補足説明


※1 磁気共鳴画像装置(MRI:magnetic resonance imaging)
 プロトン(水素の原子核)は磁場の中でスピン歳差回転運動を行う。通常はプロトンごとに回転の位相が異なるので巨視的な磁場変化は観察されないが、励起磁気パルスにより回転位相を合わせると巨視的な磁場変化(磁気共鳴信号と呼ぶ)が観察される。位相が再びばらける(緩和と呼ぶ)ことにより磁気共鳴信号は減少し消失するが、緩和のスピードが脳組織の性質により(例えば灰白質と白質とで)異なるので、脳の構造を撮影することができる。病院に診療のために設置されている磁気共鳴画像装置の磁場の強さは1.5テスラ以下であるが、研究目的で3テスラや4テスラの磁場の装置が作られている。高い磁場ではより多くのプロトンが磁化するので磁気共鳴信号が大きくなるなどの利点がある。その反面、磁気共鳴信号が緩和するまでの時間が短くなるなどの不利な点もある。
   
※2 第一次視覚野
 大脳の後部(後頭葉)に位置し、網膜からの信号を大脳の中で初めに受け取る領野。物体像から明るさコントラストや色コントラストの輪郭を検出したり、左右の目からの像を統合する機能を果たす。第一次視覚野の情報はいくつかの領野を経由して段々に大脳のより奥の領野に伝えられ、最終的には下側頭連合野で物体の認識が、頭頂連合野で運動の視覚的制御が行われる。最近の研究では、これらの大脳連合野からの信号が再び第一次視覚野へフィードバック信号として戻され、“図”と“地”の分離や物体のなす面の知覚などの複雑な機能に第一次視覚野も関与することが示唆されている。
   
※3 眼優位性コラム
 第一次視覚野において、主に左目から入力を受ける細胞が集まって左目コラムをなし、主に右目から入力を受ける細胞が集まって右目コラムをなす構造を眼優位性コラムと呼ぶ。ほかのコラム構造と違って、ひとつひとつのコラムが大脳皮質表面のひとつの方向に伸びたスラブ状の領域を構成し、全体を脳の表面の上から眺めると、左目コラムと右目コラムが交互に繰り返すストライプを構成しているように見える。
 

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