補足説明


 新型レーザの動作について説明する。図2に正方格子構造フォトニック結晶を利用した光の共振器の動作原理を示す。正方格子の一辺の長さと等しい波長を持つ光が、図2に示した白い矢印のように正方格子の辺方向(これをΓ-X方向と呼ぶ)にそって伝播している場合を考える。この光は光の回折効果により、180度反対方向および±90度方向に回折される。この結果、これら4方向に伝播する光はお互いに結合しながら、2次元的な光共振現象を起こし、レーザ発振にいたる。このときの特長は、内部の光の分布は全て、結晶格子により一意に決まることで、完全に光の状態が制御されたレーザ発振が得られることにある(このことは、従来のレーザでは不可能であった)。なお、これらの光は図2の紙面に対して垂直な方向にも位相がそろった状態で回折されるため、共振現象にて得られたレーザ光を共振面に対して垂直方向に取り出せるので、面発光レーザとして動作することが可能となる。

 正方格子を構成する格子点の形状が円形の場合、図3(a)に示すように格子構造の対称性を反映した光の分布となり、光の電界方向は位置により変化し、偏光までは制御出来ないことになる。(図3(a)の中央にある黄色い丸は光を誘起するために流す電流のための電極である。)今回、さらに工夫した点は、正方格子を構成する格子点の形状を真円形状から楕円形状に変化させたことであり、これにより、格子構造の対称性を崩し、縦方向と横方向の光の結合度を変え、一方向に光の向きをそろえる方法を新たに提案したことにある。これにより理論的にも図3(b)に示すように確かに出射光の方向が一方向にそろうことが確かめられた。

 以上のような理論的な背景のもと、格子形状を実際に楕円形状にしたレーザを図1の方法にて作製し、理論的予想と一致した偏光方向のそろったレーザ発振を確認した(図4)。光出力も20mW程度以上と強力であり、発振波長や光の面内分布についてもフォトニック結晶により制御されているために非常に安定した単一モード動作を示し、出射光の拡がり角も2度以下と相当狭いものとなった。


This page updated on August 10, 2001

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