平成13年8月30日
日本電気株式会社
科学技術振興事業団
(財)産業創造研究所

カーボンナノチューブを電極に用いた
携帯機器用の小型燃料電池を世界で初めて開発
〜ナノ技術を用いた次世代エネルギーの実用化に大きな一歩〜

 NEC(社長:西垣 浩司、本社:東京都港区)、科学技術振興事業団(理事長:沖村 憲樹、本部地:埼玉県川口市)、(財)産業創造研究所(理事長:那須 翔、所在地:東京都文京区)は、ナノテクノロジー素材として注目されているカーボンナノチューブを電極に用いた携帯機器用の小型燃料電池を開発いたしました。

 燃料電池は、水素などの燃料と酸素とを電気化学的に反応させて化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するもので、環境負荷が小さく高効率な次世代エネルギーとして、自動車用や家庭用発電への研究開発が活発に行なわれております。また、そのエネルギー密度が現在広く使われているリチウム二次電池の10倍となることから、将来の携帯機器用電源としても大いに期待されており、携帯機器の高機能化に伴う今後の消費電力増大の問題に対応する上でも必要不可欠な技術であります。

 今回開発した燃料電池は、電極に活性炭を用いた従来の燃料電池に比べ、電池の出力が約2割向上することを確認しております。この技術を発展させると、将来的には、ノートパソコンの数日間の連続使用などが可能になります。この成果は、携帯機器用の燃料電池を実現するための重要な一歩であるとともに、現在進められている自動車用燃料電池や家庭用発電機の実用化にも大きく道を拓くものであります。

 カーボンナノチューブは、NECの主席研究員 飯島澄男博士(現所属:NEC、科学技術振興事業団、名城大学、独立行政法人産業技術総合研究所)が1991年に発見した全く新しい炭素系材料であり、直径数ナノメートル(nm:10億分の1メートル)の炭素チューブで、鉄よりも強度が高く、低い電圧で効率よく電子を出すなどの特長を持ち、ナノテクノロジーの代表的な素材として、水素吸蔵や複合材料、電子デバイスなどの幅広い分野への応用が期待されております。
 今回の成果は、カーボンナノチューブの一種であるカーボンナノホーンの微小かつ特異な構造を利用することによって達成されたものであります。カーボンナノホーンは、飯島博士らのグループが3年前に、科学技術振興事業団・国際共同研究事業「ナノチューブ状物質プロジェクト」において発見したカーボンナノチューブの一種で、ホーン(角)状の不規則な形状を持ち、通常のカーボンナノチューブと同様に黒鉛構造の炭素原子面から成り立っております。その特長は、多数のナノホーンが集まり100nm程度の大きさの凝集体(二次粒子)を作っていることであります。そのため、表面積が非常に大きいということだけでなく、気体や液体が内部まで浸透しやすいという利点があります。また、カーボンナノホーンは、通常のカーボンナノチューブに比べて高純度大量合成が容易であるため、低コストな実用材料としても期待されております。

 今回試作した小型燃料電池(注1)は、固体高分子型(注2)で、カーボンナノホーンの表面に白金系触媒を担持したものを電極材料(注3)として用いております。触媒担持後のカーボンナノホーンは、その表面に触媒粒子が非常に細かく分散します。従来から用いられている活性炭(アセチレンブラック)の場合と同じ条件で比較すると、触媒粒子の大きさは半分以下まで細かくなっております。触媒粒子の大きさは燃料電池の特性を左右する重要な因子であり、できるだけ細かく一様に分散させることが特性向上につながると考えられております。また、触媒粒子が細かくなることは、高価な白金系触媒の使用量の低減につながるものであり、省資源、低コスト化にも重要な技術であります。
 カーボンナノホーンの場合に触媒粒子が細かくなる理由はまだ正確にはわかっておりませんが、カーボンナノホーンの凝集体の独特な形状によって、触媒粒子同士の接触・粒成長が妨げられているからではないかと考えられております。今後、カーボンナノホーンの形状を更に工夫することによって、触媒粒子の分散状態と電池特性が一層向上することが期待されます。
 また、カーボンナノホーンはレーザー蒸発法によって作製されますが、その際に白金触媒を同時に蒸発させると、カーボンナノホーンの表面に白金微粒子が自然に付着することもわかりました。この方法を用いれば、従来の湿式プロセスによる複雑な触媒担持工程を省くことができ、大幅なコストダウンに結びつくことが期待されます。

 カーボンナノチューブはその発見以来、半導体、薄型ディスプレイ、軽量・高強度材料、燃料電池などへの応用に高い可能性が認められながらも、材料としての基礎研究の段階に留まっておりました。
 今回の開発は、カ−ボンナノチューブの実用化への第一歩であり、ナノテクノロジーの発展に大きく踏み出すものであります。

 NEC、科学技術振興事業団、(財)産業創造研究所は今後、小型燃料電池の実用化を目指して、カーボンナノチューブの作製条件や触媒担持工程などを含めた研究・開発を一層積極的に展開していく予定であります。

 なお、NEC、科学技術振興事業団、(財)産業創造研究所は今回の成果を、来る10月3日から5日まで、茨城県つくば市の「つくば国際会議場」で開催される「カーボンナノチューブ発見10周年記念つくばシンポジウム」において発表・展示する予定であります。

以上

(注1) 燃料電池
水素などの燃料と酸素とを電気化学的に反応させて化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する原理の電池であり、発電効率、エネルギー密度が高く、クリーンなエネルギーであることから、将来の電気自動車や携帯機器用電源への応用が期待されている。
(注2) 固体高分子型燃料電池
電解質の陽イオン交換膜に固体高分子電解質を用いる燃料電池であり、その他のタイプの燃料電池と比較して動作温度が100℃以下と低く、エネルギー変換効率が50%程度と高く、かつ、小型軽量であるという特徴がある。このため、自動車用やモバイル機器用電源に適した燃料電池である。なお、固体高分子電解質には水素イオンの透過性に優れ、かつ、耐熱性に優れたフッ素系ポリマーが用いられる。
(注3) 電極(触媒担持電極)
炭素微粒子に白金系触媒を担持した燃料電池の電極であり、水素やメタノール等の燃料、及び、酸素をイオン化する役割を担う。触媒効率を高めるためには多孔質で表面積の大きな炭素微粒子が必要とされている。
 
図1 カーボンナノチューブの電子顕微鏡写真
図2 カーボンナノホーンの電子顕微鏡写真
図3 白金触媒を担持させたカーボンナノホーンの電子顕微鏡写真(左)
比較のために同じ条件で白金を担持させた従来の活性炭(右)
写真1 カーボンナノチューブ
写真2 カーボンナノホーン
写真3 カーボンナノチューブを用いた燃料電池
 
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