(お知らせ)
平成13年3月14日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話048-226-5606(広報担当)

個人研究推進事業における成果について
「葉緑体光逃避反応を制御する光受容体の発見」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎 雅弘)の個人研究推進事業において、研究課題「光を求めて動く葉緑体の運動機構の解明」(研究者 加川 貴俊 科学技術振興事業団 さきがけ研究21 専任研究者、研究実施場所:岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所)に関して行われた研究で、葉緑体光逃避反応を制御する光受容体を発見した。本成果は3月16日付の米国科学誌「サイエンス」にて発表される。

 植物は動物と異なり、動き回ることができない。しかし、外界の環境情報を巧みに利用して、植物の形を変えて、環境変化に対応している。例えば、薄暗いところに生育している植物は、モヤシ状に光の方向に伸びて成長している。実は、このような行動様式は個体レベルだけでなく細胞レベルでも知られている。光合成工場としての葉緑体は、弱い光環境下では光合成効率を高めるために細胞表面に分散し、強光下では光のダメージを避けるために細胞表面から逃げている。前者は弱光反応、後者は強光反応(光逃避反応)と呼ばれ、20世紀初頭から知られている現象であったが、その光受容体の同定は全くなされていなかった。
 一方、2000年末には、双子葉植物であるシロイヌナズナの1億1900万塩基対の全ゲノム配列が同定されて、個々のタンパク質の機能解析の時代に入った。本研究では、このシロイヌナズナを用いて、葉緑体運動の制御機構を探った。
 まず初めに、光逃避反応が起きない突然変異体を単離し、その原因遺伝子を同定した。この突然変異体は、光に集まる弱光反応は正常であったが、強光下では光逃避反応を示さず、弱光反応を示した(図1)。この原因遺伝子を同定した結果、光屈性を示す光受容体のフォトトロピンの相似タンパク質NPL1をコードする遺伝子であった。突然変異体の光屈性は正常であったことと合わせると、本結果からNPL1が光を受容し、葉緑体を移動させていると考えられる。
 突然変異体や光受容体が同定できたことで、今後葉緑体が光に応じて運動する意義の解明や、効率良い光合成の開発への糸口になると思われる。

論文名
NPL1, a phototropin homologue, controls the chloroplast high-light avoidance response in Arabidopsis
(NPL1,フォトトロピンホモログはシロイヌナズナにおいて葉緑体の強光による逃避反応をコントロールする)
doi:10.1126/science.291.5511.2138

研究の概要
科学技術振興事業団 個人研究推進事業「素過程と連携」領域(領域総括 大嶋 泰治)
研究テーマ 「光を求めて動く葉緑体の運動機構の解明」
研究者 加川 貴俊 科学技術振興事業団 さきがけ研究21 専任研究者
研究実施場所 岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所
研究実施期間 平成11年10月〜平成14年9月

(問い合わせ先)
加川 貴俊(カガワ タカトシ)
科学技術振興事業団 さきがけ研究21 専任研究者
岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所
〒444-8585 愛知県岡崎市明大寺町字西郷中38
TEL: 0564-55-7613, FAX: 0564-55-7611
 
日江井 純一郎(ヒエイ ジュンイチロウ)
科学技術振興事業団 個人研究推進室
〒332-0012 埼玉県川口市本町4-1-8
Tel: 048-226-5641, Fax: 048-226-2144

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