも生育可能な栽培品種を作出するための分子育種が期待される。例えば、今回明らかになったCASTOR、POLLUX遺伝子を指標にすることで、共生能力の優れた品種の選抜が可能となり、低窒素型作物、低リン型作物の育種につながると期待される。


この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下の通りである。

JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CRESTタイプ)

研究領域:植物の機能と制御<研究総括:鈴木昭憲、秋田県立大学 学長>
研究期間:平成14年〜平成19年

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構生物系特定産業技術研究支援センター
(生研センター) 新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業
研究領域:「マメ科植物等のゲノム分析による根粒形成機構の系統的解明」
(研究代表者:独立行政法人農業生物資源研究所 川崎信二上席研究官)
研究期間:平成12年〜平成16年度

用語説明
図1. 細胞内におけるCASTORの局在
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<お問い合わせ>

林 誠(はやし まこと)
 大阪大学大学院工学研究科
 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2−1
 Tel:06-6879-7417
 Fax:06-6879-7418

川崎 信二(かわさき しんじ)
 独立行政法人農業生物資源研究所
 〒305-8602 茨城県つくば市観音台2−1−2
 Tel:0298-38-8386
 Fax:0298-38-8386

島田 昌(しまだ まさし)
 独立行政法人科学技術振興機構 研究推進部 研究第一課
 〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8
 Tel:048-226-5635
 Fax:048-226-1164

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