(お知らせ)
平成13年2月23日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)-226-5606(総務部広報担当)

「高温超伝導体の電子−ホール対称性の発見」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)が戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「反強磁性量子スピン梯子化合物の合成と新奇な物性」(研究代表者:高野幹夫 京都大学教授)で進めている研究の一環として高橋 隆 助教授(東北大学大学院理学研究科)らは、高温超伝導体が「電子−ホール対称性」を持つことを発見した。高温超伝導体には、電子型とホール型の2種類があることが知られており、電子型とホール型とが同じ性質を持っているかどうかを解明することが超伝導機構を知る上で重要な課題であった。今回、高橋グループでは、電子型高温超伝導体のエネルギーギャップの観測に成功し、それがホール型と同じであることを見出した。なお、この研究成果は2月23日付けの米国科学雑誌「サイエンス」で発表される。

 通常の金属では電気抵抗が存在するため、電流を通しても熱に変換され、電流が流れなくなる。しかし、超伝導体は、試料の温度を下げて行くと、電気抵抗がゼロになり電流が流れつづけるという性質を持っている。試料が電気抵抗を持つ状態からゼロに変化する温度を超伝導転移温度といい、例えば水銀では4.2K(約−270℃)で、液体ヘリウムを使い超伝導状態を実現していた。現在では、超伝導転移温度が液体窒素温度77K(約−200℃)より高い超伝導体が発見され、液体窒素温度での超伝導状態の実現が可能となり、産業界での応用が考えられている。
 高温超伝導体は、結晶中の電子の抜けた孔(ホール)が電流の担い手となって超伝導となる「ホール型」と、電子が担い手となる「電子型」の2種類に分けられている。これまでのほとんどの実験研究は「ホール型」で行われてきた。電子型超伝導体は良質の単結晶の作成が困難であることなどから、ホール型超伝導体に比べ研究が大きく遅れており、ホール型との性質の比較を行い「電子型とホール型が対称的」であるかどうかを明らかにすることが、超伝導機構の解明にとって、重要な課題であった。
 今回、高橋グループでは、通常の金属の状態と超伝導状態との間で、エネルギーの値にギャップが生じていることに着目し、電子型高温超伝導体Nd2-xCexCuO4※1)を用いて、世界で初めて電子型のエネルギーギャップの測定に成功した。その結果、電子型超伝導体が、

ホール型と同じdx2−y2※2)と呼ばれる対称性を持つことを発見した。この対称性は、超伝導を引き起こす力の大きさや電子の状態などに深く関係していることが知られている。今回の結果は、高温超伝導体において「電子−ホールの対称性」が成立していることを明らかにしたと同時に、高温超伝導は電子やホールの持つ小さな磁石(スピン)が起源となっていることを示したことになる。
 現在、工学の立場からは、高温超伝導の産業利用として、電気の送電ロスをゼロとしたり、リニアモーターカー用の磁場を発生できる超伝導導線などが製作されているが、今回の研究成果により、「なぜ、高温超伝導が実現されているのか」という超伝導発現機構の解明が一段と進むことが期待される。

※1 Nd2-xCexCuO4 :Nd(ネオジム)原子番号60、Ce(セリウム)原子番号58、Cu(銅)、O(酸素)の4元素を混合することで高温超伝導体を実現できる。
※2 x2−y2 :超伝導体を電子状態により、s波、p波、d波などに分類している。


この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下の通りである。
    研究領域:極限環境状態における現象(研究統括:立木 昌 金属材料技術研究所客員研究官)
    研究期間:平成7年度−平成12年度 

  

本件問い合わせ先:

(研究内容について)
    高橋 隆(たかはし たかし)
     東北大学大学院理学研究科
     〒980-8578 仙台市青葉区荒巻字青葉
     TEL:022-217-6417
     FAX:022-217-6419

(事業について)
    石田 秋生(いしだ あきお)
     科学技術振興事業団 基礎研究推進部
     〒332-0012 埼玉県川口市本町4−1−8
     TEL:048-226-5635
     FAX:048-226-1164

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