(お知らせ)
平成12年11月24日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話048-226-5606(総務部広報担当)

「安定な2元素準結晶合金の発見」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎 雅弘)が戦略的基礎研究推進事業の一環として進めている研究テーマ「準結晶の創製とその物性」(研究代表者:蔡 安邦 金属材料技術研究所 主任研究官)において、2つの元素のみで構成される安定な準結晶が発見された。現在までに確認されている準結晶はすべて3元素以上で構成されており、安定な2元素の準結晶は世界初の発見となる。なお、この研究成果は金属材料技術研究所の蔡 安邦主任研究官によって得られたもので、11月30日付けの英国科学雑誌「ネイチャー」で発表される。

 これまで、金属や合金のような物質の原子構造は、原子が周期的に配列するかどうかで分類されてきた。原子が周期的に配列するものは結晶と呼ばれ、ガラスのように周期的に配列しないものはアモルファスと呼ばれている。しかし、1982年に、原子配列が周期的であるかどうかだけでは単純に分類できない新しい構造を持った合金が発見され、のちに準結晶と名付けられた。準結晶とは、非周期ではあるが特殊な秩序構造を持つ物質で、図(a)のように、太った菱形とやせた菱形の2種類をはりつけたものが非周期に並んだ構造となっている。現在、無機固体の原子構造の種類は、結晶、アモルファス、そして準結晶の3種類に分類されている。

 実験的にこの3種類の構造を調べる一般的な方法として、試料にX線を当てて回折像を調べる方法(X線回折法)が用いられている。X線回折法により得られる図形には、さまざまな対称性が写し出され、その特性により3種類のどの構造であるかを知ることができる。準結晶については、図(b)の桜のような5回回転対称性(※1)を持つことが知られている。通常の結晶やアモルファスではこのような5回回転対称性は存在しないことが分かっている。

 これまでに発見された準結晶は、Al-Cu-FeやMg-Al-Cuなどのように、例外なく3つの元素、あるいはそれ以上の元素から構成されていた。それについて、理論的な証明はされていないが、準結晶を作成する場合には3種類以上の元素が必要であることが一般的に受け入れらてきた。また、準結晶の試料作成の過程では、一時的に準結晶であっても温度の変化により結晶になってしまう不安定なものも多い。そのため、安定な準結晶を作成する努力がなされ、経験的に3種類以上の元素を用いると安定な準結晶が得られることが知られていた。

 今回、蔡チームでは2つの元素のみで構成される準結晶を発見し、安定な準結晶として試料を作成することにも成功した。この準結晶はCd(カドミウム)とYb(イッテルビウム)(※2)の2種類の元素で構成されており、安定な準結晶を得るためには3種類以上の元素が必要というこれまでの常識を打ち破る大きな発見である。2元素の準結晶では、3元素の準結晶にくらべ構造解析や物性の理論計算がかなり単純化されるため、準結晶に対する理解が飛躍的に進むことになる。また、2元素準結晶に適当な第3の元素を加えれば、多種の準結晶が得られることが予想される。多くの種類の新しい準結晶が得られるようになれば、この中に新技術として有用な新素材や新デバイス素子の開発への応用性を持った準結晶が含まれている可能性もあり、今回の研究成果が準結晶研究に与えるインパクトは非常に大きい。

 今後は、Cd-Yb準結晶の物性特性を詳しく調べ、3種類からなる準結晶との相違点の分析や、2種類からなる準結晶ならではの性質があるかどうかを調べる必要がある。また、準結晶に関する理論的考察を進め、どのような場合に2種類の準結晶が得られるのか解明し、準結晶系列図のような系統立った分析も視野にいれて研究を進めて行く予定である。

※1)回転対称性… ある図形を、一つの軸を中心にある角度回転しても、元の図形と区別がつか ない図形の性質。
5回回転対称であれば、72度の整数倍の回転をしても同じ図形になる。
※2)Yb(イッテルビウム)… 希土類元素の一つで、原子番号は70。

この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下の通りである。
 研究領域:極限環境状態における現象(研究統括:立木 昌 金属材料技術研究所 客員研究官)
 研究期間:平成8年度−平成13年度
本件問い合わせ先:
  (研究内容について)
    蔡 安邦(さい あんぽう)
     金属材料技術研究所 第3研究グループ 
      〒305-0047 つくば市千現1-2-1
      TEL:0298-59-2345
      FAX:0298-59-2301

  (事業について)
    石田 秋生(いしだ あきお)
     科学技術振興事業団 基礎研究推進部
      〒332-0012 埼玉県川口市本町4−1−8
      TEL:048-226-5635
      FAX:048-226-1164

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