| ||||||||
経 緯 | ||||||||
今回、御子柴博士にZülch賞が授与されることが決まったのは、プルキンエ細胞内のIP3受容体の発見と機能に関する研究と、脳神経系の発生と分化における先駆的研究が評価されたことによります。 御子柴博士は、細胞内のカルシウムの濃度を調節する分子であるIP3受容体を小脳の神経細胞であるプルキンエ細胞から発見し、その全構造を決定しました。IP3受容体は受精から細胞分化、更には脳の可塑性にも関わる重要なカルシウムチャンネルです。この分子は変異を受けると個体の異常(運動失調やてんかん)をおこすため、世界中の研究者や製薬会社が追い求めていたものですが、御子柴博士が世界に先駆けて発見しました。これにより、細胞の働きを調節する様々な薬の開発に道を拓きました。 また、脳神経系の発生と分化について、行動異常のネズミと正常のネズミの比較解析により、脳のしわがつくられる仕組み、脳において神経細胞の位置が決定される分子メカニズムの解明に成功しました。さらに、新しい遺伝子群であるZicを発見し、発生初期の脳のつくられる分子メカニズムの解明に大きく貢献しました。これらの遺伝子を破壊して作成した変異マウスはモデル動物として発生・分化の研究において大きな貢献を果たしています。 | ||||||||
今後の抱負 | ||||||||
御子柴博士は、今回Zülch賞が授与されることとなり、「私は、これまで脳がどのようにして作られるのか、脳がどのようにして働くのかについて分子レベルでの解明をめざしてきました。非常に地道な基礎研究です。基本的なメカニズムが明らかになれば障害発生の機序もおのずと明らかになり、その治療への道も大きく開けます。このような基礎的な研究に対して国際賞を頂いたことは、私にとり、今後の研究の大きな励みになります。この賞は一緒に研究にたずさわって下さった仲間を代表して頂きたいと思います。今後、脳の発生・分化研究とカルシウムの機能の解明の為に全力を注ぎたいと思います。」と抱負を述べています。 | ||||||||
Zülch賞とは | ||||||||
Zülch賞は、ドイツのGertrud Reemtsma財団から、神経科学の基礎研究において際立った業績をあげている研究者に授与される国際的な賞です。Gertrud Reemtsma財団はMax Planck(マックス プランク)研究所脳科学研究所の一般脳科学部門の所長だったKlaus Joachim Zülch(クラウス・ヨアヒム・チュールヒ)博士を記念して、Zülch博士の妹である Gertrud Reemtsma氏によって1989年に設立されました。 Zülch賞の受賞者はGertrud Reemtsma財団の理事会によって決定されます。理事会は国際的に著名な科学者により構成され、理事長はMax Planck協会の会長、またはMax Planck協会の生物学医学部門長が就任することとなっています。現理事長はMax Planck協会の会長Peter Gruss(ペーター・グルス) 博士が務めています。 Zülch賞は過去において世界的に著名な研究者が受賞しており、プリオン病の研究者で後にノーベル賞を受賞したPrusiner博士なども受賞しています。 | ||||||||
御子柴 克彦(みこしば・かつひこ)プロフィール | ||||||||
| ||||||||
戻る |
Copyright©2003 Japan Science and Technology Corporation.