(お知らせ)
平成12年12月27日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話(048)-226-5606(総務部広報担当)

遺伝情報を読み取る様子の光学的観察に成功

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)の戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「一方向性反応のプログラミング基盤」(研究代表者:木下一彦 慶應義塾大学 教授)で進めている研究の一環として、原田慶恵 慶應義塾大学 専任講師(現 東京都臨床医学総合研究所 室長)、嶋本伸雄 国立遺伝学研究所 教授らは、DNA(デオキシリボ核酸)の遺伝情報をRNA(リボ核酸)に写し取る(DNA転写)働きをする酵素(RNAポリメラーゼ)がDNAの情報を読むとき、その2重らせん構造に沿って、DNAをくるくると回転させている様子を光学顕微鏡で観察することに世界で初めて成功した。この研究成果は、1月4日付の英国科学雑誌「ネイチャー」で発表される。

 本研究は、1分子で機械的な運動・機能を発揮する蛋白質分子機械(分子があたかも機械のように、設計されたとおりの機械的な運動を行うもの)が、どのように働くのか、1分子内で何が起きているかを、光学顕微鏡の下で、直接見て、操作することにより研究し、そのメカニズムを解明することをめざしている。

 RNAポリメラーゼが、DNAの塩基配列を読みとる際にDNAの二重らせん構造に沿ってくるくると回転するだろうことは、多くの人が予想していた。しかし、その直接的な証拠は何もなかった。原田博士らは、今回、RNAポリメラーゼが、DNAの塩基配列を読みとる際、どのような動きをするのかを光学的に観察することに成功した。これにより、RNAポリメラーゼが、DNAの塩基配列を読みとる際に、DNAの二重らせん構造に沿ってくるくると回転することを証明できたことになる。

 ガラス基板上にRNAポリメラーゼとDNAの複合体を固定する(図1)。DNAの片端には、ビーズ(直径およそ1マイクロメートル注1)を結合する。このビーズには、非常に小さな蛍光ビーズ(直径およそ20ナノメートル注2)が目印としてつけてあり、DNAの動きはこの蛍光ビーズによってわかるようになっている。RNAポリメラーゼの転写を開始させ、ビーズの動きを蛍光顕微鏡で観察した。すると、ビーズは時計回りにくるくると回転した(図2)。 これは、RNAポリメラーゼが、DNAを転写しているとき、DNAが時計回りにくるくると回転していることを意味している。時計回りの回転は、RNAポリメラーゼがDNAの右巻き2重らせんにそってDNAをたぐり寄せる時に予想される回転方向と一致する。 

 今回の成果は、回転運動を観察することができたことである。これは、一分子で機能を発揮する蛋白質分子機械がどのように働くのかを観察するための手段として非常に有効である。すなわち、一塩基対の転写のような、原理的には検出できないほどの小さな動きでも、回転運動として観察可能であることを示している。今後は、この成果を利用して、遺伝情報を伝える第一段階であるRNAポリメラーゼによるDNA転写の仕組みの解明や、遺伝子配列の新しい読みとり技術を念頭においた工業分野への発展が期待される。

この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下の通りである。          
    研究領域:生命活動のプログラム
             (研究統括:村松 正實 埼玉医科大学将来計画研究部門特任教授)                                              
    研究期間:平成8年度 -- 平成13年度 


注1)1マイクロメートル =千分の1ミリメートル
注2)1ナノメートル =百万分の1ミリメートル

  

本件問い合わせ先:
(研究内容について)
    原田慶恵(はらだ よしえ)
     東京都臨床医学総合研究所 生理活性物質研究部門
     〒113-8613 東京都文京区本駒込3−18−22
     TEL:03-3823-2101

(事業について)
    石田秋生(いしだ あきお)
     科学技術振興事業団 基礎研究推進部 
     〒332-0012 川口市本町4−1−8
     TEL:048-226-5635  FAX:048-226-1164

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