平成15年12月17日
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高速バッティングロボットシステムの開発

 人間が投げたボールの軌道を瞬時に判断し、高速に打ち返すバッティングロボットシステムを開発した。このシステムは、1ms(0.001秒)で処理可能な汎用ビジョンチップシステムをキーデバイスとしており、例えば変化球でも打ち返すことが可能である。これは、従来のロボットの行っていた動作速度の限界を打ち破ったものであり、日本が世界をリードするロボット技術の新たな展開が期待できる。
 本研究は、独立行政法人 科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業の研究テーマ「感覚運動統合理論に基づく「手と脳」の工学的実現」(研究代表者:石川正俊,東京大学大学院情報理工学系研究科教授)のもとで実施したものであり、平成15年12月19-21日に東海大学で開かれる第4回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会で発表される。
 従来より、高速な物体の操作の実現を目指して、ロボットマニピュレーションシステムの研究開発が進められてきた。しかし、その多くは産業ロボットに代表されるように、あらかじめ決められた動作を高速に実行するものであった.近年,視角などのセンサ情報を使用するロボットも開発されてきているが,その処理速度が遅いために,環境の変化に合わせた高速運動を行うことはできなかった.つまり,従来のロボットマニピュレータは,対象や環境の状態に合わせて高速に反応や動作することができなかった.
 一方,人間の手の運動(目と手の協調動作)では,人間の目や手の能力の限界に合わせて,高速でダイナミックな操作(例えば,投げる,捕る,ジャグリング)が多く行われている.ロボットマニピュレータと視覚の統合システムは同等の機能を工学的に実現するものあるが,それぞれの要素は人間以上の正確さや速度を持つので,統合システムも原理的には人間の速度を大きく超えることが可能である.
 そこで我々の研究室では,機械システム並びに視覚システムの速度限界を追求し,超高速の領域で,人間と同様な目と手の協調動作を実現した.視覚システムとして,1msで汎用画像処理が実現可能なビジョンチップシステム(すでに開発済み.国内2社で実用化)を用い,機械システムとしてのロボットマニピュレータには軽量高速マニピュレータを用いた.
 実現した視覚システムとロボットマニピュレータを用いて,人間の投げたボールをマニピュレータの手先のバットで打ち返すというタスクを実現した.人間がピッチャーのモーションから球の軌道を予測するのと異なり,視覚でボールの軌道を0.001秒ごとに認識しながらバットの軌道を調整するので,正確なバッティングが実行される.球を視覚で確認してから打つまで0.2秒にも満たない高速動作であり,例えば,変化球でも,ピッチャーが至近距離から投げつけた場合でも,打ち返すことが可能である.
 今後,これまでに開発している高速多指ロボットハンドをアームの先に取り付けて,全体として超高速ロボットを実現する予定である.現状のロボット研究の多くが「人間と同じ動作の実現」を目指しているのに対して,本研究は機械の限界に挑む研究であり,ロボットの速度の限界を追求したものである.
 このことは,コストダウンに限界のある産業用ロボットに対して,適応性と高速性を付与することにより,パフォーマンスの向上を実現するブレークスルーを提供するものであり,世界をリードする日本のロボット技術に新たな世界の可能性を与えるものである.
この研究テーマが含まれる研究領域,研究期間は以下の通りである.
研究領域: 脳を創る(研究統括:甘利俊一 理化学研究所)
研究期間: 平成11年度~平成16年度
 
補足説明
図1 高速ビジョンチップシステム
図2 実験環境
図3 バッティング連続写真
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 本件問い合わせ先:
石川 正俊(いしかわ まさとし)
東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻
〒113-8656 東京都文京区本郷7-3-1
TEL: 03-5841-8602,FAX: 03-5841-8604
URL: http://www.k2.t.u-tokyo.ac.jp/index-j.html
森本 茂雄(もりもと しげお)
独立行政法人科学技術振興機構 戦略的創造事業本部
研究推進部 研究第一課
〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8 川口センタービル
TEL: 048-226-5635,FAX: 048-226-1164
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