(お知らせ)
平成12年10月31日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
TEL 048-226-5606(広報担当)

国際共同研究事業における成果について
「超微細カーボンナノチューブの発見」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)の国際共同研究事業において、単層カーボン・ナノチューブとして安定に存在しうるもののうち最も細いものである直径が4Å(0.4ナノメートル)のナノチューブを発見し、さらに、それが金属的性質を持っていることを確認した。この成果は、11月2日付で英国科学雑誌「ネイチャー」に発表される。

 本研究は、科学技術振興事業団の日仏共同研究「ナノチューブ状物質プロジェクト」(代表研究者は名城大学の飯島澄男教授、及びフランス国立科学研究センターエミーコットン研究所のコリエックス教授)において行われたものである。
 この「ナノチューブ状物質プロジェクト」は、高強度素材やガス吸着材、ミクロ構造物、微小電子素子の導体、次世代壁掛けテレビの電極などとして注目を集めているカーボンナノチューブの特性や生成メカニズムの解析、大量製造方法の開発を進め、新しい応用技術を探索する目的で平成10年1月から5年間の予定で進められている。現在までに、ガス吸着特性等のカーボンナノチューブ特性の把握や単層カーボンナノチューブの生成メカニズムとして触媒金属元素が深くかかわっていることなどを確認したり、単層カーボンナノチューブの先端が円錐状に閉じたカーボンナノホーンの発見、高出力炭酸ガスレーザーの連続照射による単層カーボンナノチューブの大量生産技術の見通しを得るなどの数多くの成果を得ている。

 カーボンナノチューブはグラファイトのシートが円筒状に丸まったもので、多層カーボンナノチューブと単層カーボンナノチューブに分類されている。多層カーボンナノチューブは外径が数100Å(数10ナノメートル)、内径が数10〜100Å、長さが数μmのことが多い。単層カーボンナノチューブはグラファイトのシートが1枚円筒状になったもので、直径は10〜20Å(1〜2ナノメートル)長さは数μmである。
 今回、水素雰囲気中で炭素電極を用いてアーク放電を行って作成した多層カーボンナノチューブは、1番外側の層の外径が100Å程度で1番内側の最も細いチューブは直径が約4Å(0.4ナノメートル)であった(図−1参照)。この直径はこれまで発見されたチューブのなかでは最も細いものであり、かつ、これより細いものは安定に存在しないという極限の細さでもある。この4Åという直径は最も小さいフラーレンC20という12面体型の分子の直径に対応しており、直径4Åのナノチューブの先端はC20フラーレンの半球と同じ構造をしていると考えられる(図−1参照)。このことは、この多層ナノチューブはこれ以上内側にチューブが生成されない限界まで詰まった多層ナノチューブであることを示している。また、この直径4Åのナノチューブを構成している炭素原子の配列は3つの対称性の異なった配列を持っているが、電子構造を理論的に検討した結果すべて金属的性質を持っていることを確認した。このことは、通常得られる直径が10〜20Åという太い単層カーボンナノチューブでは炭素原子の配列によって金属的性質を持つ場合と半導体的性質を持つ場合があることと異なる性質である。
 水素を使わないで不活性ガス中で炭素電極を用いてアーク放電を行うと多層カーボンナノチューブが生成することはよく知られているが、生成されるチューブの内径は数10〜100Åである。今回のように、水素雰囲気中でアーク放電を行った場合には内径が4Åまで小さくなる理由は次のように考えられる。水素雰囲気中でのアーク放電では、水素が多層ナノチューブの先端をエッチングするため、多層ナノチューブの先端はアーク放電中に常に開いているものと考えられる。そのため、多層ナノチューブ中心の中空部分に炭素が進入し、進入した炭素が多層ナノチューブの内壁面に沿ってチューブを生成すると予想される。このようにして、水素雰囲気アーク放電中、多層ナノチューブ中心の中空部分では内側に細いナノチューブが次々にできることになり、やがて極限の直径4Åまで達するとそれ以上細いものができなくなると考えられる。
  グラファイトが構成の基本要素となっている多層ナノチューブは化学的に安定で機械的強度も高いと考えられるが、今回発見された極限の細さの直径4Åのナノチューブまでぎっしりと詰まっている多層ナノチューブは、芯に空洞のあるこれまでの多層ナノチューブに比べてさらに機械的強度が高いと期待でる。また、今回は発見されなかったが、C20という最小フラーレンも水素中アーク放電でできている可能性もあり、その発見が期待される。

本件の問い合わせ先:
(1)内容について
    科学技術振興事業団 国際共同研究事業「ナノチューブ状物質プロジェクト」
    代表研究者 飯島澄男
    TEL 0298-56-1940 FAX 0298-50-1366

(2)事業について
    科学技術振興事業団 国際室
    調査役 菊池文彦  森本茂雄
    Tel 048-226-5630 FAX 048-226-5751

This page updated on November 2, 2000

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