(お知らせ)


平成12年4月13日
埼玉県川口市本町4-1-8
科学技術振興事業団
電話048-226-5606(総務部広報担当)

海の空気を測る無人海洋大気観測艇、本格的航走試験始まる

 科学技術振興事業団(理事長 川崎雅弘)の戦略的基礎研究推進事業の研究領域「地球変動のメカニズム」(研究統括:浅井冨雄 東京大学 名誉教授)における研究テーマ「海洋大気エアロゾル組成の変動と影響予測」(研究代表者:植松光夫 東京大学海洋研究所 助教授)の研究の一環として「無人海洋大気観測艇 かんちゃん」船艇本体が完成し、このほど進水した。この船艇は、移動可能な無人大気自動観測艇で、世界で初めての試みである。

 大気エアロゾル(注)は地球温暖化を抑制する存在といわれるが、その影響について評価は定まっていない。海洋上の大気中に存在するエアロゾルは海洋起源だけではなく、陸上起源の物質(これには自然起源のものと人為起源のものの両方が含まれる。)が季節や場所によって混在し、その組成が短い時間で変化する。
 太平洋上でのこの変化を捉えるためには、離島での観測が行われている。しかし、北太平洋において北緯30度から50度にかけては、島は存在せず、これまでは観測ができなかった。また、地球表面積の約7割を占める海洋上の大気研究では時間空間的に限られた船舶を用いた観測が主であり、海洋気象観測ブイなどの係留も行われているが、移動可能な無人大気自動観測艇による測定は世界で初めての試みである。

 無人海洋大気観測艇は、ヤマハ発動機株式会社で設計・建造された長さ約8メートル、幅2.8メートルのグラスファイバー製で、直流モータによって自走する。航行用電源および観測測定装置用電源にはディーゼルエンジンと風力によって発電されたものを用いる。無人海洋大気観測艇は、陸上からの操船指令を衛星通信を通して受け、自動航行中や定点に留まって観測を行い、その測定結果を陸上に送るという双方通信方式を用いている。速力は海況によるが2−4ノットで、約一ヶ月間の観測航行が可能である。

 観測は火星探査機パスファインダーで土壌化学分析にも使用された検出器などを搭載し、大気中の人為起源物質や重金属類を始め、海洋表面での植物プランクトン量などの自動分析を行う。この計画は、研究代表者である植松光夫助教授のもとに千賀康弘教授(東海大学海洋学部)、紀本岳志研究員((財)海洋化学研究所)が中心となって進めるものである。

 観測艇進水後、自動航行テスト、開発された機器を搭載したテスト航海が浜名湖、遠州灘を中心に今後一年間程度進められ、2001年春の西部北太平洋を中心に展開される集中観測にのぞむ予定である。無人観測艇による定点、定線観測は、今後、船舶による観測に代わって大きな役割を果たすものと期待される。なお、これらの観測結果により、長期間に渡ってエアロゾルの各化学成分濃度の時間変化を伴う地理的分布を明らかにし、モデルによる再現や大気環境変動の将来予測が可能となると考えられる。

注)エアロゾルとは、大気中の微粒子のこと。細かい砂やちり、海水の飛沫、花粉、火山の噴煙、工場排煙、自動車の排ガスなど、雲粒の生成に必要な凝結核になる。水溶性のものは、水粒の核に、不水溶性のものは、氷粒の核になりやすい。


本件問い合わせ先:
(研究内容について)
    植松 光夫(うえまつ みつお)
東京大学 海洋研究所
  〒164-8639 東京都中野区南台1−15−1
TEL:03-5351-6533
FAX:03-5351-6533
(事業について)
石田 秋生(いしだ あきお)
科学技術振興事業団 基礎研究推進部
〒332-0012 川口市本町4−1−8
TEL:048-226-5635
FAX:048-226-1164


This page updated on April 14, 2000

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