用語の説明
 
MRAM【図1参照】、出力電圧【図2参照】
 TMR素子を用いたコンピュータ用メモリがMRAMである。TMR素子の2つの強磁性電極の磁化の相対的な向きが平行か反平行のどちらかの状態をとるようにすると、1個のTMR素子で1bitの情報を記憶できる。TMR効果によって平行状態と反平行状態でのTMR素子の電気抵抗が異なるため、素子の電気抵抗を計れば、TMR素子に記憶された情報を非破壊で読み出すことができる。実際の読み出しは、TMR素子に電流を流して、TMR素子の両側に生ずる電圧の変化(出力電圧)を読み出すことで行われる。Gbit級MRAMを実現するためには、400mVの出力電圧が必要となる。
 実際のMRAMでは、ワード線ビット線の間にTMR素子を挟み、格子上に多数並べる。MRAMは原理的には、不揮発・高速・低消費電力・低電圧駆動・高集積といった、メモリに要求される特性を全て兼ね備えた次世代メモリである。MRAMの研究開発は米国(IBM、モトローラ)が先行しており、日本でも精力的に研究開発が行われている。
 
単結晶、アモルファス
 原子が格子状に並んだ構造(結晶格子という)で構成されている物質。結晶格子の向きが揃った粒子を結晶粒という。多数の結晶粒が凝集して1つの個体を形成しているものを「多結晶」といい、単一の大きな結晶粒が1つの個体を形成しているものを「単結晶」という。一方、原子の配列が不規則な物質をアモルファス物質という。
 
トンネル磁気抵抗素子(TMR素子)、トンネル障壁、磁気抵抗【図2参照】
 厚さ数nm(1nm:10億分の1メートル)以下の非常に薄い絶縁体(トンネル障壁という。従来、酸化アルミが用いられてきた)を2枚の強磁性金属の電極で挟んだ素子をトンネル磁気抵抗素子(TMR素子)という。2つの強磁性電極の磁化の相対的な向きが平行な時と反平行な時で、TMR素子の電気抵抗が変化する。この現象をトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)と呼ぶ。この時の電気抵抗が変化する割合を百分率で表したものをTMR比と呼ぶ。
 
酸化アルミ、酸化マグネシウム【図3参照】
 従来型のTMR素子のトンネル障壁には、酸化アルミが用いられている。酸化アルミは、通常、原子配列が不規則なアモルファス物質である。このため、電子が酸化アルミの中を流れる際に散乱されて直進しづらい。一方、新型のTMR素子のトンネル障壁材料である酸化マグネシウムは、原子が規則的に配列した結晶の性質を持つ。この性質のために、電子が散乱されずに直進できる。
 
ギガビットGbit
 "bit"は情報量の最小単位で、2進法の1桁(つまり"0"か"1")である。"G"(ギガ)は109、つまり10億のことである。「Gbitメモリ」とは、「10億bitを越える記憶容量を持つメモリ」のことである。MRAMの場合、現在の技術の延長では1Gbitの実現は困難と考えられる。
 
ワード線、ビット線
 RAMなどの固体メモリでは、ワード線とビット線と呼ばれる非常に細い電線が、碁盤にある縦線と横線のように張り巡らされており、1bitの記憶を担う個々のメモリ素子は、この縦線と横線の交点に置かれている。特定のメモリ素子へのアクセスは、その素子に繋がった縦線と横線即ちワード線とビット線に通電することによって行われる。
 
DRAM
 Dynamic Random Access Memoryの略。現在のコンピュータに用いられている最も一般的なメモリであり、大容量、比較的高速な読み書きが可能、揮発性(電源を切ると記憶情報が消える性質)、などの特徴を持っている。キャパシタ(蓄電素子)に電気を貯めることで情報を記憶するため、電源を切るとキャパシタが放電されて記憶情報が失われてしまう。
 
磁性薄膜
 鉄やコバルト、ニッケルなどの強磁性(磁石に付く性質を持つ物質)の金属や、これらを主成分とする強磁性の合金を、基板の上に薄い膜状に堆積したものを磁性薄膜という。通常、真空中で材料金属を蒸発させて、基板の上に堆積させて作製する。
 

■ 戻る ■


This page updated on March 2, 2004

Copyright©2004 Japan Science and Technology Agency.