(お知らせ)


平成12年7月4日
埼玉県川口市本町4−1−8
科学技術振興事業団
電話048-226-5606(総務部広報担当)

「新薬につながる高品質タンパク質単結晶作製に成功」

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)が戦略的基礎研究推進事業の一環として進めている研究テーマ「磁気力を利用した仮想的可変重力場におけるタンパク質の結晶成長」(研究代表者:安宅光雄 生命工学工業技術研究所 グループリーダー)において、磁場を利用して重力を制御する技術を用いて、従来になかったほどの高品質なタンパク質単結晶を作ることに成功した。
 タンパク質の分子構造を知ることは、生命現象の基本的理解に不可欠であり、また、病気の治療や医薬の設計などへの応用にとって重要である。そのため、分子構造解析に用いるタンパク質の結晶を作製する実験が世界的に行われている。しかし、良質のタンパク質単結晶の作製は非常に難しい技術で、各国でさまざまな手法が検討されてきた。
 高品質なタンパク質単結晶を作るには、重力の影響が少ない環境下がよいことが宇宙環境での実験などから判明しており、重力の制御が重要な課題のひとつとなっていた。安宅チームでは、この課題を解決するため、磁場を利用して重力を制御する方法を発案し、単結晶を作る実験を行った。
 鉄やコバルトは、強い磁場の領域に向かって引かれる性質を持つが、タンパク質などの有機化合物は反磁性物質(※1)と呼ばれ、磁石により反発力を受ける。この反発力が鉛直方向に働くように磁場を設計し、重力と重ね合わせることで重力を制御することが可能となる。
 この考えに基づき、反磁性物質の反発力を用いることで地表の重力の値の70%の低重力環境を作り出し、良質のタンパク質結晶を効率よく作製することができた。
 今回の実験では、血糖値の増減に影響し糖尿病に関係しているフルクトース・ビス・ホスファターゼと、女性ホルモンに影響を与え乳癌や子宮癌に関係している17βヒドロキシステロイド脱水素酵素の2種類のタンパク質について、非常に良質なタンパク質の単結晶を作製した。この2つのタンパク質に放射光からのX線を当てて結晶構造を解析したところ、フルクトース・ビス・ホスファターゼでは、従来では、分解能が2.8Å(※2)まで解析できていたが、この手法では2.0Åとなった。また、17βヒドロキシステロイド脱水素酵素では2.2Åが1.3Åまで向上した。このように、分解能が向上することは良質なタンパク質単結晶が得られたことを示すものであり、世界的にも、地上実験において、これほど明確にタンパク質単結晶の質の改善に成功した例はない。
 今後はさまざまなタンパク質について、同様の実験を行いタンパク質単結晶を作製していく予定である。今回の成果のようにタンパク質構造の分解能が向上すると、タンパク質と相互作用する物質の設計が確実に行えるため、医薬品の製造に重要な貢献をすることが可能となる。

補足資料

※1 反磁性物質…反磁性物質は磁場をかけると、反発力(磁気力)を受け、磁場の弱い 方向へ逃れようとする性質を持っている。
※2 Å(オングストローム)…100億分の1メートル

この研究テーマが含まれる研究領域、研究期間は以下の通りである。

研究領域:極限環境状態における現象(研究統括:立木 昌 金属材料技術研究所 客員 研究官)
研究期間:平成9年度−平成14年度

本件問い合わせ先:
(研究内容について)
安宅 光雄(あたか みつお)
 生命工学工業技術研究所 生体分子工学部 
  〒305-8566 つくば市東1-1
  TEL:0298-61-6174
  FAX:0298-61-6161
(事業について)
石田 秋生(いしだ あきお)
 科学技術振興事業団 基礎研究推進部
〒332-0012 埼玉県川口市本町4−1−8
TEL:048-226-5635
FAX:048-226-1164

This page updated on July 4, 2000

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