(お知らせ)
平成12年10月30日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話 (048)226-5606(総務部広報担当)

「ハフニウム(W)塩を触媒として用いた
効率的なエステル化反応の実現」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)は、戦略的基礎研究推進事業の研究テーマ「次世代精密分子制御法の開発」(研究代表者:山本尚 名古屋大学大学院工学研究科教授)で進めている研究の一環として、ハフニウム(IV)塩・テトラヒドロフラン(HfCl4・(THF)2)を触媒に用いて、カルボン酸とアルコールが1:1で混合している溶液からエステル(注1)をほぼ100%の収率で合成することに成功した。この研究成果は名古屋大学大学院工学研究科の山本尚教授、同大学難処理人工物研究センターの石原一彰助教授、同大学大学院工学研究科博士後期課程3年生の大原卓氏によって得られたものであり、11月10日付の米国科学雑誌「Science」で発表される。

 エステル化反応は化学合成の最も基本的な反応の一つである。普段我々が日常生活で使用している医薬品(アスピリン等)、高分子材料(ポリエステル等)などといったあらゆる有機物質はその製造過程のどこかで必ずエステル化反応が使われていると言っても過言ではない。
 エステルは本来、カルボン酸とアルコールの1:1混合物から合成されるのが最も理想的である。しかし、カルボン酸とアルコールの1:1混合物を原料として用いると、反応が非常に遅くなるのが問題であった。そのため、カルボン酸あるいはアルコールのどちらか一方を過剰にして混合し、反応を速めるか、カルボン酸を反応性の高い別の物質に変換してからアルコールと反応させるのが一般的である。この場合、反応後には大量の有害な副生成物が生じ、また、エステルを分離するために煩雑な精製操作が必要となるなど、効率が悪く、また、環境保護の観点からも好ましくない。今回、山本らは、各種試薬の原料として用いられていた、塩化ハフニウム(IV)・テトラヒドロフランの触媒活性を見出し、カルボン酸とアルコールの1:1混合物をトルエン溶媒中で加熱して脱水することにより、目的のエステルをほぼ100%の収率で合成することに成功した。これは自然環境を破壊する有害な副産物の生成を極力抑えた合成効率の高い有機反応であり、山本らが世界に先駆けてはじめたルイス酸(注2)触媒開発の大きな成果の一つとして注目されている。
 本法は実験操作が極めて簡便であり、微量な触媒量で多量の生成物が得られる点と、水のみを副生成物とする点で画期的な方法と言える。また、化学的に反応性に乏しい一部のアルコールを除く殆どすべてのアルコールとカルボン酸に適用でき、実用的価値が高い。特に注目すべきは、本法を用いて4万〜6万を越える分子量を持つポリエステルが極めて簡便に合成できたことであり、工業的プロセスとしても大きな期待が持たれる。
 ハフニウム(IV)が周期表の同族にあるチタン(IV)やジルコニウム(IV)と化学的に似た性質を持ちながら、エステル化反応における触媒活性が大きく異なる点は興味深い。反応機構についてはまだ明らかではないが、ハフニウム(IV)のイオン半径がカルボン酸とアルコールのエステル化反応を促進するのに丁度よい長さなのではないかと推測している。
 既に山本らはホウ酸を触媒として用いるカルボン酸とアミンの1:1混合物からのアミド化反応にも成功しており(石原,大原,山本,J. Org. Chem. (1996年);Macromolecules(2000年))、今回の研究成果と合わせて化学合成の最も重要なツールであるエステル化、アミド化という2つの重要な脱水縮合反応(注3)を達成したことになる。

(注1)エステル ・・・ 酸とアルコールとから水を失って生成する化合物。
(注2)ルイス酸 ・・・ 反応する相手から電子対を受けとる酸。この種の酸が酸塩基触媒作用を持つとき、それをルイス酸触媒という。
(注3)脱水縮合反応 ・・・ 化合物から水が脱離して新しい結合が生じること。



本件問い合わせ先:
(研究内容について)
    山本 尚(やまもと ひさし)
      名古屋大学大学院工学研究科生物機能工学専攻
        〒464-8603 名古屋市千種区不老町
        電話:052-789-3331
        Fax : 052-789-3222

(事業について)
    石田 秋生(いしだ あきお)
      科学技術振興事業団 基礎研究推進部
        〒332-0012 川口市本町4-1-8
        電話:048-226-5635
        Fax : 048-226-1164

This page updated on November 10, 2000

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