「鉄鋼材料熱履歴データベース」事後評価結果


1.課題名

 鉄鋼材料熱履歴データベース

2.開発(運用)責任者

 物質・材料研究機構(旧金属材料技術研究所)
  開発責任者 藤田 充苗
  運用責任者 衣川 純一

3.課題概要

 物質・材料研究機構(旧金属材料技術研究所)では、40年以上に渡る溶接分野の研究成果の1つである溶接材の熱影響部の性質予測のための溶接用CCT図(連続冷却変態図)の作製や溶接熱履歴予測プログラムの開発を行ってきた。これらの研究情報を共有し、溶接施工技術の効率化、技術の伝承などの観点から、インターネット上で容易に利用できる鉄鋼材料熱履歴データベース(以下DBと略)を構築した。この熱履歴DBは、2つのサブシステムからなっている。一つは、溶接用CCT図および冷却速度に対応する硬さとミクロ組織構成比の曲線図の2種類の画像とそれぞれの主要曲線を数値として格納したファクトDBであり、他の一つは種々の溶接施工における溶接部の熱履歴を予測するシミュレータである。

〈データ項目とデータ件数〉        (データ件数は平成12年11月現在)
●CCT図データベース
  画像ファイル数 数値(特異点の座標データ数)
CCT図 257枚 7,762点
硬さ 257枚 917点
組織割合 1,678点
(Zw,F+Zw---1059 P---619)
ミクロ組織写真 1350枚  
文章 170枚(A4)  
鋼材に関するデータ   257セット
●鋼材257種類を特定するためのデータ項目
 鋼材表  (257鋼種)
鋼材ID、CCT図ID、顕微鏡組織ID
鋼材名称、性質名称、JIS規格、炭素等量
化学組成(C, Si, Mn, S, P, Cu, Cr, Ni, V, Mo, W, Ti, B, other)
強度性質 (流動応力、引張強さ、のび、絞り)
熱物性:変態温度、比熱、熱伝導率
文献ID

4.アクセス状況

 公開時(平成11年10月)~平成12年11月 : 8,856件
               (平成13年6月現在 : 11,239件)

5.外部発表

*開発中
年  度 件   数 備    考
平成10年度 2件 日本金属学会秋季講演大会他
平成11年度 2件 Inter. Post-SmiRT Conf. Seminar他

*開発終了後
年  度 件   数 備    考
平成12年度 13件 9th Germany-Japan Chemical Information Workshop他

6.事後評価結果

6-1. 当初計画の達成度
 データ量としては若干不足しているが溶接熱履歴を評価するための基本的な枠組みを構築したという点で評価できる。従ってユーザー側から見た情報量、機能という点では、当初計画をほぼ達成していると考えられる。
6-2. データベース自体の評価
 溶接熱履歴という極めて複雑な事象を高い完成度でまとめている点は大いに評価できる。技術標準の新たな表現手法であると問題設定をし、単なるデータベース構築でなく将来への展望を拓いて欲しい。
6-3. データベース化終了後の公開運用体制及び運用状況
 データベースの維持・発展のためには、担当者の努力だけに頼っていたのでは限界があり、組織的な支援による人材供給が不可欠である。
6-4. 運用の今後の展開
 今後の運用体制については、組織面を始めとして予算、ハードウエア、ソフトウエアの更新と改良、国内外との技術協力など、実行計画を具体的に検討する必要があろう。ユーザーとの本格的な協力も必要で、ユーザーニーズに関しては現在の統計の取り方では不十分であろう。セキュリティ対策についても、現状は凌げても、長期的な視点にたった組織的な対応は不可欠である。

7.総合評価

 限られた分野だが日本が比較的優位に立っている専門領域であるので技術的ポテンシャルが維持発展されることを望みたい。データ量としては当初計画が未達であることから、その回復、充実をどのように実現するか検討を要する。一方、シミュレータ開発など、システムが提供する情報量、機能は、当初計画を超えるものであり担当者らの努力には充分評価するべきものがある。全体としては、継続的なユーザーの確保を一義的に考えながら、研究開発体制を検討、整備することが重要であろう。


This page updated on July 19, 2001

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